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パン屋ではおにぎりを売れ(かんき出版)柿内尚文

Book Summary
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レビュー

「しっかり考えなさい」とよくいわれるが、「考える」方法を習ったことがある人は少ないのではないだろうか。ではどうやって考えたらよいのか。その重要な問いと向き合うのに格好の一冊が本書『パン屋ではおにぎりを売れ』だ。 著者の柿内尚文氏は、これまで50冊以上の本を10万部以上のベストセラーに育てあげてきた敏腕編集者だ。そう聞くと、クリエイティブなセンスの賜物ではないかと思うかもしれないが、著者は自分のことを平凡だと評価する。そんな著者がなぜベストセラーを連発できたのか。それは、自分なりに「考える技術」を身につけ、それを言語化してきたからにほかならない。
 
本書では、その「考える技術」が惜しげもなく詳細に解説されている。タイトルの「パン屋ではおにぎりを売れ」という発想は、考える技術の1つである「ずらす法」によって生み出したものだ。「パン屋が本気でつくったおにぎり」のように、パン屋の魅力をずらして生み出した商品を売れば、新たな顧客を取り込めるのではないか。このような具体的な着眼点が用途別にふんだんに盛り込まれている。

 まだ身につけている人が少ない「アイデアの出し方」をいち早く習得すれば、周囲から「企画力がある人」と一目置かれることだろう。さらには、より幸せな人生を送るためにとれる選択肢の幅を広げてくれる。ぜひ一読してみてください。

本書のPoint
■「考える」について知ってほしい3つのこと
「考える」とは、「広げる」+「深める」である。「広げる」とは可能性を考えて新しいものを生み出すこと、「深める」とは本質的価値を考えることである。この両方を実現したのが、「ほぼ日手帳」だ。手帳の本質的価値を深く考え、「LIFEのBOOK」という価値づけをしたうえで、バリエーション豊かな手帳カバーや使い方事例、手帳をテーマにしたイベントなど、その楽しみ方を広げることにもトライしている。このように、どんな議題でも、「広げる」と「深める」が「考える」ことのベースとなる。

また「 考える」は「思う」や「知っている」とは違うことを認識しよう。「考える」のは、単に頭に浮かんでくる、感じることを意味する「思う」とは異なる。目的のために意識的に思考することである。この「思う」を「考える」と誤解しているケースがじつは多い。また、調べて「知っている」ことを「考える」と勘違いしているケースもある。インプットはあくまで「答えを見つけるための材料」だ。調べてまとめることはゴールではない。
 
 
■考える=『論理的』+『非論理的』
考えるには、『論理的に考える』と『非論理的に考える』があります。
この両方を手なずけることで、自分の『考える力』をレベルアップさせていくことができるそうです。 「考える」というと「ロジカル・シンキング」を思い浮かべる人が多いだろう。だが、いままでにないものや社会の未来を考える際には、それだけではなかなか答えが出ない。「未来」を考えるときに必要なのは、「非論理的に考える」ことだ。ロジックから始める思考と、直感や思いなどの非論理的なものから始める思考を組み合わせることで、「考える力」がレベルアップしていく。
 ■考える技術が未来を変える
「町中華」という言葉をご存知だろうか。昔ながらのラーメンと餃子とチャーハンが売りで、安くてボリューム満点。そんな何の変哲もない中華料理店のことだ。ところが、「町中華」と命名され、テレビやSNSで紹介されるようになった。すると、中華料理店自体は何も変わっていないにもかかわらず、若い女性にまで人気の魅力的な店に変貌を遂げた。このように、同じものでも、視点を変えるだけで魅力的になったり違う価値が生まれたりする。考える技術を使えば、これからの時代のキーワードたりうる価値をつくることができる。しかし、この技術を身につけている人は、思いのほか少ない。よって、早く習得すれば強烈な強みになる。

