本サイトで紹介する本に関する理解度チェック問題になります。
問題を解きながら、本の概要を理解できるように、
問題以上に解説に力を入れておりますので、是非活用ください。
[3つのポイント]
・地形は「通」「挂」「支」「隘」「険」「遠」の6種類 |
・指揮官は部下の行動全てに責任を負う |
・指揮官は軍の運用に権限と責任を持つ |
[サマリ]
本章の地形は、ビジネスで言えば市場、ポジショニングに置き換えることができます。どの場所が有利なのかは状況や自社の強みによって異なりますから、最も最適な場所取をしていくことが大事です。「相手を知って自分を知り、タイミングを待って、最適な場所を活かせば必ず勝てる」と孫子は言っています。
実際に戦う時の事項を地形と軍隊の状況の二つに大きく分けて、それぞれについて六つの状況を解説しています。
<地形>
地形を利用して有利な体勢を保持するのが大切であるが、その背景にはこれまでに述べたような駆け引きや主導権が重要であるといっています。
- 通じて開けている土地・場所では敵に先んじて日当たりのよい(交通の便のよい)場所を確保して補給を万全にするのがよい。
- さまたげのある土地・場所では出るのは易しいが、戻るのは難しいので、戦機を充分に見極めてから動かなくてはならない。
- 枝道に分かれた土地・場所では敵を誘い出すようにし、こちらから出てはならない。これは主力の配分の難しさでもある。敵の行動を見てから対処する方が有利である。
- 両側が迫った狭い地形・場所ではこちらが先に確保して、敵を迎え撃つのがよい。一度に通ることの出来る人数が少ないため、効率的に迎え撃つことが出来る。大軍を相手にする場合はよくこの戦法を用いる。
- 険しい地形・場所では、これも先に確保して、高所から低所の敵を迎え撃つ態勢に持っていくのがよい。
- 両軍の陣が遠くに隔たっている地形・場所では、遠方への軍の移動は困難が伴うので、このような場合は先に戦いを仕掛けない方がよい。
<軍隊>
軍の状態の一覧。これらはいわば敗軍の陥る状態であるが、その原因は全てそれを率いる将軍にあるといい、軍を統率する将軍の地位や責任を重要であるといっています。
- 軍が逃亡するのは、十倍もの敵軍を攻撃しようとするとき
- 軍の規律のゆるむのは、兵を取り締まる役人が力不足であるとき
- 軍の士気の落ち込むのは、逆に役人が強すぎて兵が萎縮しているとき
- 軍の態勢の崩れるのは、役人が将軍の命に従わず、自分勝手に戦っているとき。
- 軍の統率の乱れるのは、将軍に厳しさがなく、陣立ても乱れているとき
- 軍が敗走するのは、勇敢な兵がなく、小勢で多勢に向かっていくようなとき
読み下し文 | 現代語訳 |
孫子曰く、地形には、通なる者あり、挂なる者あり、支なる者あり、隘なる者あり、険なる者あり、遠なる者あり。われもって往くべく、彼もって来たるべきを通という。通なる形には、まず高陽に居り、糧道を利してもって戦わば、すなわち利あり。もって往くべく、もって返り難きを挂という。挂なる形には、敵に備えなければ出でてこれに勝ち、敵もし備えあらば出でて勝たず。もって返り難くして、不利なり。われ出でて不利、彼も出でて不利なるを支という。支なる形には、敵、われを利すといえども、われ出ずることなかれ。引きてこれを去り、敵をして半ば出でしめてこれを撃つは利なり。隘なる形には、われまずこれに居らば、必ずこれを盈たしてもって敵を待つ。もし敵まずこれに居り、盈つればすなわち従うことなかれ、盈たざればすなわちこれに従え。険なる形には、われまずこれに居らば、必ず高陽に居りてもって敵を待つ。もし敵まずこれに居らば、引きてこれを去りて従うことなかれ。遠なる形には、勢い均しければもって戦いを挑み難く、戦えばすなわち不利なり。およそこの六者は地の道なり。将の至任、察 せざるべからず。 | 孫子はいう。土地の形状には、
「通じて開けている土地」 「さまたげのある土地」 「枝道に分かれた土地」 「両側が迫った狭い地形」 「険しい地形」 「両軍の陣が遠くに隔たっている地形」 がある。 これらの六つのことは、土地についての道理である。将軍の最も重大な責務として十分に考えなければならない。 |
