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心。(サンマーク出版)稲盛和夫

Book Summary
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レビュー

人生という道のりは誰にとっても波瀾(はらん)万丈のドラマであり、嬉しいこともあれば悲しいこともある。実はそうした出来事はすべて自分自身の心が引き寄せ、つくり出したものです。だから人生は、目の前の出来事にどのような心持ちで対応するかによって大きく変わっていくし、愚痴をこぼしたり不平不満をもらしたりすれば、それらはめぐりめぐって自分に戻ってきて、さらに悪い境遇を呼び起こしてしまうのです。

稲森さんが本書で伝えたいこと、それは「心がすべてを決めている」自分の人生で起こってくるあらゆる出来事は、自らの心が引き寄せたものです。人生とは心がつむぎ出すものであり、目の前に起こってくるあらゆる出来事はすべて、自らの心が呼び寄せたものであると稲森さんは言っています。 そして心のあり方として「利他」の心こそが幸せへの道しるべになるということです。

そうであればこそ、目の前に起こってきた現実について、いかなる思いを抱き、いかなる心で対処するかによって、人生は大きく変わります。目の前に現れた状況が、いかに過酷なものであってもそれに対して恨んだり卑屈になったりせず、常に前向きに対処していくことこそが素晴らしい人生を生きる秘訣です。だからこそ「良い時も悪い時も感謝の思いで受け止める」ことが大切なのです。どんな時であっても「常に」謙虚な気持ちで自らの行いを律するとともに、感謝の念を忘れないようにすることが重要です。

本書のPoint
「第1章 人生の礎を築く。」
大切なポイントは次のことです。どんなときでも「感謝の心」をもつこと。どんな苦難に見舞われようと、自らの運命、境遇を素直に受け止め、耐え忍びながらも明るく懸命に努力を重ねる。そういう人の人生は大きく拓けていきます。そこで大切なのが、どんなときでも「感謝の心」をもつことです。悪いことがあっても感謝するのはむずかしいことです。災難、苦難、不幸といった状況に直面しているときこそ、実は感謝する「絶好の機会」なのです。なぜなら、そうした過酷な環境や厳しい出来事が私たちの心を鍛え、魂を磨いてくれるからです。嘆いたり恨んだり愚痴をこぼしたりせず、それに対して「ありがとう」という。「ありがとう」という言葉は、「あるのが難しい」、すなわちありえないことが起こっているという意味で、私たちが生きて経験することは、実はすべてが「あるのが難しい」ことの連続なのです。実にシンプルな人生の秘訣ですが、こういう生き方を貫ける人は少ないのです。
「第2章 善なる動機をもつ。」
第2章で大切なポイントは「利他の心をもつこと」「利他」という言葉の意味は「他を利する」。すなわち「自分のため」は後まわしにして「他人のため」を優先する。自分ができるかぎりのやさしい行為をすることです。利他の心をもち、よい行いをすることは運命を好転させることにつながります。因果の法則という言葉があります。因果の法則とは、原因が結果をもたらすことです。因果の法則によって利他の思いから行動すれば、よいことが自らのもとに返ってくるのです。稲森さんはご自身の経験から、ビジネスにおいても、人生のすべての事に関しても、「相手が得をするように」という思いを基準に判断したことは、すべて成功してきたと明言しています。相手の利益を優先して考えるのはよいことですが、相手がよくない考えをもっている場合もあるでしょう。稲森さんは、それは自らの心が引き寄せていると言っています。
心が引き寄せないものはやってこないという法則はこのような場合も同じで、他人を欺(あざむ)いたりだましたりするような人が近づいてくるとしたら、自分の中に同様の心があるからだということです。十分に魂が磨かれ、清らかで美しい心で生きているならば、まわりにいる人の心も同様に美しくなっていくのです。
第3章 強き心で成し遂げる。」
第3章で大切なポイントは「できる」と思うことです。物事を成就させる人とそうでない人の違いは、「乗り越えられる」と自分に言い聞かせて、一歩を踏み出せるかどうか。「できる」と強く思って明るい未来がかならず訪れると信じる。困難という壁にぶち当たろうと、めげず、あきらめず、立ち向かっていく。そのような強い心をもって歩みを進めるとき、成功へのいとぐちがいくつも見つかり、はるかかなたに小さく見えていた成功はいつのまにか手の届くところに近づいているのです。心に描いた”思い”を現実のものにするには、「こうなったらいいな」と漠然と思うだけでは不十分です。「かならずこうありたい」と、心の奥底から強く思い、揺るぎない意志をもって思いつづける。そうでなければ、とても実現することはできません。いま私たちは、この思いの大切さをどこかに置き忘れてきてしまったのではないかと稲森さんは語っています。
頭で”考える”ことばかりが重視され、それらを生み出す根っこである”心”と、それがもたらす”思い”が軽視されてしまっているように思えるそうです。高い目標を掲げ、そこに到達したいと願うなら、何としてでも実現するという強烈な思いを抱くこと。思いには物事を成就させるすばらしい力があることを知ることが大切です。
「第4章 正しきを貫く。」
第4章で大切なポイントは人間として何が正しいかを考えることです。稲森さんが京セラを立ち上げて、経営判断の基準として据(す)えたのが「人間として何が正しいか」ということでした。人間としての正しさとは、「正直であれ」「人をだますな」「思いやりを大切に」といった、道徳あるいは倫理のことです。判断基準の根幹を人間の心に置いておくならば、少なくとも間違った方向へ導くことはないだろうという確信が稲森さんにはありました。

