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ビジネスロードテスト(英治出版)ジョンWムリンズ

Book Summary
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レビュー

『ビジネスロードテスト』は、7つの重要な領域によって、新規事業の機会を窺っている人たちを助けるものだ。これらの領域が焦点を当てているのは、「市場」と「業界」という、基本的には、あなた自身が将来、提供する可能性のある商品やサービスの「買い手」と「売り手」である。また、これらの領域は「マクロ」と「ミクロ」の両面からも、新規事業の機会を検討する。マクロの視点からは人口統計、競争のダイナミックス、新規加入の容易さなどの要因を含む購買決定を駆り立てるより大きな力を評価し、ミクロの視点からは、個々人の購買決定要因を見るのである。

ビジネスロードテスト-7ドメインズ


ーー新規事業は、たいてい失敗する ーー
新規事業には、不確定要素がつきものだ。 だからこそ、時間をかけてビジネスプランをまとめる前に、 それらを取り除かなくてはならない。 しかし、驚くことに多くの起業家が見落としてしまう。 賢明な起業家は、新しいビジネスチャンスについて「ロードテスト」を行う。
新車を購入する時に、試乗をするようなものだ。 本書では、実在する起業家のアドバイスから、ロードテストのためのツールを紹介する。

ーー LBS人気教授によるフレームワーク ーー
著者のジョン・W・ムリンズは、欧州のMBAの名門ロンドン・ビジネス・スクール(LBS)で教鞭を振るう、アントレプレナーシップの人気教授でプロフェッサー・オブ・ザ・イヤーにも輝いている。 彼自身アパレル大手のGAPの創業に携わるなど、3度の起業経験を持つ。

ーー ビジネスチャンスの本質を理解し、失敗を未然に防ぐ ーー
新規事業の大半は失敗に終わっている。それは多くの統計が物語っている。 本書で提唱する「7つの成功条件」は、ビジネスチャンスに潜む不確定要素を取り除き、ビジネスプランを立てる前に失敗を防ぐ、事業創造における重要なポイントを網羅的に考えさせるツールである。

本書のPoint
■7Domains
7Domainsとは、新規事業の7つの成功条件モデルを構成する要素です。ビジネスロードテストでは、その中でも次の2つだけは欠いてはならないとしています。
1.魅力的なターゲットセグメント
6.CSFに対する経営陣の実行力

1.魅力的なターゲットセグメント
・自社の提供する商品やサービスは、顧客のどの悩みを解決するのか? 代価を支払ってまで購入したい強いインセンティブを与えているか?
・悩みを抱えている顧客は、厳密に言えば誰で、どこに住んでいて、どのような仕事についているのか?これらを示すような最新情報をつかんでいるのか?
・ 提供する商品やサービスは、他社が提供しないどのようなメリットをもたらすのか?
・顧客は、計画中の商品やサービスを買うか? その証拠は何か?
・ターゲット市場は、今後成長しそうか? その証拠は何か?
・関連した商品やサービスを提供することでメリットを得られるセグメントが他にあるか? 存在するのであれば、どのようなセグメントか?
・別のセグメントに移行する際に、どのようにして「成功の仕組み」も移行するか?

2.市場の魅力
・まず自社は、どんなビジネスを望んでいるのか?巨大な規模に成長できそうな事業か?それとも、ニッチ市場にサービスを提供する小規模なライフスタイル事業か?
・ 狙っている市場はどれくらいの規模か?規模の測定に何種類の方法を使ったのか?
・過去1年、3年、5年、10年の間に、どれほどの速さで成長しそうか?
・市場に影響を与える経済、人口動態、社会文化、技術、規制、自然の動向を特定できるか?これらの動向は事業にとって望ましいものか?事業にどのような 影響を与えるのか?

