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採用基準(ダイヤモンド社)伊賀泰代

Book Summary
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レビュー

世界を代表するコンサルティング会社のマッキンゼー・アンド・カンパニーの日本支社で採用マネージャーを勤められた伊賀泰代さんが、マッキンゼーではどのような基準で採用をしているかということが書いてあります。

マッキンゼーと言えば、日本にコンサルタントという言葉を広めた人物である世界を代表する経営コンサルタントの大前研一さん、女性経済評論家でありベストセラー作家の勝間和代さん、モバゲーで有名なDeNAの取締役の南場智子さんなど錚々たる有名人を輩出している企業です。もちろん、人気の就職先候補として名が上がるようになったマッキンゼーではあるけれども、その採用基準としてのいくつかの項目については、マッキンゼーと就職希望者の間に認識に大きな乖離があというのです。

就職希望者の認識によれば「地頭が良く」「分析力があり」「優等生であり」「優秀な日本人」であるらしい、しかしこれは誤解です。ちろん「地頭」や「分析力」が致命的に悪い人は採用に至らないかもしれないが、しかしそれは必須の要件では無いのです。

マッキンゼーのようなコンサルティング企業の仕事を大別するならば、「課題の相談を受ける」「課題の解決方法を見つける」「課題を解決する」。ここで地頭、分析能力が役に立つのは、「課題の解決方法を見つける」主に時だけだろう。地頭が良くても相談相手としての適格性に欠けるような人を、我々は求めていない。なんでもそつなくこなす「優等生」であるということも、我々にとっての重要な採用基準では無く、 マッキンゼーで評価されるのは「スパイク型人材」と呼ばれる人たちだ。彼らは、ある一点に置いて卓越した能力を持っているような人材である。多少全体的な能力のバランスが悪くても、現場における難局を解決できるのは彼らのようなスパイク型の人材だと、我々は考えている。

もしマッキンゼーの採用基準をまとめるとしたら、以下の3点になります。
・リーダーシップがあること
・地頭がいいこと
・英語ができること


その中でも最も重視されるのがリーダーシップであると本書できは書かれており、現代社会に求められるリーダシップとはどういうものが纏められています。

本書のPoint
リーダーシップとは?
理解すべきなのは、問題を解決するために必要なものは「問題解決スキル」というよりはむしろ、「リーダーシップ」であるということだ。 そしてリーダーシップに求められるのは、和を尊ぶ人ではなく成果を出してくれる人だ。

例えばあなたが乗っている船が難破し、用意されたいくつかの救命ボートに乗り込むような状況を想像してほしい。それぞれの船には既に一人の漕ぎ手が乗船している。これがリーダーだ。我々はこの時、漕ぎ手の人格を判断して乗り込むボートを決めるだろう。あなたはそこで、「楽しい時間を提供してくれる」ような漕ぎ手や「人の和を重んじる漕ぎ手」を選ぶだろうか。選ばないだろう。選ぶのは、「少しでも高い確率でこの危機的状況を抜け出せそう」な漕ぎ手であるはずだ。リーダーに必要な本質的な能力は「成果を達成する」という力である。
リーダーがなすべき4つのタスク
1. 目標を掲げる
リーダーに必要な能力として成果達成力があるということは既に述べたが、成果の達成のためには、当然、成果目標がなければならない。まずリーダーはこの目標を掲げる必要がある。そしてそれは、メンバーが共有可能でメンバーを鼓舞するものでなければならない。
目標には魅力が無ければならない。「とにかく売り上げを上げる」という終わりの無い目標では、社員の士気は上がらないだろう。しかし「この技術で世の中を変える」「この業界のトップ3になる」などの明確かつリターンの大きい目標であれば、社員のモチベーションも上がる。

2. 自ら先頭を走る
問題は常に最初に起こる。故に先頭に立つということは、様々な点において不利である。しかしそれでも最初の一人になり、先頭に立つことを厭わない姿勢がリーダーには求められる。先頭を走ることは負担が大きい。マラソンならば先頭走者は風を受ける盾となるため物理的に不利になるし、プレゼンの一番目であれば機器の不備が起こり得るなどの点で二番目以降の話者よりも不利になる。そんなポジションを進んで引き受けるリーダがいれば、メンバーは安心してその後を走ることができる。

3. 自ら決定する
リーダーとは、たとえ十分な情報が揃っていなくても検討が足りていなくても、決めるべき時に決めることができる人である。当然、情報が完全に揃っていない段階で決断をすることはリスクを伴う。しかし、未来のことに関して十分な情報が揃うことなどあり得ない。さらに言えば、仮に十分な情報が揃っているならリーダー出なくても決断はできる。リーダーの役割は、「情報も時間も不十分な中で決断をすること」である。

