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ビジョナリーカンパニー(日経BP社)ジム・コリンズ

Book Summary
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レビュー

■ビジョナリーカンパニーとは?
ビジョナリーカンパニーとは、1994年に初版が出版されて以来、5年連続でベストセラーとなった、多くのビジネスパーソンのバイブルとなっている著書です。著者である、ジェームズ・C・コリンズ(ジム・コリンズ)はアメリカのビジネスコンサルタントでマッキンゼー・アンド・カンパニーなどでコンサルタントを経験しています。コリンズは「有名な企業がどのように成長し、世代交代を超えて繁栄し続けられるのはなぜか」そこに法則があるのではないかと18社を分析/比較しました。その中にはアメリカン・エキスプレスやソニー、ウォルト・ディズニーなど日本人の我々も馴染みのある企業が選ばれています。

ビジョナリーカンパニーの定義とは?
ビジョナリーカンパニーという言葉の意味についてですが、「ビジョナリー」には先見性や未来志向という意味があります。先見性や未来志向のある企業を選定し、その共通項を紹介しているのがビジョナリーカンパニーになります。
具体的には以下のように定義されています。
 ・業界で卓越した企業である
 ・見識ある経営者や企業幹部の間で広く尊敬されている
 ・わたしたちが暮らす社会に、消えることのない足跡を残している
 ・最高経営責任者(CEO)が世代交代している
 ・当初の主力商品(またはサービス)のライフ・サイクルを超えて繁栄している
 ・1950年以前に設立されている(設立後50年以上経過している)

ビジョナリーカンパニーが世界中で読まれる理由は?
ビジョナリーカンパニーが世界中の経営者や人事担当者に読まれる理由は主に2つで
情報の信頼性が高い点」と「経営の全体像が把握できる点」です。本の中では多くの統計やエビデンスが用いられ、実例で説明されているので読者の腑に落ちます。また、ビジョナリーカンパニーシリーズでは企業の繁栄から衰退までが体系的にまとめられており、経営の全体像が把握できます。本書では、ビジョナリーカンパニーの定義を満たす18社を選び出し「永続する会社を創るためには」というテーマでまとめられています。結論として、永続の源泉は「基本理念」にあると説いています。 ビジョナリーカンパニーでは、基本理念は組織にとって不変の主義であって、会社の根本的な存在理由であるとしています。重要なのは理念をどこまで貫き通しているかで、それは中身より大切であると説明しています。

本書のPoint
■十二の崩れた神話
①素晴らしい会社を始めるには、素晴らしいアイデアが必要である
素晴らしいアイデアをもって会社を始めるのは悪いアイデアかもしれない。ビジョナリーカンパニーには具体的なアイデアは全く持たずに設立されたものもあり、スタートで完全につまずいていたケースが圧倒的に多かった。ウサギと亀の寓話のように、ビジョナリーカンパニーはスタートで遅れをとるが長距離レースに勝つことが多い。

②ビジョンを持った偉大なカリスマ的指導者が必要である
ビジョナリーカンパニーにとってビジョンをもった偉大なカリスマ的指導者は全く必要ない。カリスマ的指導者はかえって会社の長期的な成長にマイナスになることもある。ビジョナリーカンパニーのCEOには偉大な指導者になることよりも、長く続く組織を作り出すことに力を注いだ人も多い。「時を告げるのではなく、時計を作ろうとするのである」。

③成功している企業は利益追求を最大の目的としている
ビジネススクールの教えに反して「株主の富を最大限に高めること」「利益を最大限に増やすこと」はビジョナリーカンパニーにとって原動力でも、最大の目標でもない。

④共通した「正しい」基本理念がある
ビジョナリーカンパニーであるために、基本的価値観に正解といえるものはないが、「洗練されたもの」「人道的なもの」であることが多い。決定的な点は、理念を如何に深く信じているか、そして会社の一挙一動に以下に一貫して理念が実践され、息づき、表れているかだ。「何を価値観とすべきか」という問いではなく、「実際に何よりも大切にしているものは何なのか」という問いを立てる。

