スポンサーリンク

孫子の兵法 「第十章 地形篇」  (岩波文庫) 金谷 治※訳注

Book Summary
スポンサーリンク
理解度チェック

本サイトで紹介する本に関する理解度チェック問題になります。


問題を解きながら、本の概要を理解できるように、
問題以上に解説に力を入れておりますので、是非活用ください。

第十章 地形篇」の要点(地形に合わせた戦術を使う)


[3つのポイント]

 ・地形は「通」「挂」「支」「隘」「険」「遠」の6種類
 ・指揮官は部下の行動全てに責任を負う
 ・指揮官は軍の運用に権限と責任を持つ

 

[サマリ]

本章の地形は、ビジネスで言えば市場、ポジショニングに置き換えることができます。どの場所が有利なのかは状況や自社の強みによって異なりますから、最も最適な場所取をしていくことが大事です。「相手を知って自分を知り、タイミングを待って、最適な場所を活かせば必ず勝てる」と孫子は言っています。

実際に戦う時の事項を地形と軍隊の状況の二つに大きく分けて、それぞれについて六つの状況を解説しています。

<地形>

地形を利用して有利な体勢を保持するのが大切であるが、その背景にはこれまでに述べたような駆け引きや主導権が重要であるといっています。

  • 通じて開けている土地・場所では敵に先んじて日当たりのよい(交通の便のよい)場所を確保して補給を万全にするのがよい。
  • さまたげのある土地・場所では出るのは易しいが、戻るのは難しいので、戦機を充分に見極めてから動かなくてはならない。
  • 枝道に分かれた土地・場所では敵を誘い出すようにし、こちらから出てはならない。これは主力の配分の難しさでもある。敵の行動を見てから対処する方が有利である。
  • 両側が迫った狭い地形・場所ではこちらが先に確保して、敵を迎え撃つのがよい。一度に通ることの出来る人数が少ないため、効率的に迎え撃つことが出来る。大軍を相手にする場合はよくこの戦法を用いる。
  • 険しい地形・場所では、これも先に確保して、高所から低所の敵を迎え撃つ態勢に持っていくのがよい。
  • 両軍の陣が遠くに隔たっている地形・場所では、遠方への軍の移動は困難が伴うので、このような場合は先に戦いを仕掛けない方がよい。

<軍隊>

軍の状態の一覧。これらはいわば敗軍の陥る状態であるが、その原因は全てそれを率いる将軍にあるといい、軍を統率する将軍の地位や責任を重要であるといっています。

 

  • 軍が逃亡するのは、十倍もの敵軍を攻撃しようとするとき
  • 軍の規律のゆるむのは、兵を取り締まる役人が力不足であるとき
  • 軍の士気の落ち込むのは、逆に役人が強すぎて兵が萎縮しているとき
  • 軍の態勢の崩れるのは、役人が将軍の命に従わず、自分勝手に戦っているとき。
  • 軍の統率の乱れるのは、将軍に厳しさがなく、陣立ても乱れているとき
  • 軍が敗走するのは、勇敢な兵がなく、小勢で多勢に向かっていくようなとき

 

 

「第十章 地形篇」の読み下し文・現代語訳
読み下し文 現代語訳
孫子曰く、地形には、つうなる者あり、かいなる者あり、なる者あり、あいなる者あり、けんなる者あり、えんなる者あり。われもってくべく、彼もって来たるべきをつうという。通なるけいには、まず高陽こうようり、糧道りょうどうを利してもって戦わば、すなわち利あり。もってくべく、もって返りがたきをかいという。かいなるけいには、敵に備えなければでてこれに勝ち、敵もしそなえあらば出でて勝たず。もって返りがたくして、不利なり。われ出でて不利、彼も出でて不利なるをという。なるけいには、敵、われを利すといえども、われずることなかれ。引きてこれを去り、敵をしてなかば出でしめてこれを撃つはなり。あいなるけいには、われまずこれに居らば、必ずこれをたしてもって敵を待つ。もし敵まずこれに居り、つればすなわち従うことなかれ、たざればすなわちこれに従え。けんなるけいには、われまずこれに居らば、必ず高陽こうように居りてもって敵を待つ。もし敵まずこれに居らば、引きてこれを去りて従うことなかれ。えんなるけいには、勢いひとしければもって戦いをいどみ難く、戦えばすなわち不利ふりなり。およそこの六者ろくしゃは地の道なり。しょう至任しにんさっ せざるべからず。  孫子はいう。土地の形状には、