3.業界の魅力
・どの業界で戦おうとしているのか?慎重に定義する。
・業界に参入するのは簡単か?それとも難しいか?
・業界へのサプライヤーは、取引条件を決定するだけの交渉力をもっているか?
・ 買い手は取引条件を決定するだけの交渉力をもっているか?
・代替製品が市場を奪ってしまう可能性は高いか?それとも低いか?
・競合他社との敵対関係は厳しいか?それとも緩やかか?

4.持続可能な競争優位性
・他社が真似できないような財産権の要素(特許、企業秘密など)があるのか?
・他社が真似できないような優れた組織プロセス、能力、資源を開発・採用しているか?
・ ビジネスモデルに採算性があるのか?
(以下7つの質問を参照)
① 必要な資本投資や利益率に見合うだけ売上があるか?
②顧客の獲得・維持にどれほどの費用が必要なのか?
③ 顧客を惹きつけるには。どれほどの時間が必要なのか?
④ 貢献利益は、固定費をすぐにカバーできるほど十分なのか?
⑤ 運手資本に必要な現金や期間は、どれほどなのか?
⑥ 顧客は、どれほど早く代金を支払うのか?
⑦仕入れ代金や賃金の支払いを、どれほど引き延ばせるのか?

5.使命・野心・リスク許容度
・起業家としての使命は何か?
・起業家としての夢に対して、どれほどの野心を持っているのか?
・どのようなリスクを負いたいか?あるいは、負いたくないか?
(以下6つの質問参照)
①給与の保証や、今の仕事で得ているものを失ってもいいのか?それはどのくらいの期間か?
②自分の事業に対する支配権を失ってもいいのか?
③自分の資金を失ってもいいのか?いくらまでならいいのか?
④自分の家、家族や愛する人との時間を失ってもいいのか?
⑤愛する人は、負おうとするリスクを受け入れてくれるか?

6.主要成功要因(CSF)に対する経営陣の実行力
・自社の業界にとってのCSFを挙げる。CSFを正確に特定していることを示すために、どのような証拠を提示できるか?
・自社のチームが、これらのCSFのそれぞれを実行できることを、過去の行動で証明できるか?
あるいは、CSFのうち、自社ののチームでは十分に実現できないような要因はどれか?
・チームを増強しなくてはならないような要因はどれか?

7.バリューチェーン上での人的ネットワーク
・経営者や経営チームには、バリューチェーンの上流に当たる企業と関係があるか?
・ 経営者や経営チームには、バリューチェーンの下流に当たる企業と関係があるか?
・ 経営者や経営チームには、バリューチェーンの横方向にあたる企業と関係があるか?
■5つの落とし穴
7つの成功条件モデル(7Domains)は網羅的にかつ俯瞰的に事業を見ることができるものです。しかし事業を推進する起業家も、投資家も、いつしか視野が狭まることがあります。どこかのタイミングで落とし穴がないかを確認することも必要になります。

1.巨大市場という罠
大きな市場、またはこれから大きくなろうとしている市場は、他社もその市場を狙っているということです。この製品やサービスを、ターゲットセグメントの顧客に、本当のメリットを提供していなければ事業は立ちゆきません

2.優れた新製品という罠
テクノロジーが優れているだけでは事業としてうまくは行きません。いくら優れていても今までより優れたソリューションを顧客に与えられるとは限らないし、なにより採算性がなければ続けることはできません。テクノロジーの本質は、テクノロジーを使って顧客のニーズを満たすことです。

3.持続できないビジネスモデルという罠
2ともリンクする部分もありますが、顧客に対するメリットに魅力があっても、採算性がとれなければどうにもなりません。テクノロジーの場合は、将来に価格が低下することもあり得ますが、常に将来的なキャッシュがどう生まれるかを試算しておくことが大事です。

4.便乗という罠
大きな市場には続々と新規参入者が入り込んできます。持続可能な優位性がなければすぐに取って代わられます。もし、参入障壁が低く先行者利益を維持できなければ事業を始めないことも選択肢です。無駄なことをするよりも別のプランに心血を注いだほうがよい、ということです。