4. 言葉で伝える
リーダーは、言葉の持つ重要な力を行使し、言葉によって人を動かす力を持たなければならない。説明責任を果たすこと、異なる価値観を持つメンバーをまとめること、など言葉でできることはとても多い。時としてチームは、時間、金銭、モチベーションのどれもが尽きかけているような状況に陥る。このような状況を覆すことができるのもまた、リーダーの言葉だ。物資が無い状況で使えるコストのかからない武器、それが言葉だ。

バリューを出すとは?
マッキンゼーのコンサルタントは、常に「バリューを出す」をいう言葉を用いる。これは、「何らかの成果(付加価値)を生み出す」という言葉だ。会議で有益な発言をすればバリューを出したことになるし、画期的な洞察を行うことができればそれもまたバリューを出したことなる。 マッキンゼーでは最も恥ずべきこととして、「バリュー0」ということがある。会議で発言をしなかった者、二時間資料を読んで◯◯についてよく分かった程度の成果しか得られなかった者、これらは全てバリュー0に該当する。

また、マッキンゼー的な概念でもう一つよく使われるのが、「ポジションをとる」ということだ。これは、「あなたの意見は何か」「あなたならばどう決断するのか」という意味の言葉だ。マッキンゼーでは、常に全ての社員が自分の立ち位置をはっきりさせ、自分の意見を述べることが求められる。
本書の目次

第1章 誤解される採用基準
人気の高まりと誤解の拡大
誤解その1:ケース面接に関する誤解
誤解その2:“地頭信仰”が招く誤解
誤解その3:分析が得意な人を求めているという誤解
誤解その4:優等生を求めているという誤解
誤解その5:優秀な日本人を求めているという誤解

Column 東京大学における法学部と経済学部の学生の格差


第2章 採用したいのは将来のリーダー
問題解決に不可欠なリーダーシップ
リーダーシップは全員に必要
将来のリーダーを採用するという戦略
スクリーニング基準と採用基準の違い

Column 保守的な大企業で劣化する人


第3章 さまざまな概念と混同されるリーダーシップ
成果主義とリーダーシップ
成果より和を尊ぶ組織
救命ボートの漕ぎ手を選ぶ
役職(ポジション)とリーダーシップ
マネジャー(管理職)、コーディネーター(調整役)
雑用係、世話係
命令する人、指示する人

Column 能力の高い人より、これから伸びる人


第4章 リーダーがなすべき4つのタスク
その1:目標を掲げる
その2:先頭を走る
その3:決める
その4:伝える

Column マッキンゼー入社を目標にする困った人たち


第5章 マッキンゼー流リーダーシップの学び方
カルチャーショックから学ぶ基本思想
基本動作1:バリューを出す
基本動作2:ポジションをとる
基本動作3:自分の仕事のリーダーは自分
基本動作4:ホワイトボードの前に立つ
できるようになる前にやる
自分のリーダーシップ・スタイルを見つける

Column ホワイトカラー職種も海外流出?


第6章 リーダー不足に関する認識不足
組織的・制度的な育成システムが必要
絶望的な「グローバル人材」という言葉
「優秀な人」の定義の違い
カリスマリーダーではなく、リーダーシップ・キャパシティ
非常時の混乱、財政難の根因となるリーダー不足

Column 不幸な海外MBAへの企業派遣制度


第7章 すべての人に求められるリーダーシップ
あらゆる場面で求められるリーダーシップ
上司の判断を仰がない若手コンサルタント
リーダーシップは学べるスキル
分散型意思決定システムからの要請

Column リーダー養成に最適なNPO


終章 リーダーシップで人生のコントロールを握る
問題が解決できる
成長が実感できる
自分の世界観が実現できる
世界が広がる
変わっていくキャリア意識
価値観転換機関としてのマッキンゼー
広がる世界で人生のコントロールを握る  

著者・出版

伊賀 泰代(いが やすよ)

1963年4月6日生まれ、兵庫県姫路市出身。
一橋大学法学部卒業後、日興證券引受本部(当時)にて法人の資金調達業務に携わる。
その後、University of California at Berkeley, Haas School of Business にてMBA取得。
1993年より McKinsey and Company, Japan にて、コンサルタント、人材育成マネージャー、採用マネージャーを歴任。2010年末に退職するまでの17年間中、12年間を新人コンサルタントの採用と育成に携わる。2011年より組織・人事コンサルタントとして、組織変革、リーダーシップ教育、人材育成などに関するコンサルティングに従事。

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