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プロセスエコノミー(幻冬舎)尾原和啓

Book Summary
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レビュー

良いモノがあふれた時代、性能や機能はどれも大差ありません。どこで差をつけるのか、それはプロセスです。作る過程自体を売るのがプロセスエコノミーです。情熱を持ってモノを作る時にはドラマがあります。その瞬間に立ち会いたい人は多くいるのです。完成されたアウトプットと同じように、過程(プロセス)に価値がでるのはなぜでしょうか?

自分が「絶対にこれがいい!」と思って購入した商品、あるいは契約したサービスのことを思いだしてください。思い浮かべたら、どうしてその商品、あるいはサービスを選んだか、考えてみてくださいw

おそらく、まずは性能や機能といった「いかに役に立つか」という観点が思い浮かぶはずです。しかし次に考えてほしいのは、「本当にそれだけが決め手だったか」ということです。そこにある物語や世界観、価値観に共感して購入した商品やサービスが、きっとあるのではないでしょうか?情報化によってあらゆるプロダクトが激しい競争に晒されるとき、アウトプットそのものでは差がつかなくなっています。どんなものでも買える世界で、「その商品」でなくてはならない価値・差別化の要素は、物語――プロセスにしかないというの本書の「プロセスエコノミー」です。これからの新しい時代の価値観を象徴する概念です。

アウトプットからプロセスへ、結果から物語へ、本書の中で語られる変化は、これから起きるものではなく、すでにビジネスの最前線で何が起きているものです。

本書のPoint
「役に立つ」より「意味がある」
自動車は動けばいいので、トヨタ、ホンダ、日産どれでもいいわけです。しかし「意味がある」に注目するとベンツ、フェラーリなどが欲しくなります。自動車の機能的にはどの企業も同じぐらい優れていたとしても、フェラーリにはその人の感情を動かす何かがあります。その人にとって「意味がある」のです。 自分が好きなものは、その歴史や過程を知りたくなるものです。情熱を持ってモノを作る時にはドラマがあります。その瞬間に立ち会いたい人は多くいるのです。

例えばコンビニには、200種類を超える、タバコなんかが置かれていたりします。 それぞれのタバコには、それぞれが個として唯一無二の価値を持つから、200種類置かれているのです。 タバコは別に役に立つわけではありませんが、そこには「意味がある」のです。 ある銘柄が持つ固有のストーリーは、他の銘柄では代替できません。人は、物質的に満たされていくと、「意味」という精神性に目を向けるようになります。
グローバル・ハイクオリティとローカル・ロークオリティ
グローバルな企業が増えていき、国内と海外の差がなくなってきています。 日本でもGoogleで検索、Amazonで買い物をしています。 こうなると世界で戦うハイクオリティか、小さいコミュニティで戦うロークオリティに別れます。

グローバル・ハイクオリティは、Facebookやインスタ、TikTokを上回るSNSを作るようなもので、世界中の企業と戦います。一方でローカル・ロークオリティは、近所のスズキさんのラーメン屋を応援するようなローカルなコミュニティを育てます。 プロセスエコノミーはローカル・ロークオリティの戦い方です

たとえば 本が完成するまでの過程を発信し、情報やアイデアをみんな集めて、この本を売りたい仲間を作ります。 そうすると仲間が動画を作ったり様々な宣伝をしてくれるのです。このように応援してくれる人たちをセカンドクリエイターと呼んでいます。 この人たちが集まりコミュニティになります。例えば、キングコング西野亮廣さんの『えんとつ町のプペル』という絵本もそうです。 この絵本自体は、クラウドファンディングで制作費を集められて、さまざまなクリエイターと共同制作されています。 絵本全体の世界観は西野さんが提示し、空の絵を描くのが得意なクリエイターは、空を描き、人物を描くのが得意なクリエイターには、人物を描いてもらうことでそのプロセスに、クリエイターが100人いれば、100人に確実に売れます。 口コミの力も100倍です。
人がプロセスに共感するメカニズム

コトラーのマーケティング理論4.0にも、「 企業が環境に配慮してショッピングバックを廃止したら、それに納得してマイバッグをもっていく。企業の方針に納得して自ら参加する」のようにプロセスエコノミーの要素は入り初めています。

人は常にロジカルに思考、行動しているわけではありません。人が行動するときは感情に従っています。ワクワクや共感が体を動かしているのです。 私達はロジックではなく、ストーリーを大事にしていることが研究からも明らかになっています

