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ファシリテーションの教科書(東洋経済新報社)吉田素文

Book Summary
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レビュー

この本はファシリテーションについて、それはどのような技術であるのか、その目的や上手く議論を進行させるための考え方、手法が体系的に記載されています。

ファシリテーションとは、議論の参加者に目的と理由を深く理解させ、具体的なあるべき姿を自ら描き、ワクワク感や当事者意識を持てるレベルまでの納得感(=腹落ち感)を生み出すコミュニケーションのこと。そのファシリテーションを上手く行うため必要な技術を書き出すと下記のようなものがあるが一言で纏めると「腹落ち感」をつくることになります。

- 「到達点に向け、論点を抑え、あるべき議論の姿を設計する技術(= 仕込み)」
- 「参加者の発言を引き出し、理解・共有し、議論を方向づけ、結論づける技術(= さばき)」
- 「問題解決」「構造的な話の理解」ができる思考力
- 「人の可能性を信じ、意欲、能力、知恵を引き出す」という姿

腹落ち感とは、単に結論に合意している状態ではなく、そこで決まったことを自分事として進めようと思える状態まで指します。腹落ち感がないファシリテーションでは、アクションプランが決定しても決まった最低限のことしか進みません。決まったからやる、レベルの腹落ち感ではどこまでも他人事です。上位の目的やあるべき姿を背景を含めて理解していれば、状況が変わっても上位の目的に照らし合わせて自分の頭でどうすべきか考えられます。その状態まで導くことそこがファシリテーションなのです。

ファシリテーションは、人の可能性を信じて、意欲、能力、知恵を引き出すという姿勢と準備が重要です。準備が不十分だと議論をリードできません。十分に準備して展開や全体像をつかむなど腹落ち感に導くファシリテーションに必要なことが体系的に纏めら得ているので、一度ファシリテーションと向き合いたいという方は一読されることをオススめします。

本書のPoint
出発点と到達点を明確にする
ファシリテーションの準備では出発点と到達点を明確にすることが最重要です。どこから始めてどこをゴールに目指すのかがあやふやな会議はなにも決まらずに終わります。

まずは到達点を仮置きします。到達点として会議が終わったときにどんな状態になっているか(「何がどうなったらゴールか?」と問いかける)、到達点はアジェンダなどにも明記しておき、参加者にも共有します。

次に出発点を設定します。出発点として参加者の前提知識、認識レベルを知ることが大切です。「いきなりこの話から始めて混乱しないか」出発点を設定するポイントは参加者の状況を把握することです。ある問題の解決策を決定するのが目的だとして、参加者がそもそも問題を認識していない場合があります。その場合はまずなにが問題かという共通認識を作るところから始めなければなりません。まず参加者が「何を知っていて何を知らないのか」を考え、情報と認識のレベルをそろえることが大切です。出発点が決まったら到達点までの間を埋めていきましょう。具体的には論点の地図をつくるイメージです。
ファシリテーション手法(仕込みとさばき)

(1)目的を意識する。
ファシリテーションにおいて大切なことは、メンバーへの腹落ち感を醸成させることである。腹落ち感を持たせるには、「目的と理由を深く理解させる」「あるべき姿をメンバー自身が描く」「ワクワク感を持つまで納得させる」、が必要である。しかし、自身の専門性やポジションパワーが生かせない場でのファシリテーションは難しく、自分の意見を押し付ける会議になりがちである。そこで、仕込みとさばきが必要となる。 


(2)議論の地図を創る
仕込みの目的は、「議論の目的を達成するために、考えるべきこと・議論すべきこと」を考えておくことである。議論の最終目的は行動することであり、そこから逆算して仕込みを行います。議論の出発点と到達点を定めておく。合意形成のステップを踏まえ、今回の議論をどこから始め、どこまで進めるかを事前に考えておきます。大枠の地図を描いておくのです。



(3)参加者の状況を把握する
仕込みですべきこと2つ目は、参加者の状況を把握する。特に、議論のテーマ・議題から、参加者の状況を押さえることが求められる。「議題に対する認識レベル」「議題に対する意見・態度」「そもそもの思考・行動特性」を押さえておくことが好ましいです。


(4)さばき
さばきにおいて大切なことは、発言を引き出し、理解し、共有することです。 発言の理解・共有には、発言自体を構造的に受け止め、どのように受け取ったかを発言者に返します。理解があっているかを確認する作業が不可欠で、参加者の発言は、何のために、何について、何を 話しているかを理解することが必要で「So What?」などを使って、深堀します。




(5)議論を方向づけ、対立をマネジメントする
議論を方向づけるには、議論・発言の状況を分析して対応を考えなければならない。①参加者に任せ委ねる②必要な論点を再確認する③議論を広げる/深める④今は話さず後回しにする⑤論点を戻す。


対立が生じる理由は、おおむね5つに分類される。すなわち、①お互いの持つ情報が異なる②お互いが重視するポイントが異なる③何がどの程度どのように問題か、認識が異なる④考え付く解決策と、解決策選択時のポイントが異なる⑤解決策のどれを選ぶか異なる。


会議のファシリテーションにおいて、感情に配慮することは非常に重要である。人は感情で動く生き物なので、感情をないがしろにしてはいけない。 感情へ配慮する際には、3点考慮すべき。①場の空気を整え、②感情に対処し、③集団の感情に気を配る。
本書の目次

第1章    ファシリテーション ─変革リーダーのコアスキル
第2~3章   議論の大きな骨格をつかむ。参加者の状況を把握する
第4章    「論点」を広く洗い出し、絞り、深める
第5章    合意形成・問題解決のステップでファシリテーションを実践する
第6~7章   発言を引き出し、深く理解する
第8~9章   議論を方向づけ、結論づける。対立をマネジメントする
第10~11章  感情に働きかける。ファシリテーションは「合気道」

著者・出版

吉田 素文(ヨシダ モトフミ)


グロービス経営大学院教授
1964年生まれ。立教大学大学院文学研究科教育学専攻修士課程修了。ロンドン・ビジネススクールSEP修了。大手私鉄会社勤務を経て、2000年よりグロービスに参画。グロービスでは研修・クラスの品質管理、社内外の講師の管理・育成を統括。ケースメソッドなどインタラクティブなティーチング方法論を専門とし、実践的なティーチングメソッドの研究・実践により、多数の質の高い講師・クラスを生み出している。また論理思考・問題解決・コミュニケーション・経営戦略・リーダーシップ・アカウンティングなどの領域を中心に、プログラム・コンテンツ開発を行うとともに、グロービス経営大学院での講義、および大手企業でのアクションラーニング・セッションのファシリテーターを多く務める。共著書に『MBAクリティカル・シンキング』(ダイヤモンド社)がある。

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