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インダストリー4.0―第4次産業革命の全貌(東洋経済新報社)尾木 蔵人

Book Summary
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レビュー

「インダストリー4.0」(第4の産業革命)とは、ドイツが進める国家プロジェクトのことを本書では指しています。インターネットと人工知能を活用し、生産や流通の自動化、スマート化を図るもので、ドイツだけでなく米国でも、産業全体をスマート化しようという動きが進でいます。今、世界に広がりつつある、これら「21世紀の産業革命」の概要、今後ビジネスに及ぼす影響などを、本書はわかりやすく説明されています。

デジタルとビジネスが融合している昨今、経営に携わる人だけでなく、営業からデリバリー部門までこの世の中の大きな変化を捉えることが重要だと考えます。今、世界各国で、「インダストリー4.0」 ―― “第4の産業革命”が注目されているか、その背景に目を向け、自分事としてこの潮流を受け止めましょう。

インダストリー4.0とはネットワークで情報をつなげ、コンピュータ、人工知能を活用して、生産や流通などの自動化を最適なレベルまで引き上げるという試みだ。インターネットの爆発的な普及しインターネットにつながっていたヒトとモノは 2000年の約2億から、その後、スマートフォンなどの普及によって、2013年には100億近くまで増加、そして2020年には500億以上のヒトとモノがインターネットにつながっています。スマートフォンがヒトとヒト、ヒトとモノをインターネットでつなぐとすれば、センサーはモノとモノをつなぐ。技術革新と小型化、価格の低下が進んだ結果、センサーの数は爆発的に増え続けている。世界のセンサー生産数は2007年に1000万個だったが、2012年には35億個に急増。2020年前後には、年間1兆個が生産されると予想されている。 センサーを介し、モノとモノが自らネットワークでつながる。これが、今話題のIoT(Internet of Things:モノのインターネット)社会です。 こうした中、インターネットのネットワークを活用して、流通、医療、インフラ、交通システムを飛躍的に改善する動きが急速に広がり始めた。 ものづくりの分野でも、ネットワーク化した情報を活用し、生産・流通の現場の効率化を進める動きが活発化しています。また、製品にセンサーを組み込んでネットに接続し、スマート化、センサーから収集される膨大なデータを、人工知能で分析し、その結果を消費者に提供することで付加価値を高めるという動きも始まっていることを認識しましょう。

本書のPoint
インダストリー4.0のコンセプトは「スマートファクトリー(考える工場)」

インダストリー4.0の中でも、中心的なコンセプトとして「スマートファクトリー」、つまり「考える工場」が挙げられます。スマートファクトリーとは、機械や人間、その他のあらゆる企業資源が相互に接続して通信し、生産プロセスをより効率化・高品質化させるための概念です。
工場では設備・デバイス・人間などのあらゆる要素が複雑に絡み合って機能していますが、スマートファクトリー化された工場では、そういったデータを的確に把握して最適なオペレーションを実行できるようになります。例えば、機械やセンサーが機能すれば工場の稼働状況の見える化が可能です。さらに発展させれば各製品の製造日時や納品場所といった情報にもとづいて、人間からの指示を逐一受けなくても機械が自律的に判断できるようになります。

インダストリー4.0とIoTの違いは?
インダストリー4.0とIoTとは、混同されやすい用語ですが、意味は異なります。まず後者のIoTとは製品・部品・デバイス・設備といったモノがインターネットに接続される仕組みです。一方、インダストリー4.0は、モノがインターネットに接続していることはもちろん、モノとモノ同士が結び付く機能や、あるいはモノの集合体である業務プロセスが相互に連携しながら生産を実施する仕組みを含んでいます。
インダストリー4.0によって実現すること

<工場の完全自動化>
工場においてIoT化がますます進み、製品・部品・業務プロセス・設備・人などあらゆるモノがインターネットに接続することで、工場の完全自動化に近づいていく可能性が高まります。インダストリー4.0によって工場のスマート化が実現すれば、遠隔操作によって生産現場以外の場所からでも稼働状況を把握したり、指示を出したりできるようになるのです。現場に何人ものスタッフを常駐させる必要はありません。生産ラインで人が作業するのは、点検時や故障、トラブルがあった場合のみで、日常的な生産工程では人を必要としなくなる可能性は十分に考えられます。
また、そもそも遠隔での指示も不要になる可能性も高いでしょう。意思決定の分散化が進めば、生産設備自体が「何を、どれだけ、いつ生産すればよいのか」を判断し、そのために必要な稼働を自ら計算して実行できるようになるのです。こういった革新が進めば、近い将来に完全自動化の実現が期待できます。