著者はもともとクリエイティブなセンスに長けているわけではなかったが、ベストセラーを連発してきている。その秘密は、個人の技術となっていた書籍編集のノウハウを言語化し、「考える技術」を共有できるようにしたことにある。 「考える」には忍耐が必要だ。しかし、ほんの小さなことでも、毎日積み重ねていくことで、変化は確実に訪れる。やがて考える技術が身につき、行動が変わり、脳も変化していく。そうなると、その影響力は周囲にまで広がり、他人の考えや行動をも変えていくのだ。自分が思い描く未来を実現できるか否かは自分の思考にかかっている。
■アイデアを生み出すための3つのルール
アイデアを生むためには、①「ゴールを決める」②「インプットして現状を整理する」③「考える=『考えを広げる+考えを深める』」という3つのルールを活用するとよい。

◇ルール1: ゴールを決める
まずは目的であるゴールを設定しなければならない。悩みの多くはゴールがわからなくなることで起きている。また、常識にとらわれるあまり思考停止し、手段の目的化が起こることも多い。「そもそも」から始めてゴールを決めれば、思考の迷路に迷い込んでしまうことはない。

◇ルール2: インプットして現状を整理する
次に行うのは現状の整理だ。具体的には、「課題を決める」「必要な情報をインプットする」「インプットした情報を整理する」という3つのプロセスを経る。最初は、ゴールに向かうための課題は何かを決める。次に、課題を解決してゴールに向かうためのインプットを行う。目的が明確であれば、意識している情報が自然と目に入ってくる「カラーバス効果」が起き、効率的なインプットができる。ここではあまり時間をかけすぎず、60%くらいのインプットができたら先に進むとよい。最後に、インプットした情報を整理する。その際には、人間の内面にある普遍性、本音を考えること、そしてインプットした情報を疑うことの2つを意識するとよい。最初から完璧をめざさずに、この3つのプロセスに沿って実践しよう。

◇ルール3:考える=「考えを広げる+考えを深める」
ここからは考えるためのルール3について重点的に紹介していこう。考えるには、「考えを広げる」と「考えを深める」の2つの要素がある。本書に取り上げられているさまざまな思考法のうち一部を解説する。

◇かけ合わせ法
まずは、スティーブ・ジョブズも使っていたといわれる「かけ合わせ法」だ。これにより思考が広がり、「うんこ漢字ドリル」「乳酸菌ショコラ」など、多くのヒット商品が生まれている。
 具体的には、ヒットの二大要素である「新しさ」と「共感」を求めて、「出会ったことがない言葉と言葉」をひたすらかけ合わせていく。たとえば、社員の離職率を下げるプランを立てるとしよう。それならば、「脱離職ランチ」「脱離職休暇」「脱離職有名人」「まいにち脱離職」などと、「脱離職」を中心に思いついた言葉をどんどん組み合わせてみる。すると、そのうちに「これは何かできそう」というものが生まれる。これが、思いもよらない面白いものを生むきっかけになるのだ。

◇ずらす法
考えを広げる方法に、「ずらす法」がある。これは、すでに存在するものに新しい風を吹かせたいときに使える方法だ。著者はこの方法で、本をベストセラーにした経験がある。もともとサラリーマン向け自己啓発本として書いたものだが、タイトルを『のび太という生き方』に変え、ポジションを、「子ども向けの読書感想文にも使える本」にずらす策を打った。すると、40万部を超えるベストセラーが誕生した。こうして、すでにあるものの価値をずらすと、新しい価値が生まれる可能性が高まるのだ。