正しいことを貫こうとするとき、「それはいいことだ」と後押ししてくれる人よりも、「何を正義ぶって」と誹謗中傷したり、足を引っ張ったりする人のほうがはるかに多いものです。正しいことを正しいままに貫くには覚悟が必要です。むしろ正しい生き方をしているからこそ、困難に出合うのです。困難は天が与えてくれた試練であり、心をさらに磨くためのチャンスといえます。それによって私たちの魂はますます清められ、人生はますます豊かなものになっていくのです。

「第5章 美しき心根を育てる。」
第5章で大切なポイントは「どんな”心根”をもつか」です。稲森さんが経営の現場で働いていたとき、次のリーダーとしてふさわしいかどうか判断する基準としたのは、どんな”心根”をもっているかということでした。頭脳明晰な人物でもなければ、知識が豊富な秀才でもない。すばらしい人間性を備えていると判断した人でした。組織はリーダーの「器」以上のものにはならないと稲森さんは言っています。なぜなら、その生き方、考え方、また心に抱いている思いがそのまま、組織や集団のあり方を決めていくからです。したがって、リーダーにもっとも大切な資質は何かと問われれば、それは”心”であると稲森さんは答えるそうです。”心”は人格、人間性といいかえることもできます。多弁な才覚や鋭敏な機知よりも、まるで岩のようにどっしりとして揺るがない、重厚な人格のほうを尊重する。そうした重厚さこそが、リーダーにもっとも必要な資質だと稲森さんは考えています。

どんな立派なことをいっても、それを説く人間が立派でなければ、その内容は聞く人の心には入っていきません。何をいうかよりも、だれがいうかのほうが大切で、立派だと思われていない者が立派なことを説いたところでまったく説得力がないのです。
本書の目次

第1章 人生の礎を築く。
第2章 善なる動機をもつ。
第3章 強き心で成し遂げる。
第4章 正しきを貫く。
第5章 美しき心根を育てる。

著者・出版

稲盛和夫(いなもり・かずお)



1932年、鹿児島生まれ。鹿児島大学工学部卒業。59年、京都セラミツク株式会社(現・京セラ)を設立。社長、会長を経て、97年より名誉会長。また、84年に第二電電(現KDDI)を設立、会長に就任。2001年より最高顧問。10年には日本航空会長に就任。代表取締役会長、名誉会長を経て、15年より名誉顧問。1984年には稲盛財団を設立し、「京都賞」を創設。毎年、人類社会の進歩発展に功績のあった人々の顕彰を行う。2022年逝去。
著書に『生き方』『京セラフィロソフィ』(ともに小社)、『働き方』(三笠書房)、『考え方』(大和書房)など、多数。

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