⑤変わり続けることが重要である
ビジョナリーカンパニーは基本理念を信仰に近いほど情熱を持って維持しており、基本的理念は変更は稀である。大切な基本理念を曲げることなく、変化し、適応できる。

⑥優良企業は、危険は冒さない
ビジョナリーカンパニーは外部から見れば、型苦しく、保守的だと思えるかもしれないが、社運をかけた大胆な目標に挑むことをおそれない。ビジョナリーカンパニーは胸躍るような大冒険だからこそ、ひきつけられ、やる気になり、前進する。

⑦誰にとっても素晴らしい職場である
ビジョナリーカンパニーは、基本理念と高い要求にピッタリと合うものだけ、素晴らしい職場である。厳しい基準に合わせようとしなかったり、合わせられないものは居場所はどこにもない。

⑧大きく成功している企業は、綿密で複雑な戦略を立て、最善の動きをとる
ビジョナリーカンパニーの最善の動きは、実験、試行錯誤、臨機応変である。その結果、良い戦略が偶然に生まれたにすぎない。つまり「大量のものを試し、うまくいったものを残す」わけである。

⑨変化を促すには、社外からCEOを迎えるべきだ
ビジョナリーカンパニーの1700年の事例の中で社外からCEOを向かい入れたのは、わずか4社のみで社内の1/6に過ぎなかった。根本的な変化と斬新なアイデアが社内から生まれないという一般常識は間違っている。

⑩成功している企業は、競争に勝つことを第一に考えている
ビジョナリーカンパニーは他社と比較しない。自らに打ち勝つことだけを考える。「明日にはどうすれば、今日よりうまくやれるか」ただそれだけなのである。目の前の目標を達成してお、それに満足せず、常に今日の自分を超えるためにはと考え続ける。

⑪2つの相反することは、同時に獲得することはできない
ビジョナリーカンパニーはOR抑圧で自分の首をしみることはしない。AとBのどちらかしか手に入らないと考えるのは理性的な考え方をせず、ANDの可能性を追及する。AもBも達成することを諦めずに追求する。

⑫経営者が先見の明があり、先見的な発言をしている
ビジョナリーカンパニーの経営者の発現は先見性を感じるものが多いが、流行に言葉を使ったからではない。基本理念を生かすために、何千もの手段の試しながら未来を描くのである。ビジョンや価値観はそれを言語化したものであるが、あくまで基本理念を生かすための手段であることが重要である。
■調査プロセス

1.どの会社を調査すべきか?
これまで調査されたことがない中で、調査対象とするビジョナリーカンパニーをどこにするか考える。こういう状況でリストを作るときは、個人の偏向を最小限にするために、さまざまな規模、業種、種類、地域の有力企業のCEOにアンケート調査を実施した。CEOは会社を築き、経営という実践のばでの課題と現実と向き合っている。その厳しい視点の意見なので信頼性は限りなく高い。

2.比較対象をどうするか?
共通の特徴だけを分析することは重大な欠陥がある。共通の特徴だけを見ていくと机を持っている、会計システムがある、自社ビルをもっているのような求めている結論とはほど遠いものになってしまう。共通点ではなく、比較対象を設定して「違う点」「際立っている点」は比較対象と比べとどこにあるのかを明確にすることが重要である。
それが故に比較対象は重要なのだ。そのため比較対象を選定するときも設立時期、商品や市場など特定の指標に基づいて選定している。

3.歴史と発展の軌跡は調べるべきか?
今回結論をだすにあたり、現在、企業が持っている特性ではなく、持続可能な成長企業であり続けるための比較対象企業との違いを明確にすることにある。だからこそ歴史を調査する意味がある。
<歴史を調査する3つの理由>
 ・創業時から成長期をへて現在に至るまでのプロセスの中にある違いにも目を向けたかった
 ・社会進化論の観点にたち、企業は過去の出来事の蓄積により今があると考えたから
 ・歴史を調べた方が、比較対象分析の説得力が遥かに増すから

