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100円のコーラを1000円で売る方法2[ビジネス戦略編] (中経出版) 永井 孝尚

Book Summary
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理解度チェック

本サイトで紹介する本に関する理解度チェック問題になります。


問題を解きながら、本の概要を理解できるように、
問題以上に解説に力を入れておりますので、是非活用ください。

レビュー

前作(シリーズ1:マーケティング編)が、マーケティングの基礎知識を網羅的に扱っていたのに対して、本作(シリーズ2:ビジネス戦略編)は、数々の成功を納めてきた筆者が成功体験からの脱却というビジネス戦略において最も大事にしていることを小説を用いてわかりやすく伝てくれています。この本の最大のポイントは練りこまれた物語によって実体験と似た感覚で成功体験からの脱却の重要性を把握できることにある。そのため、知識量は少ないが、2時間程度の読書でビジネスにおける重要な視点を実体験として得ることができるのです。一言でいうと主人公の宮前久美がどんどん出世していくシンプル物語です。主人公をサポートする与田(企画部長)は多くを語らず、そのときどきの局面において、示唆をするだけ。それを宮前久美が懸命に努力し、実行に移す。宮前久美がタスクリーダーとなり、社内の天敵は清水専務となる。ベテランであり、実績をつんできた人が直接に販売するという成功体験がパートナー販売をする宮前とぶつかる。 宮前はポーター戦略やランチェスター戦略をしり、 網羅思考から仮説思考へのシフト、選択と集中における基本であるなにを捨てるのか?ということを考えることになる・・[本書へ続く]
前作から間をあけずにすぐにシーズン2を読みましたが、小説感覚で3時間ほどで読めてストーリーとともにビジネス戦略について楽しめ学べる一冊だと感じました。

本書のメインテーマである成功体験からの脱却を実現するために、
 ・網羅思考から、仮説思考・論点思考へのシフト
 ・すべてやる思考から、『やらないこと』をあえて決断する思考へのシフト
 ・成功体験にこだわる同質集団から、成功体験に囚われない多様性な集団へのシフト
の3つのシフトがについて紹介されています。普段の生活にも取り入れられる内容だと思うのでシーズン1のマーケティング戦略と合わせて一気呵成に読まれることをお勧めします。

●ポイント
タスクフォースの設置

物語のなかで同月比の伸び率が一気に下がっている「社長の会計」の対策のためにタスクフォースを立ち上げることになる。主人公の宮前がコンセンサスを取ろうとするが各部署の人たちは自分たちの不満を述べるだけで責任転嫁をし業績悪化の責任を他社に押し付けるだけという状況。原因として複数の要因と因果関係があり、すぐに明確な解が得られない場合の対応の流れとして以下のことを順番に行うべきだと述べられています。
 ①リーダーを決める
 ②解決すべき問題や目的の明文化
 ③目的達成までのスケジュールと運用ルールを明確
 ④参加部門の定義とタスクメンバーの選出

網羅思考から、仮説思考・論点思考へのシフト

顧客の否定的な意見を集め、問題点をリスト化すると膨大な量になります。その量に頭を抱えて何も進んでいない状態を網羅思考に陥ってしまっている状態です。それとは対照に数多くの論点から最も重要な2、3個の論点に絞って対策を考え、PDCAを回す、これが論点思考であると。

なぜ顧客満足度は低下しているのか?という課題にたいして、仮説を立て→論点を立て→対策を立てることが仮説思考・論点思考です。そのうえで立体的なPDCAを回し続けると本書の中で与田は言っています。
仮説(Plan)をたて、実行して(Do)、その結果を検証して(Check)、次の行動(Action)に繋げることがPDCAだが、与田は宮前にストーリーがはっきりしておらず、仮説がないから検証もできずPDCAが回せていないと指摘をする。まずはPの計画(仮説)を作るのに時間をかけずにざっくりでいいので仮説をたててどんどん実行してみる。変化の激しい時代に求められるのは完璧なコンセンサスではなく意思決定のスピードと柔軟性が必要なのです。

