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京セラフィロソフィ(サンマーク出版)稲盛和夫

Book Summary
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レビュー

京セラ、KDDIの創業、JALの再建と、次々と世界的大企業を発展に導いてきた当代随一の経営者である著者が、その人生哲学の真髄ともいうべき「京セラフィロソフィ」を、ついに一般向けに公開された貴重な一冊になります。

京セラフィロソフィーとは、稲盛和夫氏が提唱した経営理念であり、企業の哲学として広く知られている京セラフィロソフィーを余すことなく紹介してくれています。

  1. 人間性の尊重:人間性を尊重し、人間としての成長を促進することが重要である。人間の尊厳を大切にし、社員が自己実現を追求できるような職場環境を整備することが必要である。
  2. 公正と誠実の実践:企業活動は、常に公正かつ誠実な姿勢で行うことが大切である。また、信頼関係を築くことが重要である。
  3. 創造と挑戦:常に新しい価値を創造し、挑戦することが求められる。また、失敗を恐れず、失敗から学ぶことが重要である。
  4. 自主性と責任の追求:自主性を重んじ、自ら責任を持って行動することが求められる。組織全体で目的を共有し、個々の責任を果たすことが重要である。

以上が、京セラフィロソフィーの要約となります。これらの理念を実践することで、京セラは社会的に貢献する企業として、世界的に高い評価を受けています。

本書のPoint
人として何が正しいかを判断基準とする
稲盛氏は意思決定に迷う時、人間として何が正しいかを最終的な拠り所として置きました。それは、京セラのウェブサイトに次のような記載されています。
「(京セラフィロソフィは)“人間として何が正しいか”を判断基準として、人として当然持つべきプリミティブな倫理観、道徳観、社会的規範にしたがって、誰に対しても恥じることのない公明正大な経営、業務運営を行っていくことの重要性を説いたものです」これが京セラフィロソフィ、稲盛経営哲学の原点といえるでしょう。
ステークホルダーの対象範囲に広がりを持つ
上記の価値基準を含み、京セラフィロソフィの及ぶ範囲を一言で説明する言葉が「敬天愛人」です。敬天愛人は、元は中国の二大賢帝の一人と言われる清の康熙帝が筆を入れた額に由来するようです。稲盛氏は敬天愛人を、西郷隆盛の著書から取り出し、次のように解釈しました。「敬天愛人とは『西郷南洲遺訓』の中にある言葉で、天は道理であり、道理を守ることが敬天である。また人は皆自分の同胞であり、仁の心をもって衆を愛することが愛人の意味である」そして、これを京セラの社是としました。まず、人間として何が正しいかの道理に従い、仁の心をもって衆を愛する。つまり、仁とは思いやりの心であるので、思いやりを衆のみならず、衆が存在する基盤となっている地域社会や国、地球環境にも差し向けることを意味しています。
人の心の持ち方を変えることをベースとする
京セラフィロソフィの中には、人の心を中心に据える経営に関する言及が多くあります。例えば、「経営資源の中で最も重要なのは、人、さらにいえば人の心なのである。その人の心の在り方というものを究明することが今こそ必要ではないだろうか」それでは、なぜ稲盛氏は人の心を大切にするのでしょうか。それは、人生でも仕事でも、素晴らしい結果を生むためには、ものの考え方、心の持ち方が決定的な役割を果たすからに他なりません。稲盛氏は、人生や仕事で成果を上げるための方程式として「考え方×熱意×能力」が成り立つといい、その中でも「考え方」を特に重視します。
なぜなら、「考え方」つまり、心の持ち方にはプラス100からマイナス100まであり、掛け算に依るから、心の持ち方次第で成果の現れ方が劇的に変わってくるからだと稲盛氏は説明しています。したがって人生を豊かにするには、良い心を持つべきであり、かつその心を高め続けるべきであると説きます。
理念と実践の両輪からなる経営
どのような立派な経営理念を構築しても、理念が絵に描いた餅では意味がありません。経営理念はじっくり考えれば誰でも作れますが、実践してはじめて価値を生みます。稲盛氏の経営哲学において、この実践の形が、名前をよく知られた「アメーバ経営」です。稲盛氏によれば「アメーバ経営は、小集団独立採算により全員参加経営をおこない、全従業員の力を結集していく経営管理システムである」と説明しています。人材育成の観点からすると、アメーバ経営は従業員に、自分事として仕事に向き合う実践の場、能力を高める機会を提供します。そして、経営とは、どれだけのコストをかけてどれだけの価値を生み出したのかということです。価値の総和からコストを引いたものが経営による生産物といえます。

京セラフィロソフィは普遍的
KDDIの企業理念は
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社是「心を高める」~動機善なりや、私心なかりしか~
 
企業理念:KDDIグループは、全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、お客さまの期待を超える感動をお届けすることにより、豊かなコミュニケーション社会の発展に貢献します。
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また、それまで経営理念がなかったJALでは、研修を受けて、次のようなJALフィロソフィが策定されました。
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JALグループは、全社員の物心両面の幸福を追求し、
一、お客さまに最高のサービスを提供します。
一、企業価値を高め、社会の進歩発展に貢献します。
(続く)
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KDDI、JALの経営理念からわかることとして、二社の経営理念を並べてみると、両者ともに、人間としての正しさ、私心のない気高い精神を保ち、従業員自ら心を高めることで、「全社員の物心両面の幸福を追求し」、「社会の発展に貢献します」という、京セラと同様の内容が記されています。つまり、京セラフィロソフィの考え方は、既存企業を伸ばす場合であれ、新規事業の創業であれ、企業再生であれ、人材育成や成果創出において、普遍的に活用できることが示されたわけです。
本書の目次

●第1章 すばらしい人生をおくるために
 きれいな心で願望を描く/一日一日をど真剣に生きる ほか

●第2章 経営のこころ
 心をベースとして経営する/公明正大に利益を追求する ほか

●第3章 京セラでは一人一人が経営者
 値決めは経営である/売上を極大に、経費を極小に ほか

●第4章 日々の仕事を進めるにあたって
 現場主義に徹する/手の切れるような製品をつくる ほか

著者・出版

稲盛和夫(いなもり・かずお)



1932年、鹿児島生まれ。鹿児島大学工学部卒業。59年、京都セラミツク株式会社(現・京セラ)を設立。社長、会長を経て、97年より名誉会長。また、84年に第二電電(現KDDI)を設立、会長に就任。2001年より最高顧問。10年には日本航空会長に就任。代表取締役会長、名誉会長を経て、15年より名誉顧問。1984年には稲盛財団を設立し、「京都賞」を創設。毎年、人類社会の進歩発展に功績のあった人々の顕彰を行う。2022年逝去。
著書に『生き方』『京セラフィロソフィ』(ともに小社)、『働き方』(三笠書房)、『考え方』(大和書房)など、多数。

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