ゆえに兵には、走なるものあり、弛なるものあり、陥なるものあり、崩なるものあり、乱なるものあり、北なるものあり。およそこの六者は、天地の災いにあらず、将の過ちなり。それ勢い均しきとき、一をもって十を撃つを走という。卒強くして吏弱きを弛という。吏強くして卒弱きを陥という。大吏怒りて服さず、敵に遇えば懟みてみずから戦い、将はその能を知らざるを崩という。将弱くして厳ならず、教道も明かならずして、吏卒常なく、兵を陳ぬること縦横なるを乱という。将、敵を料ることあたわず、小をもって衆に合い、弱をもって強を撃ち、兵に選鋒なきを北という。およそこの六者は敗の道なり。将の至任にして、察せざるべからず。 | 以下の6つのことが敗北の道理である。
なので将軍の重大な責務として考えなければならない。 |
それ地形は兵の助けなり。敵を料りて勝ちを制し、険阨・遠近を計るは、上将の道なり。これを知りて戦いを用うる者は必ず勝ち、これを知らずして戦いを用うる者は必ず敗る。ゆえに戦道必ず勝たば、主は戦うなかれというとも、必ず戦いて可なり。戦道勝たずんば、主は必ず戦えというとも、戦うなくして可なり。ゆえに進んで名を求めず、退いて罪を避けず、ただ民をこれ保ちて利の主に合うは、国の宝なり。
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そもそも地形のありさまというのは戦争のための補助である。すべてを把握したうえで戦略をたてて戦うものは勝利するが、これを無視するものは必ず負ける。
こちらに勝算があるときは主君を押し切っても進めるべきで、勝ち目がないときは退くべきで、ただ民を大事にし、主君の利益にあうという将軍は国家の宝である。 |
卒を視ること嬰児のごとし、ゆえにこれと深谿に赴くべし。卒を視ること愛子のごとし、ゆえにこれとともに死すべし。厚くして使うことあたわず、愛して令することあたわず、乱れて治むることあたわざれば、譬えば驕子のごとく、用うべからざるなり。
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兵士をあかんぼうのように愛したら一緒に死ねる。 |
わが卒のもって撃つべきを知るも、敵の撃つべからざるを知らざるは、勝の半ばなり。敵の撃つべきを知るも、わが卒のもって撃つべからざるを知らざるは、勝の半ばなり。敵の撃つべきを知り、わが卒のもって撃つべきを知るも、地形のもって戦うべからざるを知らざるは、勝の半ばなり。ゆえに兵を知る者は、動いて迷わず、挙げて窮せず。ゆえに曰く、彼を知り己を知れば、勝、すなわち殆うからず。天を知り地を知れば、勝、すなわち窮まらず。 | 味方の兵に敵を攻撃して勝利を収める力があることが分かっても、敵の方に攻撃をしてはならない状況があることを知っていれば必ず勝つとは限らない。敵の方が攻撃してよい状況であっても、味方の兵士が攻撃をする準備ができてなければ必ず勝つとは限らない。味方の兵士に攻撃する力と準備があっても土地のありさましだいでは必ず勝つとは限らない。だから戦争に通じた人は敵のこと・味方のこと・土地のありさまをわかった上で行動を起こすから、軍を動かすことに迷いがなく、合戦しても苦しむことがない。 |
〇第一 始計篇
(戦う前に心得ておくべきこと、準備しておくべきこと)
〇第二 作戦篇
(戦争準備計画についての心得)
〇第三 謀攻篇
(武力ではなく「はかりごと」の重要性)
〇第四 軍形篇
(攻撃・守備、それぞれの態勢のこと)
〇第五 兵勢篇
(戦う前に整えるべき態勢)
〇第六 虚実篇
(「虚」とはすきのある状態、「実」は充実した状態の制御方法)
〇第七 軍争篇
(戦場において、軍をどうやって動かす方法)
〇第八 九変篇
(戦場で取るべき九つの変化について説明)
〇第九 行軍篇
(戦場における行軍の考え方)
〇第十 地形篇
(戦う時の事項を地形と軍隊の状況の二つに分け六つの状況を解説)
〇第十一 九地篇
(地形篇に続き、戦場となる地形と兵の使い方)
〇第十二 火攻篇
(火攻めを中心に解説)
〇第十三 用間篇
(敵の情報を入手するには間諜の用い方)
著者: 孫氏
『孫子』(そんし)は、紀元前500年ごろの中国春秋時代の軍事思想家孫武の作とされる兵法書。武経七書の一つ。古今東西の兵法書のうち最も著名なものの一つである。紀元前5世紀中頃から紀元前4世紀中頃あたりに成立したと推定されている。
『孫子』以前は、戦争の勝敗は天運に左右されるという考え方が強かった。孫武は戦争の記録を分析・研究し、勝敗は運ではなく人為によることを知り、勝利を得るための指針を理論化して、本書で後世に残そうとした。
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