『やらないこと』をあえて決断する思考へのシフト

業界トップのバリューマックスの社長は主力商品のシェアが奪われている対抗策としては「社長の会計」と類似した製品を開発し同質化戦略をとろうとしていた。なぜリーダー企業は差別化をするのか? それは自社が成長できるからである。同じ差別化戦略でも、強者が実行することによりその効果は数十倍にもなるからなのです。業界トップシェア企業は、市場を拡大する具体策としてフルライン戦略(幅広い品揃えにすること)があります。また競合が差別化をしてきた場合は追随して同質化を行います。コストリーダーシップを握っているリーダーは差別化されても同じことをしていれば自然と勝つことになります。

この状況でチャレンジャーである駒沢商会は、差別化戦略で対抗するしか道はないのです。つまり、選択と集中です。そのために『やらないこと』を決断するのです。宮前がとった戦略もまさに差別化戦略でした。

差別化戦略とは、市場全体を相手に製品、サービスを差別化することで特異なポジションを獲得する。そして消費者にとって魅力的な独自性を打ち出すことで、競合企業に対しての優位性を価格以外で築く戦略のことです。

差別化のポイントは様々あるが代表的なものとして
 
  • 製品そのもの差別化
  • 製品サービスの差別化
  • 消費者の認知度を高める差別化
用語解説
マイケルポーター戦略とは?

ポーターの3つの基本戦略は、1980年にマイケル・ポーター教授によって発表された戦略のフレームワークです。[コスト・リーダーシップ戦略]/[差別化戦略]/[集中戦略]の3つの戦略のことです。
コスト・リーダーシップ戦略とは、「業界全体に対して圧倒的な低コストを武器に戦うコスト優位な戦略」のことです。 この「低コスト」というのは、安売りや低価格戦略のことではありません。「低い費用」「低い原価」という意味です。製造だけでなく、原材料の調達や商品やサービスの提供に至るまで、バリューチェーン(価値連鎖)がすべて一体となって費用を下げる取り組みを行います。 費用(コスト)の下がった分はすべて利益になります。この利益をもとにさらなる投資や効率化を行い、他社が追随できないように戦います。とは、「業界全体に対して圧倒的な低コストを武器に戦うコスト優位な戦略」のことです。
コスト優位とファイブフォースとの関係
 新規参入の脅威:供給量の増加で価格が下がっても利益が出せる
 代替品の脅威:低価格な代替品に対抗して値下げしても利益が出せる
 顧客の交渉力:値下げ圧力が強くても利益を出せる
 供給業者の交渉力:原料価格が高騰しても競合より利益を出せる
 既存企業のポジション争い:価格競争に突入しても長期戦で勝つことができる

差別化戦略とは、「顧客に対して競合他社より割高な価格を支払ってもらうことで利益を生み出す戦略」のことです。ここでの差別化は価格を維持、または上げることが狙いです。ちなみにマーケティングの「差別化」と、ポーターの「差別化」は意味が違います。 マーケティング用語の「差別化」は、同じものを競合のそれと区別させる行為を含んでいます。 しかしポーターの「差別化」は、顧客に「AとBは全くの別物」と認識させることのみを指しています。縦軸が「顧客が認める特異性」となっているのはそのためです。 マーケティングの差別化のイメージとしては「差別化の特徴+一般名詞」で、ポーターの差別化はブランド名や商品名で直接認識されるイメージです。差別化戦略が成功すれば、バリューチェーンの「総価値」を引き上げることができ、利益(マージン)を確保できます。
差別化とファイブフォースとの関係
 新規参入の脅威:差別化された商品の供給量に影響がないため価格が下がらない
 代替品の脅威:代替品とは別の商品やサービスと認識され価格競争にならない
 顧客の交渉力:唯一の商品になれば価格交渉に応じる必要がなくなり利益を維持できる
 供給業者の交渉力:原材料の高騰に合わせて値上げが可能になり利益を維持できる
 既存企業のポジション争い:価格競争に巻き込まれず利益を維持できる

