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孫子が指揮する太平洋戦争 (文春新書) 前原 清隆

Book Summary
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理解度チェック

本サイトで紹介する本に関する理解度チェック問題になります。


問題を解きながら、本の概要を理解できるように、
問題以上に解説に力を入れておりますので、是非活用ください。

レビュー

元陸自隊員にして戦術研究のエキスパートの前原清隆さんが、兵法書『孫子の兵法』の視点で太平洋戦争を分析し、 詳しく、そしてわかりやすく孫子とからめて解説している書です。

約2500年前に誕生し、いまなおビジネス、政治からスポーツにいたるまで幅広い分野で、多くの信奉者がいる『孫子の兵法』。 孫子の兵法は、紀元前に孫武によって書かれた兵法書ですが、2000年以上の歴史を経過した現代でも第一線として活用できる書籍として定着しています。 例えば、曹操、武田信玄、、ナポレオン、 ビルゲイツ、孫正義のバイブルとしても有名です。本書は 戦いにおいていかに効率的に勝利を引き寄せるかが説かれております。「彼を知りて己を知れば百戦して殆(あや)うからず」で知られ、一般的には、戦いに勝つための戦術書、国家の運営・軍事作戦における戦略書として高く評価されています。しかし、孫子研究家の著者によると、孫子は、安易な戦いをいさめ、「戦わずして勝つ」ことが本質だというのが一貫した主張です。しかしながら、いざ戦争となれば「短期間で最小限の損害で戦いを終結する」ことを徹底して追及しているところが、現実主義者と言われる所以です。

もし日本の陸海軍の統帥部が、孫子の教えを正しく理解し、戦争指導に取り入れていたら、少なくとも、あれほどまでに負けずにすんだのではないか。真珠湾攻撃、ミッドウェー海戦、ガダルカナル作戦、重慶作戦とセイロン作戦、インパール作戦、マリアナ沖海戦、レイテ決戦、そして本土決戦・・・実際に生起した個々の戦いを追体験していくなかで、孫子の教えが理解できるようになります。

太平洋戦争の戦略・戦術に関して興味がある方には是非お勧めしたい一冊です。

本書の要点

●太平洋戦争を『孫子の兵法』で分析

太平洋戦争開戦の背景としては、日本海軍は対米作戦の基本的な方針として守勢の邀撃作戦を採っていたのですが、連合艦隊司令長官であった山本五十六大将は以前よりこの方針に疑問を持ち、独自の対米作戦構想として積極的な攻勢作戦が実現したことで勃発した戦争なのです。まさに孫子の兵法でいうところの【勝つべからざる者は守りなり】を海戦前は体現していたのです。しかし、この方針を山本五十六の個人的な構想を優先させたことで太平洋戦争が始まり日本は敗れたのです。

真珠湾攻撃

[真珠湾攻撃]概要

真珠湾攻撃は、太平洋戦争において日本海軍が、アメリカ合衆国のハワイ準州オアフ島真珠湾にあったアメリカ海軍の太平洋艦隊と基地に対して行った、航空機および潜航艇による攻撃です。戦闘の結果、アメリカ太平洋艦隊の戦艦部隊は戦闘能力を一時的に完全に喪失し、開戦初頭にアメリカ軍艦隊に大打撃を与えて、側面から南方作戦を援護するという作戦目的を達成したと言われています。
[孫子の兵法]分析 【兵は詭道なり(戦いとは騙すことである)】
一般的には、真珠湾攻撃は成功と考えられていますが、戦略・作戦・戦術すべての面で間違っており、この攻撃で日本が太平洋戦争に敗れたと言っても過言ではないのです。そもそも真珠湾攻撃は、奇襲作戦として有名ですが、実は山本五十六の構想から具体的な実践に移す間に、暗号が解読されルーズベルトはこの攻撃がくることを知っていたのです。
真珠湾攻撃を引いた目線で見てみると、日本は詭道のうちに無防備な真珠湾を攻撃し意表を突いたように考えられていますが、全体としてはアメリカ側の詭道に乗せられた戦いということが言えます。