プロセスエコノミーでヒトを引きつけるときの心のあり方、それが「利他の心」です。 誰かを喜ばせるため、みんなで協力して作り上げていくことが必要です。 誰かのために動くと脳内でオキシトシンが分泌されます。さらに誰かが利他的な行動しているのを見るだけで、見た人はオキシトシンが分泌されることがわかっています。 利他の連鎖が起きるのです。

何をしたときの感謝には2種類あります。
< 恩恵的感謝>:誰かに何をしてもらったときにする感謝(自分本位のため広がりにくい)
<普遍的感謝>:感謝の気持ちをいつも感じている心のあり方(周囲のことを考えているため協力者が増えやすい)

【コトラーのマーケティング理論4.0の成功事例】
BTS
BTSは肖像権に縛りをかけていません。そのためファンがクラウドファンディングでお金を集めて街頭モニターに広告を出すこともあります。さらにYoutubeで楽曲を流し、ファンが踊ったりコメントするのも自由です。セカンドクリエイターを増やしているのです。
ジャニーズ
ジャニーズJrのファンは無名の時代から推しを応援し、知名度や人気がでたタイミングでデビューできる設計になっています。
シャオミ
世界シェア第4位のスマートフォンを作っている企業です。ファンのことをミファンと呼び、コミュニティで改善案をあつめ、そのアイデアを元に改善を繰り返している企業です。
プロセスエコノミーの実践方法

大前提としてアウトプットが高い水準であること、それを忘れてはいけません。

その前提であっても単純にプロセスを公開するだけでは人を惹きつけません。大事なのはあなたの中にあるWhyです。なぜやるのか、こだわりは何なのかをさらけ出すことです。「What」何をやるのか、「How」どのようにやるのか、よりも「Why」なぜやるのかを明確することで人を惹きつけます。大きな「Why」をもっている人の共感が生まれると、周りにいる人がその人を応援したくなります。

本書の目次

第1章 なぜプロセスに価値が出るのか
 ・グローバル・ハイクオリティかローカル・ロークオリティか
 ・世界の若者の「日本のオタク化」など

第2章 人がプロセスに共感するメカニズム
 ・オバマ大統領を誕生させた「Self Us Now」理論
 ・ハイネケンの最高すぎるCMなど

第3章 プロセスエコノミーをいかに実装するか
 ・「正解主義」から「修正主義」へ
 ・「オーケストラ型」から「ジャズ型」へなど

第4章 プロセスエコノミーの実践方法
 ・ 1億総発信者時代の「Why」の価値
 ・楽天で人気店になるための3つの法則など

第5章 プロセスエコノミー実例集
 ・BTSが世界市場で突き抜けた理由
 ・中国シャオミの「みんなで作り上げるスマホ」など

第6章 プロセスエコノミーの弊害
 ・自分を大事にして常に「Why」に立ち返る
 ・大切なのは他人ではなく自分のモノサシ
 ・「Will」「Can」「Must」の順番を間違えないなど

第7章 プロセスエコノミーは私たちをどう変えるか
 ・Googleの20%とマインドフルネス
 ・「ジグソーパズル型」から「レゴ型」へのパラダイムシフトなど

著者・出版

尾原和啓 (おばら かずひろ)


1970年生まれ。京都大学大学院工学研究科応用システム専攻人工知能論講座修了。マッキンゼー・アンド・カンパニーにてキャリアをスタートし、NTTドコモのiモード事業立ち上げ支援、リクルート(2回)、ケイ・ラボラトリー(現:KLab、取締役)、コーポレイトディレクション、サイバード、電子金券開発、オプト、Google、楽天(執行役員)の事業企画、投資、新規事業に従事。 経済産業省対外通商政策委員、産業総合研究所人工知能センターアドバイザー等を歴任。 現職は14職目 シンガポール、バリ島をベースに人・事業を紡ぐカタリストでもある。ボランティアで「TEDカンファレンス」の日本オーディション、「Burning Japan」に参加するなど、西海岸文化事情にも詳しい。


著書『アフターデジタル』(共著、日経BP)は経済産業大臣・世耕氏より推挙。
『モチベーション革命』(幻冬舎NewsPicks book)は2018年Amazon Kindleで最もダウンロードされた本に、中国・韓国・台湾で翻訳。『ITビジネスの原理』(NHK出版)は2014年、2015年連続売り上げTOP10入りのロングセラー(2014年7位、2015年位)。韓国、中国に翻訳。

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