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EQ~こころの知能指数(講談社)ダニエル・ゴールマン

Book Summary
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レビュー

EQとは「心の知能指数」を指します。よく知られるIQはIntelligence Quotientの略で、日本では単に知能指数と訳されます。これに対しEQはEmotional intelligence Quotientの略となります。EQが高ければ高いほど自分の感情をしっかりとコントロールでき、相手の気持ちを思いやれる心の力になります。 EQの概念は、1989年のアメリカで誕生し、ビジネスの成功や幸福度はIQだけでは決まらないというIQへの批判的な背景があります。そして実際に本書では、社会に出てからはIQよりもEQのほうが重要だといっており、自分の感情のコントロール方法とその重要性について知ることができます。

人生で成功したり、幸福感を感じるには、EQが8割、IQが2割影響するといわれています。 それほど重要なEQについて、まともに教育を受けた人は少ないことには違和感を感じざるえません。 EQについて、ハーバード大学の卒業生を対象に10年間調査した結果があります。 その調査結果によると、大学の成績がよい人が必ず成功したり幸福だとは限らないということです。
IQが高いからといって、収入や業績、地位などビジネスで成功しているとは言えないそうです。 また、友人や家族との人間関係や恋愛面で幸せだとも限らないそうです。逆にEQが高い人は、幸福度も高いし健康状態もよいという結果がでています。

EQの基本は、情動を認識してコントロールすることです。本書でも「情動の自己認識、すなわち自分の中にある感情を認識する能力は、EQの一番大切な基本だ。感情を適切な状態に制御しておく能力は、情動の自己認識の上に成り立つ」と書かれている。

人は意外にも、自分の本当の気持ちを、自分でわかっていない場合が多いそうです。そこで情動の自己認識が求められます。どのような感情の状態なのかを自分自身で認識することが一番大切な基準となります。これはメタ認知、観察する自己などとも呼ばれます。
※メタ認知能力とは「自分の認知活動(知覚、情動、記憶、思考)を客観的に捉え、評価した上で自分の言動を制御していく能力」を意味します。アメリカの心理学者:ジョン・H・フラベルによって1970年代に定義されたのが始まりです。メタ認知の大まかな流れは「認知→評価→制御」となっており、メタ認知能力の高い人は、この認知→評価→制御のサイクルを高速かつ正確に実行することができます。

本書のPoint
ダニエル・ゴールマン氏のいうEQの構成要素

【自己認識(Self-awareness)自分自身の情動を知る
高い自己認識を持つ人は、自分に自信があり、現実的な自己評価ができます。自分を笑い飛ばすユーモアや、建設的な批判を受け入れられるタフさも特徴的です。
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情動の自己認識として、自分自身の感情を認識する力が問われます。例えば何かに腹を立てているときに、自分では怒っているという自覚がない場合があります。周りの人から怒っていると指摘されても「怒っていない」と否定しますが、あとから振り返ってみると怒っていたと気付くことができます。自分の情動は意外と自分ではなかなか自覚できないものだということです。
そのように怒っているときに、怒っていることを認識するだけで、自分自身を客観視でき、冷静さを取り戻すことができます。そして自分の気持ちを理解すると、次は自分の感情をコントロールできるようになるのです。 本書のなかでは侍と禅僧のかけひきから、感情に囚われて我を忘れた状態とそれを認識した状態との決定的な差を描いている。ソクラテスの「汝自身を知れ」という言葉にも表れている。
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< 自己認識 の伸ばし方>
・日記をつける( 感情の動きの傾向が分かります)
・ 人から意見をもらう( いろんな人からの意見から感情の動きの傾向を探ってみる)



【自己抑制(Self-regulation)感情を抑制する
高い自己抑制を持つ人は誠実さや高潔さがあり変化に対して寛容に対応できる特徴があります。
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感情を制御するには、感情の発端を問い直すことが有効です。そしてその感情が発生してから、自己認識するのが早ければ早いほど、感情の増幅を抑えるのに効果的です。これができると、自分を動機づけるためのモチベーション管理もしやすくなります。 本書の中では、ハムレットの一説から、激情の奴隷にならずに運命がもたらす感情の嵐に耐える自制心を持つことは、プラトンの時代から美徳とされてきたと述べている。
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< 自己抑制 の伸ばし方>
・深呼吸をする( 怒りのピークは長くて6秒、深呼吸をして間をとる)
・ ポジティブなボディランゲージ( できるふりをすると、脳が無意識にできると思いこむ )


