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人生を面白くする 本物の教養 (幻冬舎) 出口 治明

Book Summary
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レビュー

著者の出口さんは、「教養を身につけるには何冊ぐらいの本を読めばいいのですか?」という質問を受けることがあるそうです。そういう質問を受けるたび、シャネルの「私のような大学も出ていない年をとった無知な女でも、まだ道ばたに咲いている花の名前を一日に一つぐらいは覚えることができる。一つ名前を知れば、世界の謎が一つ解けたことになる。その分だけ人生と世界を単純になっていく。だからこそ、人生は楽しく、生きることは素晴らしい」の言葉を引いて「教養とは生き方の問題ではないでしょうか」と答えるそうです。知識は確かに大切ですが、知識=教養ではありません。本書の基本的な立ち位置はそこにあります。

教養とは何か?」という質問の回答に窮してしまう人は多いのではないでしょうか?出口さんは、教養を人生における面白いことを増やすためのツールであると定義し、グローバル化したビジネス社会を生き抜くための最強の武器であると言っています。教養の核になるのは、「広く、ある程度深い知識」と「腑に落ちるまで考え抜く力」です。そのような本物の教養はどうしたら身につけられるのかが、出口さんの経験に基づき本書に簡潔に分かり易く纏められています。

上記の通り教養の本質は、「自分の頭で考える」ことにあります。本書中で著名な科学史家の山本義隆氏の言葉をかりて、勉強の目的について「専門のことであろうが、専門外のことであろうが、要するにものごとを自分の頭で考え、自分の言葉で自分の意見を表明できるようになるため。たったそれだけのことです。そのために勉強するのです」と書かれています。この当たり前のことが、案外置き去りにされ表面的なことを浅く広く知ることこそが教養だと風潮が広がっているように思います。シャネルの言葉ではないですが、 物事を深く追求し自分の頭で考え世界観を広げることが人生を楽しむことに繋がり、これこそ教養を身につける目的なのです。だからこそ教養を身につける価値があるのだと感じさせてくれる一冊でした。

本書のPoint
■ 時間・歴史軸である「タテ」と空間・世界軸である「ヨコ」の二次元で考える
時間・歴史軸である「タテ」と空間・世界軸である「ヨコ」の二次元で考えると物事の理解が深まります。 中国は4千年もの長い歴史を持つ国ですが、その長い歴史において平和で豊かだった時代(盛世)がどれだけあったのかというと、わずか4回しかありません。最初は文景の治(紀元前180~紀元前141年)と呼ばれる時代で、前漢の文帝と景帝の治世です。次が貞観の治(627~649年)で、唐の太宗・李世民の時代。その次が開元の治(713~741年)で同じく唐の九代皇帝・玄宗の時代の前半です。そして最後が清の時代(1661~1735年)です。4回の盛世を合計してもたった200年足らずです。それから考えると、戦後の日本が曲がりなりにも70年間平和で豊かな時代を享受できたのは、奇跡的に幸運だったと考えられます。このように「タテ」(時間軸)と「ヨコ」(空間軸)の視座を持つことで、歴史的、世界的な見方が可能となり、物事の本質をよりはっきりととらえることができます。
「国語(定性的)」ではなく、「算数(定量的)」に捉える
物事を考える際には、「国語(定性的)」ではなく、「算数(定量的)」に捉えます。 「国語でなく算数で考える」こと、要するに定性的な発想だけでなく、定量的に考えるということです。物事を考える際には、理屈だけでなく常に数字(データ)を参照して考えることが大事なのです。 これは言い換えると「数字・ファクト・ロジック」の3要素で考えるということです。
教養を培ってきたものは、「本」「人」「旅」の3つ
著者の教養を培ってきたものは、「本」「人」「旅」の3つである。本から50%、人から25%、そして旅から25%程度の学びを得ているそうだです。著者の人生は、「本・人・旅」から多くのことを学んできたということです。あえて割合を示せば、本から50%、人から25%、そして旅から25%ぐらいで、さまざまな本を読み、さまざまな人に出会い、さまざまな場所を旅すると、世界にはこれほど素晴らしいところがあり、こんなにも素晴らしい人がいるのかと、その広さと豊かさをあらためて実感します。同時に、自分の小ささや幼さがよく分かります。「本・人・旅」は、常に私に身の丈を思い知らせ、謙虚であらねばと思わせてくれます。「本・人・旅」は私の人生の道しるべなのです。
本を読む
読書こそ教養を身につけるための最良のツールです。最初の1冊目は「点の理解」にとどまる。2冊目を読むと「線の理解」が浮かんでくる。さらに5冊くらい読むと、その分野の全体像が見えてきて、一気に「面の理解」に広がる。1ヶ月くらい時間をかけて10冊くらい読むと、その分野の専門家と話しても内容がわかり、深い理解に繋がり、人生に深みが生まれます。こうして新しい分野を開拓することが、 世界観が広がります。 いったん読むと決めたら、じっくり読むことが肝要です。決して読み急ぎはNG、 速読は百害あって一利なしとさえ考えています。読んでいて分からないところが出てきたら、腑に落ちるまで何度も同じ部分を読み返します。多くの人は早く読み終えたいがために「読み返す」ということをあまりしないようです。しかし、「読み返す」ことによって、最初は分からなかったことでもちゃんと分かるようになり、頭のなかへの入り方がまったく違ってきます。
本書の目次