4.努力の成果データを収集して分析して、本質的な違いをあぶりだす

5.実地試験と現実世界への適用をする
“ビジョナリーカンパニー”と呼ぶにふさわしい会社
選ばれたのは、次の18社です。
 3M
 アメリカンエキスプレス
 ボーイング
 シティ
 コープ
 フォード
 GE
 ヒューレッドパッカード
 IBM
 ジョンソン・エンド・ジョンソン
 マリオット
 メルク
 motorola
 Nordstrom
 P&G
 フィリップモリス
 ソニー
 ウォルマート
 ウォールト・ディズニー

その上で、これらのビジョナリーカンパニーの優れた本質を理解するために、競合にあたる会社で優秀ではあるがビジョナリーカンパニーの水準には及ばなかった企業と比較をします。
本書の目次

 第1章 
  最高のなかの最高
  十二の崩れた神話
  調査プロジェクト
  データはあくまでデータ

 第2章 
  時を告げるのではなく、時計をつくる
  「すばらしいアイデア」の神話
  「すばらしいアイデア」を待つのは、悪いアイデアかもしれない
  企業そのものが究極の作品である
  偉大なカリスマ的指導者の神話
  建築家のような方法 - 時計をつくる
  CEO、経営幹部、起業家へのメッセージ
 挿話 「ORの抑圧」をはねのけ、「ANDの才能」を活かす

 第3章 
  利益を超えて
  現実的な理想主義 - 「ORの抑圧」からの解放
  基本理念 - 利益の神話を吹き飛ばす
  「正しい」理念はあるのか
  CEO、経営幹部、起業家への指針

 第4章
  基本理念を維持し、進歩を促す
  進歩への意欲
  基本理念を維持し、進歩を促す
  CEO、経営幹部、起業家のためのキー・コンセプト

 第5章 
  社運を賭けた大胆な目標
  BHAGl - 進歩を促す強力な仕組み
  重要なのは指導者ではなく、目標 - 時を告げるのではなく、時計をつくる
  CEO、経営幹部、起業家への指針

 第6章 
  カルトのような文化
  「病原菌か何かのように追い払われる」
  IBMが偉大な企業になった過程
  ウォルト・ディズニーの魔法
  プロクター&ギャンブル - 本社に浸りきる
  CEO、経営幹部、起業家へのメッセージ
  イデオロギーの管理と業務上の自主性

 第7章 
  大量のものを試して、うまくいったものを残す
  進化する種としての企業
  3M - ミネソタの突然変異製造機がいかにしてノートンをつきはなしたか
  3Mでの「枝分かれと剪定」
  CEO、経営幹部、起業家にとっての教訓
  「機軸から離れない」ではなく、「基本理念から離れない」 

 第8章 
  生え抜きの経営陣
  社内の人材を登用し、基本理念を維持する
  CEO、経営幹部、起業家へのメッセージ

 第9章 
  決して満足しない
  現状を不十分と感じるようにする仕組み
  将来のために投資する - そして短期的にも、好業績をあげる
  マリオット対ハワード・ジョンソン - アメリカの偉大なチェーンの没落
  CEO、経営幹部、起業家へのメッセージ
  黒帯の寓話

 第10章 
  はじまりの終わり
  一貫性の力 - フォード、メルク、ヒューレット・パッカード
  CEO、経営幹部、起業家のための一貫性の教訓
  これは終わりではない

著者・出版

ジム・コリンズ

1958年生まれの、アメリカのビジネスコンサルタントです。作家、講師としても活躍しています。 企業が長期間存続する要因を分析した著作、「ビジョナリー・カンパニー」で一躍有名になりました。「マネジメント」で有名なドラッカーの教え子であり、後継者とも言われる世界的経営学者です。

スタンフォード大学で数理科学の学士号を取得後、同大学で経営学修士号を取得。マッキンゼー・アンド・カンパニー社、ヒューレット・パッカード社などの有名企業で活躍しました。 企業勤めを離れた後は、アスリートの妻をサポートします。スポンサー交渉を含めたスポーツマネジメントの仕事をしていました。妻がアスリートを引退した後、スタンフォード大学経営大学院教授として採用されます。 1995年に故郷のコロラド州ボルダ―に経営研究所を設立し、企業や非営利団体の幹部らに研究と教育を指導しています。

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