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起業の天才!: 江副浩正 8兆円企業リクルートをつくった男(東洋経済新報社)大西康之

Book Summary
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レビュー

戦後最大の疑獄とされる「リクルート事件」と「失われた30年」、この二つは密接に関係していると聞いたらどのように思うだろうか? 昭和末期に起きたリクルート事件から30年。つまり平成の30年間、日本経済は世界の成長から完全に取り残されてしまったというのが本書の主張だ。

本書は、「起業の天才」と呼ばれた江副浩正という人物の生涯や理念、江副の創ったリクルートという会社、そして「リクルート事件」の真相について、江副を知る多くの人物の逸話とともに事細かに記載している。江副こそ、アマゾンやグーグルといったITジャイアントが作り上げたビジネスと同じことを、まだインターネットがない30年以上も前にやろうとした大天才だった。「ベンチャー不毛の地」となった日本に必要な「起業家の資質」とは何か。 リクルート事件の大打撃を乗り越え1兆8000億円の負債を自力で完済、 株式時価総額で国内10位にまで成長した「奇跡の会社」はどのようにつくられたのか。 苦境に立ち逆風に向かうすべての日本人に贈る、 歴史から葬られた「起業の天才」の真の姿。

しかし既存産業の常識や旧弊を打ち破ってきた江副は、「リクルート事件」により大罪人のレッテルを貼られる。起業家精神に富むチャレンジャーとして難題を乗り越えてきた実績さえ、負の側面と結び付けられ、彼の存在ごと全否定された。そのため、彼の代名詞とも言えるイノベーター、起業家が育ちにくい国となってしまった。それがこの失われた30年だ。

リクルート事件と失われた30年の関係性を深く知りたい方、また、起業志向のビジネスパーソンに手に取っていただきたい一冊だ。従来と異なる生活様式やビジネススタイルへと変容しつつあるコロナ禍の今、もし江副が存命だったなら、きっと新奇なアイデアで次々と新事業を興していたにちがいない。江副が描いた未来に思いを馳せてみてはいかがだろうか。

本書のPoint
インターネットのない時代のグーグル
「求人広告だけの雑誌」─ 『企業への招待』から始まった、リクルートの情報誌ビジネスのいったいどこが革新的だったのか。いまだからわかることだが、江副の情報誌は、一言で言えばインターネットのない時代の「紙のグーグル」だったのである。つまり、情報がほしいユーザーと、情報を届けたい企業を「広告モデル」(ユーザーには無料)によってダイレクトに結びつけたのだ。
クラウド・コンピューティング(現在でいうAWS)を、 30年以上も前に構想していた
1984年、日本でも通信の自由化が決定する。日本の通信を独占していた日本電信電話公社(電電公社)が民営化されNTTになると同時に、民間企業に通信事業への門戸が開放された。
江副は、情報通信分野に怒濤のような投資を開始する。1987年のファイテル(当時、ジェフ・ベゾスが勤めていたベンチャー企業)買収はその流れの中で打った重要な布石のひとつだった。
社会全体で吊るし上げ、犯罪者の烙印を押した「リクルート事件」
江副は2013年1月31日に東京駅で倒れ、人事不省のまま2月8日に息を引き取った。 76歳だった。いや、実際にはもっと前、 52歳のときに日本という国に殺されていたのかもしれない。
日米欧を繫ぐ夢の実現に着手した矢先、思いもしない方向から飛んできた直撃弾によって、その社会的生命を撃ち抜かれたからだ。
いかがわしくなれ
このシンボリックな表現、「いかがわしくなれ!」は、リクルートの危機的状況を救って下さったダイエー創業者、中内さんの言葉らしい。 稀代の経営者、事業家の孫正義さんも、こう言っている。”何度でも言います。いかがわしくあれと。それで、大ぼらを吹こうよと。夢を持って大きなビジョンを描こうよと。”

出る杭は打たれる、出すぎた杭は打たれない、なんて言われるけれども、圧倒的な当事者意識を持って、次世代のためになるであろうポジティブな未来を創るためならば、「いかがわしい」くらいが、丁度良い、いや「いかがわしい」くらいでないと、なすべき事をなし得ないのかもしれない。
本書の目次

【目次】
【第1部 1960】
第1章 ユニコーンの誕生 
第2章 紙のグーグル 
第3章 進撃のダイバーシティー 
第4章 「日本型経営」を叩き潰せ 
第5章 APPI 
第6章 打倒Y 

【第2部 1984】
第7章 江副か稲盛か 
第8章 森田の未来、真藤の未来、江副の未来 
第9章 情報の海へーーALL HANDS ON DECK !(総員配置につけ!) 

【第3部 1989 昭和の終焉・平成の夜明け】
第10章 変容 
第11章 情報が人間を熱くする 
第12章 世紀のスクープ 
第13章 反転 
第14章 「おまえら。もっといかがわしくなれ!」

著者・出版

大西 康之  【著】
おおにし やすゆき

1965年生まれ。愛知県出身。1988年早稲田大学法学部卒業、日本経済新聞社入社。欧州総局(ロンドン)、日本経済新聞編集委員、日経ビジネス編集委員などを経て2016年4月に独立。著書に『稲盛和夫 最後の闘い JAL再生にかけた経営者人生』『ファースト・ペンギン 楽天・三木谷浩史の挑戦』(以上、日本経済新聞出版)、『三洋電機 井植敏の告白』『会社が消えた日 三洋電機10万人のそれから』(以上、日経BP)、『ロケット・ササキ ジョブズが憧れた伝説のエンジニア・佐々木正』(新潮社)などがある。

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