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100円のコーラを1000円で売る方法3[イノベーション編] (中経出版) 永井 孝尚

Book Summary
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理解度チェック

本サイトで紹介する本に関する理解度チェック問題になります。


問題を解きながら、本の概要を理解できるように、
問題以上に解説に力を入れておりますので、是非活用ください。

レビュー

シリーズ1作目『100円のコーラを1000円で売る方法』では、「顧客中心主義への回帰」をテーマに、マーケティングについて、述べられました。続いて、シリーズ2作目では、「成功体験からの脱却」をテーマに、ビジネス戦略について述べられていました。そして、シリーズ最終作である3作目では、「イノベーションとリスクへの挑戦」をテーマに、イノベーションについて述べられています。

日本全体が成熟期に入りつつある中で、大きなイノベーションを生み出せずにいる企業に対し、本書では「イノベーション」をテーマに、現代の日本企業の課題と未来を提示しています。 50万部突破のベストセラーシリーズ完結版です。

1作目、2作目から続くストーリーは、 国内大手ライバル・バリューマックス社との市場競争を生き抜いた宮前久美と駒沢商会だったが、ついにグローバル企業の黒船が襲い掛かる。しかも、そのトップはかつての仲間であり師匠の与田誠。彼女はグローバル競争のハリケーンが吹き荒れる日本企業で「新たな成長となるイノベーション」を起こすことができるか・・・シリーズ3作目の完結編となる本書のテーマは「イノベーションとリスクへの挑戦」をテーマにイノベーション、グローバル競争、デジタル&ソーシャルマーケティング、M&Aなどを取り上げられています。危機から脱出するカギは、従来の発想の延長ではなく、困難な課題に果敢にチャレンジし、みずからリスクをとってイノベーションを起こすことです。 本書で描いたのは、従来の発想にとらわれずに困難に挑戦する姿勢の大切さです。そして、その中心にあるのは「つねに顧客の価値を考えること」というシリーズを一貫したテーマです。

●ポイント
フリーミアムのビジネスモデル

ユーザに無料でサービスを使用させる代わりに別のルートで収益を得る方法です。このストーリー中では、無料のクラウド会計ソフトを提供する「ガンジーネット」がユーザへの備品購入用の広告を出すことで、備品業者から収益を得る方法が示されています。

(図は本書より引用)

ガンジーネットにとって、あくまで会計ソフトはツールのひとつであり、収益源は「法人購買代行ビジネス」と位置づけれている、ということです。無料で提供するサービスと収益源がうまくマッチングするとき、そこにサービス拡大のチャンスが生まれることになります。

イノベーションのジレンマ

バリューマックス社がガンジーネットのような新興勢力になぜ追い上げられているのか、を検討するところから、イノベーションのジレンマの話が出てきます。かつて、ソニーのトランジスタラジオがどのようにしてアメリカ市場で受け入れられていったか、を例にとり説明しています。

(図は本書より引用)

既存顧客へのサービスに特化していくと、既存顧客の外側にいる潜在的新規顧客の存在を失念し、いつの間にか、新規顧客をとりこんだ新興勢力にシェアを奪われてしまうのです。そのためには、既存顧客の中に自社の方向性の解を見つけるのではなく、まだ顧客になっていない分野の開拓を試行錯誤して取り組む必要がある、ということです。

数が生み出す新たな価値

会社の既存の売りである、山倉メソッドを無料公開して、ユーザ層を拡大したうえで、山倉メソッド上位バージョンである「ヤマクラ・フォーキャスト」で収益を得る構造を作る、という展開です。

(図は本書より引用)

他社が容易に代替することのできない付加価値をつけることによって、自分たちのサービスの優位性をアピールすることができます。ある意味、フリーミアムモデルといってもいいかもしれません。無料で使うことに慣れた人たちに、有料にするとさらに付加価値の高いサービスが得られるようにすることで、ユーザ層を増やすことと収益を確立することを両立させることができるわけです。