【動機付け(Motivation)自分を動機づける
高い動機付けを持つ人は、仕事への情熱があり、改革に向けてひるまない努力ができます。失敗に直面しても、楽観的にものごとを進められる点が特徴的です。
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この動機づけには、「現実的な楽観主義を持つ」ということが重要です。例えば、「自分は目標を達成できる」とチャレンジするのはよいですが、「自分は目標を簡単に達成できる」と根拠のない理由や自信は、現実的とは言えません。多少の困難はあるかもしれないが、目標は必ず達成できるという現実性を認めた上で、結果に楽観的であるとよいでしょう。 本書の中では、心理学者スナイダーの研究として、希望を持ち続ける能力の高い学生は自分自身に高めの目標を課し、しかも一所懸命努力してその目標を達成する力がある。知能が同じなら学校の成績をきめるのは希望の力だと述べている。
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< 動機付け の伸ばし方>
・自分の人生を振り返る( 自分が積み上げてきた行動から、モチベーションが見つかる )
・やりたいことリストを作る( 自分は何を欲しているのかを確認する )


【共感性(Empathy)他人の感情を認識する
高い共感性を持つ人は、優れた人材を育成できます。異文化に対して敏感な感覚を持っている点も特徴的です。

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ここまでは自分にフォーカスを当てた考え方でしたが、相手にフォーカスを当てた考え方になります。ここからは、前半の自分に向けた考え方をできることが前提です。自分の感情を認識できなければ、相手の感情を認識することはできないからです。その上で、相手の感情を認識するために大事なことは、よく聞くということです。よく聞いて、相手の情報を得て、相手を知ることです。相手が話した内容を感情も取り入れながら要約するという「鏡映法」も有効です。 本書の中では、母親が赤ちゃんに反応するのと同じようにセラピストが患者の心的状態について理解した内容を患者に投げ返してやることを精神分析の世界では今日増加と呼ぶ。
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< 共感性 の伸ばし方>
・傾聴する( 相手の主張を全て聞き入れる )
・相手の立場になって考えてみる( そのような考え方もあるのかと考え方を受容する )


【ソーシャルスキル(Social Skill)人間関係をうまく処理する
高いソーシャルスキルを持つ人は、広いネットワーク力を元手に変化をリードできます。

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人間関係をうまく処理するためには、適切な場面で適切な感情をうまく出すことです。時と場合に合わせて、感情を最小限に抑えたり、逆に大げさに感情を表して訴えることができると、人間関係を円滑に営むことができます。また、ある感情を別の感情で代用するというような方法も有効です。しかし感情をコントロールできたとしても、自分の感情を犠牲にしないように注意が必要です。やはり自分の本心を相手に伝えられることが一番ストレスフリーな状態です。自分の感情を犠牲にしない程度の適度さを保てるように意識してコミュニケーションをしましょう。 本書の中では、多様な知性を伸ばす研究をしているプロジェクトスペクトラムの主催者ハッチとガードナーは対人能力の重要性を幼稚園児ロジャーの行動の中から、組織力・交渉力・連帯力・分析力だと述べている
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< ソーシャルスキル の伸ばし方>
・笑顔で挨拶する( 気持ちの良い会話をするためには、第一印象が大事 )
・相手の良いところに着目する( 面白いですね、私はこう思いますと考えを伝える )




■ IQとは?
IQとは「Intelligence Quotient」の略で、日本語にすると「知能指数」です。IQ=精神年齢÷生活年齢×100で算出できます。ここでいう精神年齢とは、心理学者のビネとシモンが作成した「ビネ=シモンテスト」という知能テストから判断出来るもの。結果は精神年齢で提示されます。 一般的には、IQの平均値は90から100ほど、基準値は100といわれています。110から130の人は優秀な傾向が見られ、130を超えると「非常に知能が高い人」と判断。いわゆる天才と呼ばれる人は、IQが130以上の場合が多いようです。
< IQの高い人に共通する10個の特徴
 1.極めて高い記憶力
 2.論理的で分かりやすい話術
 3.何にでも興味を持つ
 4.複数同時進行で処理できる
 5.短時間で本質が理解できる
 6.極めて高い集中力
 7.読書量が多い
 8.既成概念にとらわれない思考ができる
 9.自分の感情をコントロールできる
 10.自分に厳しくプライドが高い