5.自信過剰という罠
起業家のなかには、すでに成功を収めたシリアルアントプレナーや事業会社で成功してきた人たちもいます。これまでの実績があることは、起業における重要なファクターになり得ますが、新たな市場と業界は過去の成功とは全く違う世界です。起業家チームも投資家も、七つの成功条件に対する注意を怠ってはならない
■7Domains事例

1.魅力的なターゲットセグメント
ピータードラッカーは「企業が作るすべての製品はお客様のためにある」と言っている。顧客がいなければビジネスなどありえない、必要なのは顧客の要望や需要を満たすことだ。ビジネスの成功とは顧客に製品やサービスを提供し、ニーズを満たし、悩みを解決することだ。
事例として、NTTドコモが紹介されている。NTTドコモの「iモード」サービスは、ダイヤルアップの通信費用に辟易し、安価なインターネットアクセスを求めていた顧客心理を利用して成功した。


2.市場の魅力
ウィリアムシェークスピアは「人の行いには潮というものがある。流れに乗ればうまくいく、その好機を捉えなければならない」と言っている。起業家として成功を収めることは難しいが、流れにのれば成功確率は向上するということだ。
 事例としてヒーローホンダの人口増によりバイク需要の拡大を捉えて拡大した事例とホールフーズのオーガニック食材需要を捉えた事例が紹介されている。一方、シンキング・マシンズのスーパーコンピューターの市場を特定せずにプロダクトアウトでの考え方の失敗事例が紹介されていた。
 

3.業界の魅力
ウォーレンバフェットは「頭がきれる経営者が、採算の取れないビジネスに取り組んでも、結果は変えられない」と言っている。5F分析にあるように、新規参入、代替品、買い手、売り手、競合でその業界が儲けやすいか見極めることが大切である。
製薬会社の事例では、年代で業界の儲けやすさが変わるといっている。儲けやすい業界かの見極めが重要である。


4.持続可能な競争優位性
ジムコリンズは「最高のものが先行者を打ち負かす」と言っている。他社にまねできない要素(特許、企業秘密など)をもっているかが重要である。


5.使命・野心・リスク許容度
エドモンド・ロスタンは「夢のない人生などあるだろうか?」と言っている。 起業家としての使命感 と夢に対しての野心が必要である。

6.主要成功要因(CSF)に対する経営陣の実行力
ウィリアム・ワーズワースは「わが信頼は人民とわが目でみた彼らの特にあった」といっている。業界特有のCSFとこれらを実行できる人材が必要である。

7.バリューチェーン上での人的ネットワーク
ビジネスの知恵の中で「あなたが何を知っているのかでなく、あなたが誰を知っているか大切である」と言っている。バリューチェーンの上流、下流、横方向に関係をもっていることが重要である。
本書の目次

第1章 ビジネスチャンスを見極める
第2章 魚は食いつくか
第3章 市場の評価
第4章 業界の評価
第5章 競争優位の維持
第6章 起業家としての夢の実現
第7章 CSFに対する実行力
第8章 バリューチェーンとの関係
第9章 7つの成功条件モデルの活用
第10章 ビジネスプランをまとめる前に
ロードテストに役立つツール

著者・出版

ジョン・W・ムリンズ

秦 孝昭 (翻訳), 出口 彰浩 (翻訳), 兎耳山 晋 (翻訳)

欧州MBAの名門、ロンドン・ビジネス・スクール(LBS)教授。スタンフォード大学ビジネススクールでMBAを、ミネソタ大学でマーケティングの博士号(PhD)を取得。アントレプレナーシップの人気教授で、プロフェッサー・オブ・ザ・イヤーにも輝いている。アパレル大手のGAPの創業に携わるなど、3度の起業経験を持ち、20年にわたる経営者としての経験をもとに教育や執筆を行う。また、タイム・ワーナー、イーストマン・コダック、ロシュ・ダイアグノスティックス、ノバルティスなど、イノベーションを生み出す企業の経営陣を対象に研修・コンサルティングを実施している

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