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テスラの実力 (東洋経済新報社)

Book Summary
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レビュー

自動車業界は100年に1度の大変革期を迎えている。核になるのはCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)時代に向けた事業構造の確立であり、テスラは最先端にいる。2020年7月、米テスラの時価総額が、長らく業界首位に君臨してきたトヨタ自動車を上回った。イーロン・マスクCEOの強烈な個性とあいまって、熱狂的なファンが支えている。それだけではなく、テスラの中国進出を見ても、したたかな戦略が伺える。対する日本勢はどうか。自動車に求められる価値とは?、サプライチェーンは? テスラの魅力と実力から自動車産業の未来を探る。

脱炭素化の一翼を担う電気自動車。なかでも「テスラ」の快進撃が目立つ。テスラ=イーロン・マスクの構図を超え、継続的成長を確立できる条件とは?本格化する世界のEV大競争時代。テスラの真の実力を探る。

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世界を持続可能なエネルギーへ。

電気自動車は ガソリン車よりも優れていて、速く、楽しく、運転に妥協する必要がないことを証明したい — そう願った数名のエンジニアにより、2003年、Teslaは創業されました。その後、Teslaは100%電気自動車だけでなく、限りなく拡張可能な、クリーンエネルギーを発蓄電する製品をも製造する会社となり、世界の化石燃料への依存に終止符を打ち、ゼロエミッション社会への移行を加速することで、より良い未来を実現したいと考えています。

2008年に発売したRoadsterは、Teslaの最先端のバッテリー テクノロジーと電動パワートレインで世界中の注目を集めました。その後、Teslaが電気自動車としてゼロから開発した世界初のプレミアムなオールエレクトリックセダンModel Sは、安全性、パフォーマンス、効率などあらゆるカテゴリーにおいてクラス最高と評価されています。電気自動車最長の航続距離、日々性能が向上していくワイヤレス ソフトウェア アップデート、そして0−60mph加速で2.28秒(モータートレンド誌による計測)という記録的な加速で、世界中の21世紀の自動車への期待を大きく塗り替えています。2015年には、米国家道路交通安全局による安全性試験で、すべてのカテゴリーにおいて5つ星評価を獲得した、史上最も安全で速く、最高性能のSUV、Model Xを発売し、プロダクトラインを拡張しました。そしてCEOであるイーロン マスクの掲げた秘密のマスタープランを完遂するために、Teslaは2016年に低価格、量産型の電気自動車Model 3を発表し、2017年に生産を開始しました。その後、Teslaは史上最も安全で最も快適なトラックであるTesla Semiを発表しました。このトラックは、燃費だけで見ると、100万マイル分の燃料費だけで200,000米ドル以上を節約できるようデザインされています。2019年には最大7人乗りの中型SUVであるModel Y、そして従来のトラックよりも実用性が高くスポーツカーよりも優れたパフォーマンスを誇るCybertruckを発表しました。

本書のPoint
テスラ飛躍の原動力となった、EVのペインポイント潰し


まず「バッテリーがもたない」。テスラのEVが登場する以前、ほとんどのEVはボディーが小さくても100キロ程度しかバッテリーが持ちませんでした。かつて大きくバッテリー寿命を伸ばしたのが初期の日産リーフでしたが、それでも一度の充電で100マイル(約160km)弱しか走れませんでした。しかし、テスラは航続距離が300マイル(約480km)以上のモデルだけを製造しています。

そして「充電に時間がかかる」。全国に張り巡らされたテスラのスーパーチャージャーを使えば、10分間で150マイル(約240km)分の充電ができるスポットが豊富にあります。最も速い充電スポットだと30分もあれば300マイル(約480km)ほどの充電ができるので、充電の待機時間は全く苦になりません。

次に「運転が楽しくない」。歴史的にEVはバッテリーを極力使わないように加速も遅く、運転感覚もかなり妥協をしたもので、運転が楽しくありませんでした。一方、テスラは大衆車モデルでも、スポーツカー並みの加速と運転エクスペリエンスができます。最高峰のガソリン車と同等レベルの加速をいつでもサクッと出せるので、試運転する人は皆驚き、その虜になってしまいます。

「価格が高い」。EVは低価格モデルから売り出すのが一般的で、総走行距離や運転エクスペリエンスの妥協を考えると、かなりコスパが悪かったのです。しかし、テスラはまず高価格モデルの製造を優先し、その後に量産型モデルを販売し、中流層にも手が届く価格に抑えました。テスラ自身がリースも行っており、3年リースの月々の支払額は他の車とさほど変わらず、多くの人の手が届くレベルとなり、一気に普及しました。
目標は人類を救うこと
テスラは車がIoTなので、さらなる価値をユーザーに提供することができます。たとえば、数年前にカリフォルニアの大火事やフロリダのハリケーンで多くの避難者が出たことがありました。その際、テスラは非難地域のEVのバッテリー容量をフルに解放しました。普段はバッテリーの寿命を長くするためにある程度、使わせない部分があるのですが、この部分も解放したというわけです。もちろん、シリコンバレーの本社からの操作でした。「人命を尊重する素晴らしい会社」と高く評価されました。

 最近ではテキサスを大寒波が襲い、州の大部分が数日間にわたって停電しました。寒さをしのぐためにガソリン車の車内で暖房をかけ続けた結果、一酸化炭素中毒で亡くなった人もいました。その時期に「テスラのEVは暖房を30時間以上かけ続けても安全だった」という報道インタビューで語る複数の人が取り上げられ、テスラが評価されました。

 もちろん、数日間の停電ともなるとEVの充電はできませんが、ガソリンスタンドのポンプも使えないので同じようなものでした。この大停電で、むしろEVよりも、家庭用蓄電池をつけていた家が助かったのですが、実はこれもテスラの家庭用蓄電池が脚光を浴びました。テスラの蓄電池をつけていれば数日は停電中でも家の電源が持つからです。この蓄電池は、テスラがEV用のバッテリーを大量に作っているので規模の経済が働き、他のメーカーよりも低価格で提供できています。

 テスラCEOのイーロン・マスクは「私たちの目標は自動車業界の改革ではない。人類を救うことだ」と語っています。同社はソーラーパネルのビジネスモデル改革も推進しており、‟風が吹けば桶屋が儲かる”ようにテスラのEVが選ばれる流れをつくっています。
本書の目次

 ・テスラの稼ぐ力は本物か
 ・EVの本場・中国も席巻
 ・分解でわかったEV設計思想
 ・テスラ「モデル3」の性能と乗り味
 ・テスラ車の魅力と課題
 ・イーロン・マスクの頭の中
 ・テックスターの壮大野望
 ・車載用電池をめぐる激闘
 ・INTERVIEW「日本企業の速度ではついていけない」(山田喜彦)
 ・EV化で大打撃企業の生き残り策
 ・EV化で伸びるのはここだ

著者・出版

東洋経済新報社

政治、国際など社会のさまざまなことを経済の視点で読み解いていくのが当社の使命です。当社では記者・雑誌編集部門の全員が一記者であり、自らが現場に出向き、綿密な取材・分析に基づいて記事を執筆します。『週刊東洋経済』や『会社四季報』に代表される東洋経済の報道は、社会に対して大きな影響力を持ちます。事実をただ伝えるのではなく、事象の裏側を見抜く取材、正確な裏付けデータ、客観的な分析を基に、物事を深く掘り下げるのが雑誌報道の醍醐味であり、何者にもおもねることのない健全な批判精神、報道姿勢が東洋経済ジャーナリズムです。

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