<データによる精度の高い管理>
製造プロセスのデータ化が進んでいくことが見込まれます。従来、大手メーカーを中心に現場のデータ化を目指して、設備の状態や生産ラインなどのデータは積極的に収集・分析に使用されてきました。しかし、データ収集や分析には独自のシステム構築が必要なことも多く、資金力に乏しい中小製造業者は、熟練者の経験や勘に頼ることがあったのも事実です。大企業であっても、技術的な障壁があるために、データ収集や活用に課題を抱えているケースもありました。
インダストリー4.0がさらに発展すれば、技術力もコスト削減効果も十分に発揮され、従来は難しかった工場全体のデータ収集や、データの有効活用が企業規模を問わずに実現できる可能性があります。データ化が進むと、工場の最適なオペレーションや故障予知、品質の安定化など、期待できる効果は計り知れません。工場の自動化促進や生産性アップも叶うでしょう。

~ ~ ~※雇用は課題※ ~ ~ ~
インダストリー4.0の進展によって、さまざまなプラスの効果が期待されている一方、いくつかの課題も生まれています。その1つが、生産工程の効率化や自動化による雇用消失や失業率の増加です。スマートファクトリーでは従来は人が判断していた作業を機械が意思決定できるようになり、生産ラインでも大きな省力化が見込めます。また、ビッグデータの収集は可能になりますが、業務改善や生産プロセスの最適化につながるかは別問題です。有効活用するには、データを使う目的や使いこなせる知識を身につけなければなりません。製造業は、今以上に頭脳を駆使する場面が増えるでしょう。
~ ~ ~※雇用は課題※ ~ ~ ~

日本におけるインダストリー4.0

日本は、ドイツやアメリカなど世界の国々よりもやや出遅れましたが、2015年~2017年あたりから徐々にインダストリー4.0が普及してきました。ドイツでは政府と産業界が一体となって国家プロジェクトとして推進している一方、日本は企業が主体となって個別に取り組んでいるという違いがあります。
世界でのインダストリー4.0の動きを受けて、日本の製造業にも影響がないわけではありません。政府の「未来投資戦略2018概要」には、Society5.0という名称でデジタル化への方針が打ち出されています。また、製造業界でも日本の大手メーカーがアメリカのIT企業と新会社を共同設立し、AIやIoT、クラウドといった技術を活用して新しいサービスを生み出そうとする取り組み事例もあるのです。
本書の目次

第1章 7つのポイントですぐわかる! 「インダストリー4.0」とは何か?
 1.世界で広がる「インダストリー4.0」の大潮流
 2.第1~第3の産業革命がインダストリー4.0の下地を作った
 3.インダストリー4.0が目指す「スマート工場」とは?
 4.IoTと人工知能、インダストリー4.0の関係
 5.ビジネスモデルがこう変わる!:ポイントは“オーダーメイド”と“アフターサービス”
 6.ロボットにとって代わられる!?ものづくり業界の雇用の行方
 7.未来の工場は地球に優しい

第2章 「インダストリー4.0」の衝撃:
・ドイツが取り組む「巨大国家プロジェクト」の全容を明らかに!
 ・原動力になったのはグーグルやアップル、ITの巨人たちへの危機感
 ・日本が知らないスーパー・イノベーター集団ラウンホーファー研究所
 ・究極のゴール、「国中の工場を連結させよ!」:バリューチェーンの水平連結

第3章 「インダストリー4・0」で暮らしはどう変わるのか?:
 ・英語が苦手な日本人のピンチ!?:海外とのコミュニケーションはどうなるか
 ・生活にかかるお金はインダストリー4・0でどう変わるのか?
 ・インダストリー4・0の時代の教育とは?

第4章 アメリカが取り組む第4次産業革命の第2ラウンド!
 ・AIの巨人・IBMの戦略とは?
 ・グーグル「スマートカー」の衝撃:自動車メーカーへの挑戦状
 ・製造業の巨人・GEの戦略とは?:覇権の鍵はソフトウェアが握る

第5章 アジアの動向:日本以外のアジア諸国も動いている!
 ・高齢化社会に備えよ! 「世界の工場」の未来
 ・「ドイツもうで」をする台湾、韓国の企業:新時代のコスト削減を狙う
 ・インドを世界のソフトウェア工場へ:脱・アウトソース先

第6章 日本の「ものづくり」が進むべき道:インダストリー4・0で企業も社会も変わる!
 ・日本の中小企業が変わる! 地方創生にもビッグチャンス
 ・少子高齢化社会への処方箋、女性の活躍の起爆剤
 ・日本が「ものづくり」のリーダーになるには?

著者・出版

尾木 蔵人(オギ クランド)


三菱UFJリサーチ&コンサルティング 国際営業部副部長
ドイツ連邦共和国 ザクセン州経済振興公社 日本代表部代表
1960年島根県生まれ。東京外国語大学ドイツ語学科卒業後、85年東京銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行。ドイツ、オーストリア、ポーランド、UAE、英国に合わせて14年駐在。日系企業の海外進出支援に取り組み2005年ポーランド日本経済委員会より表彰。
日本輸出入銀行(現・国際協力銀行)出向。アジア諸国向けIMF、世界銀行、アジア開発銀行協調融資等担当。2014年4月より現職。企業活力研究所 ものづくり競争力研究会 委員
「ニュースウオッチ9」「おはよう日本」(NHK)、『日経ものづくり』『日経産業新聞』等、テレビ出演、新聞雑誌掲載多数。

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