EQが高い人の特徴
EQが高い人には、さまざまな好ましい特徴が見られます。一般的にEQが高い人は冷静で落ち着いており、素直に相手の話に耳を傾けます。また「思いやり」を発揮するため、周囲の人からは「良い人」という印象をもたれ、人間関係に波風が立つことは滅多にありません。
 1.柔軟性がある
 2.共感力がある
 3.傾聴力がある
 4.ストレス耐性がある
 5.素直
 6.粘り強い

■ まとめ
EQの根底にあるのは、自分の感情を知り、同じように相手の感情を知るということです。 自分の感情を認識し、コントロールできるようになった先には、相手の気持ちを思いやれる「共感」が必要になります。 ちなみに共感とは、相手と同じ気持ちになるということではありません。 相手はそういう気持ちなんだと理解するということです。 立場が違うので、同じ感情になることはあり得ません。 しかし、相手の立場だったらこう感じるだろうとか、こう考えるとか、相手の状況を認識する必要があります。 相手の過去の言動や、表情、今置かれている状況や取り巻く環境などを踏まえた上で、本当に相手の立場を理解することができれば、EQがより高いと言えることでしょう。
本書の目次


第1部 情動の脳
 第一章 情動とは何か
 第二章 情動のハイジャック

第2部 EQ―こころの知能指数
 第三章 秀才がつまずくとき
 第四章 汝自身を知れ
 第五章 激情の奴隷
 第六章 才能を生かすEQ
 第七章 共感のルーツ
 第八章 社会的知性  

第3部 EQ応用編
 第九章 結婚生活の愛憎
 第十章 職場のEQ
 第十一章 医療とこころ

第4部 EQは教育できる
 第十二章 家庭が教えるEQ
 第十三章 心的外傷の修復
 第十四章 気質は変えられる

第5部 情動の知性
 第十五章 情動教育のかたち

著者・出版

 ダニエル・ゴールマン(Daniel Goleman)


1946年、米国カリフォルニア州ストックトンで生まれた。当年72歳である。永年、EQ(Emotional Intelligence:こころの知能指数)を提唱してきた心理学者であり、ラトガーズ大学コンソーシアム・フォー・リサーチ・オン・エモーショナル・インテリジェンス・イン・オーガニゼーションズの共同会長を務める。
 ゴールマンは、アルフレッド・スローン財団の奨学金を得て、マサチューセッツ州の名門大学アマースト大学に進学した。同校は、同志社大学の創立者である新島襄が学んだ大学である。ゴールマンはそこで人類学を専攻し、1968年に優秀な成績(magna cum laude)で卒業した。その後、フォード財団の奨学金を得てハーバード大学の大学院に進学すると、心理学研究者として著名なデイビッド C. マクレランド教授のもとで臨床心理学を研究し、1974年にPh. D. を授与された。
 その間、ゴールマンはインドに滞在して、アジアの精神的修養である「瞑想」について研究した。Ph. D. 取得後もソーシャル・サイエンス・カウンシルのポスドク・プログラムでインドとスリランカに滞在して瞑想の研究を続けた。最初の著作となる、The Varieties of Meditative Experience, 1977.(republished in 1988 as “The Meditative Mind”)は、そのときの研究をもとに執筆したものであった。
 米国に帰国したゴールマンは、ハーバード大学の非常勤講師として教鞭を執る傍ら、マクレランドの推薦を得て、心理学の専門誌『Psychology Today(サイコロジー・トゥデイ)』誌のシニア・エディターを9年間務めた。その間の業績が認められたことでニューヨーク・タイムズからの誘いを受け、1984年より、同社科学部のジャーナリストとして行動心理学と脳神経科学に関する解説記事を担当した。1996年に退職するまでの12年間の記者生活の中で、ゴールマンは2度、ピューリッツァー賞の候補者となっている。
 ゴールマンはジャーナリストとして活躍しながら、1995年、Emotional Intelligence.(邦訳『EQ こころの知能指数』講談社、1996年)を上梓した。同書はその後、全世界で500万部、日本でも80万部の販売部数を記録する大ベストセラーとなった。

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