本サイトで紹介する本に関する理解度チェック問題になります。
問題を解きながら、本の概要を理解できるように、
問題以上に解説に力を入れておりますので、是非活用ください。
[3つのポイント]
・戦争には多大な費用が必要 |
・戦争は少しでも早く終わらせろ |
・戦争の開始から終わりまで事前に作成を立てろ |
[サマリ]
戦争準備計画について記しています。戦争を長期化させない。戦争が長期化しても国の利益にはならないといっています。計画段階、戦略立案段階では、勝てるイメージができるまでしっかり練り込まなければならないが、いざ実行段階になれば拙速を尊ぶ。スピードは最も費用のかからない差別化ポイントであり、これだけ変化の激しい時代に、トロトロしていては話にならない。孫子も、多少まずいところがあってもスピーディーに事を進めてうまく行ったという話は聞くが、完璧を目指して時間をかけてうまく行ったという話は聞かないと言っている。経営スピードを上げるためには情報伝達スピードを上げるしかない。企業を人に喩えれば、神経のスピードと言える。例)太平洋戦争では拙速出来なかったことで、300万人が戦死した。
孫子は、勝つこと、すなわち目的を達成することに集中し、ズルズルと戦いを長期化させてはならないと説いた。そうしたものの道理(戦いの本質)を理解している経営者こそが、企業の命運を握る守護者であり、社員をリードし、企業を存続させる統率者であることを許される。これは、まさに経営や事業戦略を立てたら、スピーディーに実行に移すべきだということだ。
読み下し文 | 現代語訳 |
孫子曰く、凡そ兵を用うるの法は、馳車 千駟、革車千乗、帯甲十万、千里にして糧を饋るときは、則ち内外の費、賓客の用、膠漆の材、車甲の奉、日に千金を費して、然る後に十万の師挙がる。 | 孫子はいう。戦争の原則は戦車千台、輜重車千台、武具を付けた兵士十万、千里の外に食糧をを運搬する場合には、一日千金をも費やしてはじめて軍隊を動かせる。 |
其の戦いを用うるや、勝つも久しければ、則ち兵を鈍らし鋭を挫く。城を攻むればすなわち力屈き、久しく師を暴さばすなわち国用足らず。それ兵を鈍らせ鋭を挫き、力を屈くし貨を殫くすときは、すなわち諸侯その弊に乗じて起こる。智者ありといえども、そのあとを善くすることあたわず。ゆえに兵は拙速なるを聞くも、いまだ巧の久しきを睹ざるなり。それ兵久しくして国の利する者は、いまだこれあらざるなり。ゆえにことごとく用兵の害を知らざる者は、すなわちことごとく用兵の利をも知ることあたわざるなり。 | 従って、そうした戦いをして長引くと軍を疲弊させて鋭気をくじくことにもなる。その状態で城を攻めれば戦力が尽き、軍隊を露営させておけば国家の経済は窮乏する。
軍も疲弊し鋭気をくじかれて力も尽き財貨も無くなったということであれば、外国の諸侯たちはその困窮につけこんで襲い掛かり、たとえ味方に智謀の人がいても防ぐことは出来ない。 だから戦争は拙速(まずくとも素早く切り上げる)するのがよい、長引いてうまくいった例は少ない。そもそも戦争が長引いて国家に利益があるというためしはない。だから戦争の損害を十分に知り尽くしていない者には、戦争の利益を十分に知り尽くすことができないのである。 |
善く兵を用うる者は、役は再びは籍せず、糧は三たびは載せず。用を国に取り、糧を敵による。ゆえに軍食足るべきなり。国の師に貧なるは、遠く輸せばなり。遠く輸さば百姓貧し。師に近き者は貴売すればなり。貴売すればすなわち百姓は財竭く。財竭くればすなわち丘役に急にして、力屈し財殫き、中原のうち、家に虚しく、百姓の費、十にその七を去る。公家の費、破車罷馬、甲冑矢弩、戟楯蔽櫓、丘牛大車、十にその六を去る。ゆえに智将は務めて敵に食む。敵の一鍾を食むは、わが二十鍾に当たり、秆一石は、わが二十石に当たる。
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戦争の上手な人は、兵役を二度繰り返し徴収せず、食糧は三度運ばず、軍需品は自分の国のものを使うけれど、食糧は敵地のものに依存する。だから兵糧は十分なのである。国家が軍隊の為に貧しくなるのは遠征の場合に遠くに食糧を運ぶことで、民衆が貧しくなる。近くでの戦争なら物価が高くなり、物価が高くなれば民衆の蓄えがなくなる。貯えがなくなれば、村から出す軍役にもくるしむことになる。その結果、戦場で戦力がなくなり民衆が貧しくなる。そして国の経費もへることになる。だから智将はできるだけ敵の兵糧を奪って食べるようにする。敵の一升を食べるのは、味方の二十しょう分に相当する。 |
ゆえに敵を殺す者は怒りなり。敵の利を取る者は貨なり。ゆえに車戦に車十乗已上を得れば、そのまず得たる者を賞し、しかしてその旌旗を更め、車は雑えてこれに乗らしめ、卒は善くしてこれを養わしむ。これを敵に勝ちて強を益すと謂う。 | 敵兵を殺すのはふるいたった気勢によるのであるが、敵の物資を奪い取るのは実際の利益のためである。だから車十台以上を捕獲したときには、捕獲したものを賞として与え、敵の旗印を味方のものと取り換えて、味方のものにたちまじって乗用させ降参した兵卒は優遇して養わせる。これが敵に勝って強さをますということである。 |
ゆえに兵は勝つことを貴ぶ。久しきを貴ばず。ゆえに兵を知るの将は、生民の司命、国家安危の主なり。 | 戦争は勝利を第一とするが、長引くのはよくない。戦争をわきまえた将軍は人民の生死の運命を握るものであり、国家の安危を決する主宰者である。 |
〇第一 始計篇
(戦う前に心得ておくべきこと、準備しておくべきこと)
〇第二 作戦篇
(戦争準備計画についての心得)
〇第三 謀攻篇
(武力ではなく「はかりごと」の重要性)
〇第四 軍形篇
(攻撃・守備、それぞれの態勢のこと)
〇第五 兵勢篇
(戦う前に整えるべき態勢)
〇第六 虚実篇
(「虚」とはすきのある状態、「実」は充実した状態の制御方法)
〇第七 軍争篇
(戦場において、軍をどうやって動かす方法)
〇第八 九変篇
(戦場で取るべき九つの変化について説明)
〇第九 行軍篇
(戦場における行軍の考え方)
〇第十 地形篇
(戦う時の事項を地形と軍隊の状況の二つに分け六つの状況を解説)
〇第十一 九地篇
(地形篇に続き、戦場となる地形と兵の使い方)
〇第十二 火攻篇
(火攻めを中心に解説)
〇第十三 用間篇
(敵の情報を入手するには間諜の用い方)
著者: 孫氏
『孫子』(そんし)は、紀元前500年ごろの中国春秋時代の軍事思想家孫武の作とされる兵法書。武経七書の一つ。古今東西の兵法書のうち最も著名なものの一つである。紀元前5世紀中頃から紀元前4世紀中頃あたりに成立したと推定されている。
『孫子』以前は、戦争の勝敗は天運に左右されるという考え方が強かった。孫武は戦争の記録を分析・研究し、勝敗は運ではなく人為によることを知り、勝利を得るための指針を理論化して、本書で後世に残そうとした。
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