ランチェスター戦略とは?・・・・ランチェスター戦略のルーツは、第一次世界大戦の頃、イギリス人のエンジニアF・W・ランチェスターは戦闘機の開発に従事していました。彼は自分が開発した戦闘機が戦争でいかなる成果をあげるのかに興味を持ちます。研究した結果、兵力数と武器性能が一軍の戦闘力となり、敵軍に与える損害量を決めることを発見します。これがランチェスター法則です。第一・第二の二つから成り立ちます。このランチェスター法則がランチェスター戦略の原点です。
ランチェスター第一法則から弱者の戦略、第二法則から強者の戦略が導きだされました。ここでいう強者とは市場地位が1位のものです。それ以外は2位であっても弱者であると定義します。市場地位ですから、地域・商品・流通(販路)・顧客の市場単位でとらえます。ですから企業規模が大きいものが強者とは限りません。市場ごとに弱者と強者の立場は入れ替わります。  このように細分化して捉える理由は弱者と強者、この二つの立場のものの戦い方が全く異なるからです。すなわち弱者の基本戦略は差別化戦略。強者の戦略は同質化(ランチェスター戦略ではこれをミート戦略という)。そして弱者・強者にはそれぞれ5つの代表的な戦い方があります。これを5大戦法といいます。

ランチェスター戦略は大きな会社の本社の戦略スタッフが全社レベルの販売戦略を立案する際にも使われますが、最もよく使われるのは営業現場単位での戦略づくりです。世にある様ざまな戦略理論や経営手法は、戦略は本社が考え、現場は実行するのみというものが多いようですが、ランチェスターは顧客最前線の営業現場単位で戦略が必要であるという立場です。というのも弱者・強者、シェア順位は商品・地域・流通(販路)・顧客によって入れ替わります。会社が大きいからといって強者とは限りません。逆に小さいからといって必ずしも弱者ではありません。営業現場単位で市場地位を見極め、地位に応じた戦略で戦うべきです。同じ会社でも営業現場単位で戦略を切り替える必要があります。
本書の目次

 1 業績悪化の真犯人は誰だ?―日本型コンセンサスの落とし穴
 2 なぜマクドナルドはリーダーであり続けるのか?―弱者の差別化戦略と強者の同質化戦略
 3 実験は「結論」からはじめろ―PDCAの本質とストーリー戦略
 4 “あらゆる事態”にそなえるな―網羅思考のワナ
 5 「平等から公平へ」シフトしたパナソニック―仮説思考と論点思考
 6 マツダがガソリン車でハイブリッド車に対抗できた理由―弱者に不可欠「選択と集中」
 7 ローコストキャリアが大手航空会社に勝つ方法―「やらないこと」を決める差別化戦略
 8 「1+1+1=3」を超えるチームづくり―ミンツバーグの創発戦略
 9 撤退する勇気―トレードオフの見きわめ方
 10 社員14人で業界シェア80%を握るコミーの戦略―参入障壁の築き方

著者・出版

著者: 永井 孝尚(ながい たかひさ)


マーケティング戦略コンサルタント。
ウォンツアンドバリュー 株式会社 代表。
<経歴>
1984年に慶應義塾大学工学部・計測工学科を卒業。
同年、日本アイ・ビー・エム株式会社に入社。
1991年、IBM大和研究所の製品プランナー、製品開発マネージャー。
1998年、戦略マーケティングマネージャー。
2012年、ソフトウェア事業部の人材育成部長。人材育成戦略立案と実施を担当。
2013年6月、日本アイ・ビー・エムを退社。
同年7月、ウォンツアンドバリューの代表に就任。
専門用語を使わずにわかりやすい言葉でマーケティングを伝えるプロとして、幅広い企業や団体を対象に講演やワークショップ研修を実施。 さらに書籍・雑誌の執筆、メディア出演などで、より多くの人たちにマーケティングの面白さを伝えて続 けている。 主な著書に、シリーズ60万部の「100円のコーラを1000円で売る方法」、10万部の「これ、いったいどうやったら売れるんですか?」などがある。

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