「通じて開けている土地」

「さまたげのある土地」

「枝道に分かれた土地」

「両側が迫った狭い地形」

「険しい地形」

「両軍の陣が遠くに隔たっている地形」

がある。

これらの六つのことは、土地についての道理である。将軍の最も重大な責務として十分に考えなければならない。

ゆえに兵には、そうなるものあり、なるものあり、かんなるものあり、ほうなるものあり、らんなるものあり、ほくなるものあり。およそこの六者ろくしゃは、天地のわざわいにあらず、しょうあやまちなり。それ勢いひとしきとき、一をもって十を撃つをそうという。そつ強くして弱きをという。強くしてそつ弱きをかんという。大吏だいり怒りて服さず、敵にえばうらみてみずから戦い、しょうはそののうを知らざるをほうという。しょう弱くしてげんならず、教道きょうどうも明かならずして、吏卒りそつ常なく、兵をつらぬること縦横じゅうおうなるをらんという。しょう、敵をはかることあたわず、小をもって衆にい、弱をもってきょうを撃ち、兵に選鋒せんぽうなきをほくという。およそこの六者ろくしゃはいの道なり。しょう至任しにんにして、さっせざるべからず。  以下の6つのことが敗北の道理である。
  • 軍が逃亡するのは、十倍もの敵軍を攻撃しようとするとき
  • 軍の規律のゆるむのは、兵を取り締まる役人が力不足であるとき
  • 軍の士気の落ち込むのは、逆に役人が強すぎて兵が萎縮しているとき
  • 軍の態勢の崩れるのは、役人が将軍の命に従わず、自分勝手に戦っているとき。
  • 軍の統率の乱れるのは、将軍に厳しさがなく、陣立ても乱れているとき
  • 軍が敗走するのは、勇敢な兵がなく、小勢で多勢に向かっていくようなとき

なので将軍の重大な責務として考えなければならない。

それ地形は兵の助けなり。敵をはかりて勝ちをせいし、険阨けんあい・遠近をはかるは、上将じょうしょうの道なり。これを知りて戦いをもちうる者は必ず勝ち、これを知らずして戦いをもちうる者は必ずやぶる。ゆえに戦道せんどう必ず勝たば、しゅは戦うなかれというとも、必ず戦いてなり。戦道せんどう勝たずんば、しゅは必ず戦えというとも、戦うなくしてなり。ゆえに進んで名を求めず、退しりぞいて罪をけず、ただ民をこれ保ちて利のしゅに合うは、国のたからなり。
 そもそも地形のありさまというのは戦争のための補助である。すべてを把握したうえで戦略をたてて戦うものは勝利するが、これを無視するものは必ず負ける。

こちらに勝算があるときは主君を押し切っても進めるべきで、勝ち目がないときは退くべきで、ただ民を大事にし、主君の利益にあうという将軍は国家の宝である。

そつること嬰児えいじのごとし、ゆえにこれと深谿しんけいおもむくべし。そつること愛子あいしのごとし、ゆえにこれとともに死すべし。あつくして使うことあたわず、愛してれいすることあたわず、みだれて治むることあたわざれば、たとえば驕子きょうしのごとく、もちうべからざるなり。
兵士をあかんぼうのように愛したら一緒に死ねる。
わがそつのもって撃つべきを知るも、敵の撃つべからざるを知らざるは、しょうなかばなり。敵の撃つべきを知るも、わがそつのもって撃つべからざるを知らざるは、しょうなかばなり。敵の撃つべきを知り、わがそつのもって撃つべきを知るも、地形ちけいのもって戦うべからざるを知らざるは、しょうなかばなり。ゆえに兵を知る者は、動いて迷わず、げてきゅうせず。ゆえに曰く、かれを知りおのれを知れば、しょう、すなわちあやうからず。天を知り地を知れば、しょう、すなわちきわまらず。  味方の兵に敵を攻撃して勝利を収める力があることが分かっても、敵の方に攻撃をしてはならない状況があることを知っていれば必ず勝つとは限らない。敵の方が攻撃してよい状況であっても、味方の兵士が攻撃をする準備ができてなければ必ず勝つとは限らない。味方の兵士に攻撃する力と準備があっても土地のありさましだいでは必ず勝つとは限らない。だから戦争に通じた人は敵のこと・味方のこと・土地のありさまをわかった上で行動を起こすから、軍を動かすことに迷いがなく、合戦しても苦しむことがない。
本書の目次

  〇第一 始計篇 
(戦う前に心得ておくべきこと、準備しておくべきこと)

 〇第二 作戦篇 
(戦争準備計画についての心得)

 〇第三 謀攻篇 
(武力ではなく「はかりごと」の重要性)

 〇第四 軍形篇 
(攻撃・守備、それぞれの態勢のこと)

 〇第五 兵勢篇 
(戦う前に整えるべき態勢)

 〇第六 虚実篇 
(「虚」とはすきのある状態、「実」は充実した状態の制御方法)

 〇第七 軍争篇 
(戦場において、軍をどうやって動かす方法)

 〇第八 九変篇 
(戦場で取るべき九つの変化について説明)

 〇第九 行軍篇 
(戦場における行軍の考え方)

 〇第十 地形篇 
(戦う時の事項を地形と軍隊の状況の二つに分け六つの状況を解説)

 〇第十一 九地篇 
(地形篇に続き、戦場となる地形と兵の使い方)

 〇第十二 火攻篇 
(火攻めを中心に解説)

 〇第十三 用間篇 
(敵の情報を入手するには間諜の用い方)

著者・出版

著者: 孫氏

『孫子』(そんし)は、紀元前500年ごろの中国春秋時代の軍事思想家孫武の作とされる兵法書。武経七書の一つ。古今東西の兵法書のうち最も著名なものの一つである。紀元前5世紀中頃から紀元前4世紀中頃あたりに成立したと推定されている。

『孫子』以前は、戦争の勝敗は天運に左右されるという考え方が強かった。孫武は戦争の記録を分析・研究し、勝敗は運ではなく人為によることを知り、勝利を得るための指針を理論化して、本書で後世に残そうとした。

コメント

タイトルとURLをコピーしました