第1章 教養とは何か?
「自分の頭で考えられる」ことが教養
意見が決められないのは「考え不足」が原因 ほか

第2章 日本のリーダー層は勉強が足りない
「この人は面白そうだ」と思ってもらえるか
世界標準では日本の企業幹部は圧倒的に低学歴 ほか

第3章 出口流・知的生産の方法
「いまさらもう遅い」はサボるための言い訳
「数字・ファクト・ロジック」で考える ほか

第4章 本を読む
速読は百害あって一利なし
古典は無条件で優れている ほか

第5章 人に会う
相手を人脈としか考えない人は、自分もそう見られている
人間が将来に備える唯一の方法は歴史に学ぶこと ほか

第6章 旅に出る
旅こそ最高の遊びにして、教養の源
「マーケット」「若者と女性」を見るのが楽しい街歩き ほか

第7章 教養としての時事問題――国内編――
「選挙・民主主義」「お金」「税と社会保障」の知識は不可欠
「公的年金は破綻する」という嘘に騙されてはいけない ほか

第8章 教養としての時事問題――世界のなかの日本編――
「幹」と「枝葉」をごっちゃにしているTPPをめぐる議論
「わが国固有の領土」という概念は必ずしも万国共通でない ほか

第9章 英語はあなたの人生を変える
「仕事で使わないから英語は不要」という考えは井のなかの蛙
グローバル人材の最低ラインは「TOEFL100点」 ほか

第10章 自分の頭で考える生き方
仕事とはあえて言えば「どうでもいいもの」
「てにをは」を正しく書けない人は筋の通った思考ができない ほか

著者・出版

著者: 出口 治明(でぐち はるあき)


ライフネット生命保険株式会社代表取締役会長兼CEO。1948年、三重県生まれ。京都大学法学部卒業。72年、日本生命保険相互会社入社。企画部や財務企画部にて経営企画を 担当する。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て、2006年に同社を退職。同年、ネットライフ企画株式会社を設立し、代表取締役社長に就任。08年4月、生命保険業免許取得に伴い現社名に変更、13年現職。『生命保険入門 新版』(岩波書店)、『直球勝負の会社』(ダイヤモンド社)、『仕事に効く教養としての「世界史」』(祥伝社)、『本の「使い方」』(角川oneテーマ21)、『「働き方」の教科書』(新潮社)など著書多数。

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