◇360度分解法
 考えを深める方法の1つに、「いいこと探し」ができる思考法、その名も「360度分解法」がある。これは、360度全方位から分解して、魅力、価値があるところを無理やりにでも書き出していく方法だ。まず、真ん中にテーマを書き、そのまわりに「ジャンル」を書く。そして、「ジャンル」ごとにそのテーマについて思いつくことを書き足していく。このとき、ダメなことばかりでなく、良いところも書くのがコツだ。 たとえば、出版業界では長らく出版不況といわれている。だが、そこで思考停止せずに、本をもっと読んでもらい、買ってもらうにはどうしたらいいかを、「360度分解法」で考えるのだ。もし「本と健康」というテーマなら、健康長寿の人に読書の習慣がある人が多い、読書は脳を若返らせる、短い読書でもストレスが大幅に減る、といったデータを活用できる。これらのデータがあまり知られていないという事実から、「本と健康」という面では、本の価値を伝える余地が大いにあることがわかる。
 
 
本書の目次

第1章 「考える」について最初に知っておいてほしい3つのこと
1 考える=「広げる」+「深める」
2 「考える」と「思う」はまったくの別物
3 考えるには「論理的に考える」と 「非論理的に考える」がある
コラム1 人類長年の課題「習慣化」に挑む

第2章 「考える技術」で未来は変えられる
普通だったものが、ちょっとしたことですごく魅力的なものに生まれ変わる
「考える技術」はまだまだブルーオーシャン!
「考える」には邪魔するものがたくさんいる!
東大出身者には 「考える技術」を身につけている人が多い
「考える技術」で人生を楽しくしよう!
コラム2 失敗は最強のインプット

第3章 「考える技術」を思い通りに使いこなす
アイデアは浮かんでくるものではなく、つくるもの
ルール1 ゴールを決める
ルール2 インプットして現状を整理する
ルール3 考える=「考えを広げる、考えを深める」
考えを広げる方法1/6 「かけあわせ法」
考えを広げる方法2/6 「数珠つなぎ連想法」
考えを広げる方法3/6 「ずらす法」
考えを広げる方法4/6 「脱2択」
考えを広げる方法5/6 「まとめる法」
考えを広げる方法6/6 「あったらいいな」
考えを深める方法1/6 「360度分解法」
考えを深める方法2/6 「ポジティブ価値化」
考えを深める方法3/6 「自分ゴト、あなたゴト、社会ゴト」
考えを深める方法3/6 「すごろく法」
考えを深める方法5/6 「正体探し」
考えを深める方法6/6 「キャッチコピー法」
コラム3 難しいから自分でやる

第4章 頭の中をクリアにする「思考ノート」のつくり方
まっ白いノートに 考えたことを書いていくことのすばらしさ
すごい人はなぜノートに書くのか?
ノートを使えば、仕事がつまらない理由も一目瞭然
実践! 思考ノートのつくり方
ノートのもうひとつの強み「思考貯金」
ホワイトボードでみんなの頭の中を見える化
コラム3 熱狂して生きろ! に惑わされない

第5章 考える技術がさらに上がる習慣
頭だけで考えた「ロジカル仮説」は 間違えることがある
オリジナル=マネ×マネ×マネ
いい人のままだと、いつまで経っても思考は二流
人の頭を使わせてもらう
「考える時間」をスケジュールに入れる
考える練習=「シコ練」をしているか?
「考える時間」をマシマシに
シンキングプレイス= 思考が生まれる場所をつくる

著者・出版

柿内 尚文 (かきうちたかふみ)


編集者、コンテンツマーケター。
◉――1968年生まれ。東京都出身。聖光学院高等学校、慶應義塾大学文学部卒業。読売広告社を経て出版業界に転職。ぶんか社、アスキーを経て現在、株式会社アスコム取締役。
◉――長年、雑誌と書籍の編集に携わり、これまで企画した本やムックの累計発行部数は1000万部以上、10万部を超えるベストセラーは50冊以上に及ぶ。現在は本の編集だけでなく、編集という手法を活用した企業のマーケティングや事業構築、商品開発のサポート、セミナーや講演など多岐にわたり活動。初の著書『パン屋ではおにぎりを売れ』(小社)はベストセラーに。
◉――趣味はサッカー観戦と歩くこと。サッカー観戦は毎年30試合以上をスタジアム観戦するほど。

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