 

●用語説明
イノベーションのジレンマ
イノベーションのジレンマとは、業界トップになった企業が顧客の意見に耳を傾け、さらに高品質の製品サービスを提供することがイノベーションに立ち後れ、失敗を招くという考え方。ハーバード・ビジネススクールのクレイトン・クリステンセンが提唱した。
成功している企業がイノベーションのジレンマとよばれる失敗に陥る理由として、クリステンセンは、3つの理由を挙げている。

第1に、破壊的な技術は、製品の性能を低下させる。そのため、既存技術で成功している大手企業の多くは破壊的な技術に関心が低いという点である。例えば、デジタルカメラが登場した当初は、画質などで銀塩写真に比べて画像の質は低く、フィルムカメラのメーカーは、この技術に関心も注意も払わなかった。しかし現在では、フィルムカメラはデジタルカメラに主役の座を追われている。

第2に、技術の進歩のペースは、市場の需要を上回ることがあるという点である。技術が市場の需要を上回っているにもかかわらず、トップ企業はハイエンドの技術をさらに持続的に向上することを止められない。そのため、新たに開発した技術に、市場は関心やプレミアムを得ることができない。さらに、比較的に性能が低くても顧客の需要を満たす、新たな技術をもった新規企業に市場を奪われる隙を作ってしまう。

第3に、成功している企業の顧客構造と財務構造は、新規参入企業と比較して、その企業がどの様な投資を魅力的と考えるかに重大な影響を与える。破壊的技術が低価格で利益率が低い、あるいは市場規模が小さいなど、既存の技術で成功してる企業にとって魅力を感じず、参入のタイミングを見逃してしまうという点である。

上記のコンセプトから、革新的な技術やビジネスモデルで従来の企業を打ち破った企業が、大企業になると革新性を失ってしまう状態や、さらに最先端の技術開発をしても成功に結びつかない状態などを、総じてイノベーションのジレンマと呼ぶ。
本書の目次

1 – 破壊的なライバルは外からやって来る―グローバル市場の怖さ
2 – iPhoneやKindleはなぜ世界中で使えるのか?―個別カスタマイズから標準品へ
3 – 企業メッセージの99・996%はスルーされる―共感の時代のマーケティング戦略
4 – 無料でも儲かる仕組みとは?―フリーミアムのビジネスモデル
5 – トランジスタラジオが真空管ラジオを駆逐した理由―イノベーションのジレンマ
6 – 買収するほうが立場が強いとはかぎらない?―交渉の成否を握るBATNA
7 – なぜグーグルはYouTubeを買収したのか?―M&Aを成功させる方法
8 – アップルがiPadでパソコンを否定した理由―イノベーションの作法
9 – 有料で1万人に売るか、無料で100万人に使ってもらうか?―数が生み出す新たな価値
10 – 動きながら考える―イノベーターの素養

著者・出版

著者: 永井 孝尚(ながい たかひさ)


マーケティング戦略コンサルタント。
ウォンツアンドバリュー 株式会社 代表。
<経歴>
1984年に慶應義塾大学工学部・計測工学科を卒業。
同年、日本アイ・ビー・エム株式会社に入社。
1991年、IBM大和研究所の製品プランナー、製品開発マネージャー。
1998年、戦略マーケティングマネージャー。
2012年、ソフトウェア事業部の人材育成部長。人材育成戦略立案と実施を担当。
2013年6月、日本アイ・ビー・エムを退社。
同年7月、ウォンツアンドバリューの代表に就任。
専門用語を使わずにわかりやすい言葉でマーケティングを伝えるプロとして、幅広い企業や団体を対象に講演やワークショップ研修を実施。 さらに書籍・雑誌の執筆、メディア出演などで、より多くの人たちにマーケティングの面白さを伝えて続 けている。 主な著書に、シリーズ60万部の「100円のコーラを1000円で売る方法」、10万部の「これ、いったいどうやったら売れるんですか?」などがある。

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