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もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら (ダイヤモンド社) 岩崎夏美

Book Summary
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レビュー

主人公の川島みなみは東京都立程久保高校(通称:程高)2年生。病に倒れた親友で幼なじみの宮田夕紀に頼まれ野球部のマネージャーを務めることになり、「野球部を甲子園に連れて行く」という目標を立てます。まずはマネージャーの仕事を理解しようと、書店で「マネジメント」の本を探し、店員に薦められるままにドラッカーの『【エッセンシャル版】マネジメント 基本と原則』を購入する。その後、それが起業家や経営者のための本だったことに気づくが、本の内容に感銘を受け読み進めていく。そして、本の内容の多くが野球部の組織作りに応用できることに気付き、次第に夢中になっていく。ドラッカーの『マネジメント』から、組織や団体・機関の管理者としてのマネージャーの資質、組織の定義付け、マーケティングやイノベーションの重要性など、を学んだみなみは、自分が「マネージャー」となって野球部をマネジメントできないものかと考え、夕紀や加地(かち)、後輩マネージャーの文乃、同じく『マネジメント』を愛読している二階らに協力を仰ぎ、学んだことを野球部の運営に応用し、部をより良くしていく方策を次々と実践していき、最後には、高校野球にイノベーションを起こす物語です。これまでのドラッカー読者だけでなく、高校生や大学生、そして若手ビジネスパーソンなど多くの人に読んでほしい一冊。

私自身、 ピーター・F・ドラッカー のマネジメントは読んだことはありましたが、その内容を腹落ちさせ生活の中に具体的なアクションとして取り込めていませんでした。しかし、もしドラを読んだことで、感動とともに内容が頭の中にスッと入ってきた感覚を覚えました。 物語として感動的な内容であることはもちろんのこと、数々の企業の変革に携わって来た自分に具体的に「理想的な変革の姿」を見せてくれたからです。 高校野球というシチュエーションを自分の状況に置き換えて、マネジメント( 人の強みを生かして組織の成果につなげること )を見直すキッカケをくれた本であることは間違いありません。 本書を読んだ後、毎日自分自身に、「どうすれば部下の強みを引き出して、部下個人に成果をあげさせ、それを会社組織の成果へとつなげることができるか?という問いを常に投げかけマネジメントと向き合っています。

もしドラの要点
マネージャーに必要なのは、才能よりも真摯さ

真摯さとは、”あえて”一言で言えば、「ひたむきに真剣に取り組む姿勢」のことです。ドラッカーはマネージャーの仕事は全て後天的に身に付けることができると言っています。しかし、唯一必要なものがあります。それがこの「真摯さ」です。真摯な人間は目標のためにひたむきに努力します。会社に仕事ができる人だけを集めることは不可能です。ですが、凡人である彼らに期待してひたむきに向き合い続けることが大事なのです。その結果として、売上を上げることができます。
全ては顧客からはじまる

「もしドラ」において、高校野球の顧客は「高校野球に関わる全ての人々」と定義しました。そこには野球部員、スタンドの観客、保護者、野球連盟の人々が含まれます。
あなたの顧客は誰でしょうか?サラリーマンであれば、得意先の担当者はもちろんですが、上司、工場責任者なども含まれるかもしれません。ここを定義することで自分の行動が変わってきます。得意先担当者が顧客なら、彼らに自分を気に入ってもらうことが必要でしょう。上司が顧客なら、上司を気遣うことも必要でしょう。このように顧客を定義することで、自分の行動が顧客の欲求を満たしているのかを考え直すことができます
何を売りたいのかではなく、顧客は何を買いたいかを問う

本質的にビジネスは人々の欲求から生まれました。人々の欲求を満たすことで、金銭的利益を得ることができます。だから自分が売りたいものありきで考えてはいけません。徹底的なまでの顧客目線が必要です。ドラッカーは「自分が売りたいと思っているものを顧客が買っていることは稀である」と言っています。
お花屋さんで花を買っている人は、「大切な人に喜んでもらうこと」を買っているかもしれません。ブランドバッグを買う人は、「自分のステータスを高めること」を買っているかもしれません。「もしドラ」では、顧客が買いたいものは「感動」であると考えました。顧客は何を買いたいのかを今一度考え直すことで、自分のやるべきことが変わってくるかもしれません。
仕事に働きがいを与える

部下に自ら能動的に働きたくなる環境を与えて自己成長を促すことが必要なのです。
働きがいを与えるには、仕事に責任を与えなくてはならりません。そのためには①生産的な仕事、②フィードバック情報、③継続学習が必要になってきます。
例えば、あるIT企業は「サイトのログイン数を毎日取りデータ化して、より多くのログイン数を確保するために考えて行動しなさい」と指示しました。すると部下は自ら考えてログイン数向上のために行動するようになります。結果、部下は自主的に考えて行動するようになりました。そして上司も部下に指示する時間を省略することができました。言い換えれば、上司は部下に責任を与えているとも言えます。単純な例ですが、要するに上司の役割は部下が自主的に行動するような仕組みを構築することなのです。
間違いや失敗をした方がいい

失敗しない人がいたとすれば、彼は何も挑戦していないからです。上司に言われたことをそのままこなすだけ、同じ仕事を毎日こなしているだけ、それでは失敗のしようがありません。
でも、そんな人は組織に必要ありません。挑戦しない人の考えは周りに伝染してしまい、結果何も挑戦しない組織になっていきます。常に変化し続ける社会の中で、変化しようとしない組織は時代の波と共に消え去ってしまいます。失敗したっていい雰囲気づくりがマネージャの仕事
成果こそ全ての活動の目的

「もしドラ」では、「甲子園に行けなくたっていい。ここまで頑張ってきたその取り組みが大事なのだから」と言われます。これを会社に例えると、「売上が伸びなくたっても良い。だって頑張ってきたのだから」ということです。それはもはや会社ではない。成果が目的なのです。努力が目的ではない
本書の目次

第一章 みなみは『マネジメント』と出会った
第二章 みなみは野球部のマネジメントに取り組んだ
第三章 みなみはマーケティングに取り組んだ
第四章 みなみは専門家の通訳になろうとした
第五章 みなみは人の強みを生かそうとした
第六章 みなみはイノベーションに取り組んだ
第七章 みなみは人事の問題に取り組んだ
第八章 みなみは真摯さとは何かを考えた

著者・出版

著者: 岩崎夏美 (いわさき なつみ )

(いわさき なつみ、1968年7月22日 – 東京都新宿区生まれ、日野市出身)
放送作家、小説家。
茗渓学園高校、東京芸術大学美術学部建築科卒業。高校時代は軟式野球部に所属し、投手をした。芸大へ進学した理由は特になく、建築家で芸大出身の父親の勧めによる。芸大在学中も卒業後も建築に対し興味を抱くことはできなかった。
秋元康の企画に葉書を送ったことで秋元と縁を持ち、大学卒業後は秋元康事務所の前身に当たるソールドアウトに所属して秋元康に師事した。 秋元康事務所を退職。その後、株式会社インディソフトウェアに入社し、ゲームやウェブコンテンツの開発を経て、2009年4月から吉田正樹事務所所属。作家として活動を始める。 2009年12月、作家として初めての作品となる『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』を発表し、ミリオンセラーを記録。2011年4月よりNHK総合でアニメ版が放送され、また同年6月よりAKB48の前田敦子主演による映画版が公開された。

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