ミッドウェー海戦

[ミッドウェー海戦]概要

ミッドウェー海戦は、太平洋戦争中の1942年6月5日から7日にかけて、ミッドウェー島付近で行われた海戦です。同島攻略をめざす日本海軍をアメリカ海軍が迎え撃つ形で発生し、日本海軍機動部隊とアメリカ海軍機動部隊および同島基地航空部隊との航空戦の結果、日本海軍は投入した空母4隻とその搭載機約290機の全てを喪失したのです。
[孫子の兵法]分析 【彼を知りて己を知れば百戦して危うからず(敵を知り自分を知れば戦いには勝つ)】
ニミッツ提督の戦後の著書でミッドウェー海戦について、日本軍を侮らず情報収集に徹し、アメリカは戦力的には劣勢であることを把握した上で、日本の暗号を解読し日本軍の計画を事前につかんだのです。つまりアメリカは劣勢を情報戦でカバーし、日本軍の勝利病ともいえる驕りや油断を利用して勝利を収めたのです。ミッドウェー海戦においては、アメリカこそが、彼を知りて己を知れば百戦して危うからずの状態だったといえます。
ガダルカナル作戦

[ガダルカナル作戦]概要

ガダルカナル島の戦いは、第二次世界大戦において1942年8月以降日本軍と連合軍が西太平洋ソロモン諸島のガダルカナル島を巡って繰り広げた戦いである。ミッドウェー海戦と共に太平洋戦争における攻守の転換点となった。日本側は激しい消耗戦により兵員に多数の餓死者を発生させたうえ、軍艦、航空機、燃料、武器等多くを失った。
[孫子の兵法]分析

【善く戦うものは人を致して人に至らされず(相手に左右されず、相手を左右する立場に立つ)】
戦いにおいては主導権を握ることが大切です。では、どのように主導権を握るのかというと【兵の形は実を避けて虚を撃つ】と言っています。つまり相手の戦備の手薄なところを攻め、慌てて駆け付けた相手には準備万端でたたくのです。ガダルカナル作戦においては、「虚」が日本側で、「実」がアメリカ側であったことは明確です。

インパール作戦

[インパール作戦]概要

インパール作戦とは、第二次世界大戦のビルマ戦線において、1944年3月に帝国陸軍により開始、7月初旬まで継続された、援蒋ルートの遮断を戦略目的として、イギリス領インド帝国北東部の都市であるインパール攻略を目指した作戦のことである。作戦に参加した殆どの日本兵が死亡したため、現在では『史上最悪の作戦』と言われている。これも、またガダルカナル作戦と同様に兵站軽視ミスであった。食料が尽きようとしているにも関わらず、日本の前線の指揮官は「ただ突撃あるのみ」と冷静に状況を判断できなかったのである。
[孫子の兵法]分析

【将とは、智・信・仁・勇・厳なり(良いリーダーは、知恵があり・信頼され・労りの心があり・厳しさがある)】
リーダーの五徳は、
「智(知恵があること)」
「信(人から信頼されること)」
「仁(労りの心があること)」
「勇(勇気があること)」
「厳(厳しさがあること)」である。

マリアナ沖海戦

[マリアナ沖海戦]概要

マリアナ沖海戦は、太平洋戦争中の1944年6月19日から6月20日にかけてマリアナ諸島沖とパラオ諸島沖で行われた日本海軍とアメリカ海軍の海戦です。マリアナ諸島に侵攻するアメリカ軍を日本軍が迎撃した本作戦では、壊滅的敗北(空母3隻と搭載機のほぼ全てに加えて出撃潜水艦の多くも失う)を喫し、空母部隊による戦闘能力を喪失した。マリアナ諸島の大半はアメリカ軍が占領することとなり、西太平洋の制海権と制空権は完全にアメリカが掌握した。
[孫子の兵法]分析 【凡そ戦いは正を以て合い、奇を以て勝つ(殆どの戦いは正攻法で敵と向き合い、新たな状況に即応することで勝つのである)】
戦いを端的に表しており、基本は正攻法で勝ち、さらに奇の新たな状況へ即応して勝つのです。これは新たな状況へ即応することで、それが奇から正になり正攻法となるので戦いとはこの繰り返しだと孫子は言っています。
本土決戦

[本土決戦]概要

本土決戦とは、太平洋戦争において想定された日本本土への連合軍陸上戦闘に対する日本側の呼称です。日本軍はすべてを決するという意味で「決号作戦」と称する防衛作戦を計画していた。1945年(昭和20年)8月に日本がポツダム宣言を受諾して降伏したため、本土決戦は行われることがなかった。
[孫子の兵法]分析 【亡国は以て復た存すべからず、死者は以て復た生くべからず(国が亡んだら興すことはできず、死人も再び生き返ることはない)】
孫子は軽々しく戦うこと諫める。まずは戦わないことを第一に考えることは孫子の一環した主張だ。幸い、日本はあれほどの壊滅的な敗戦にも関わらず奇跡的な復興を遂げたが、戦いというのは全てをゼロにすることなので慎重になるべきなのだ

本書の目次

第1章 真珠湾攻撃―兵は詭道なり
第2章 ミッドウェー海戦―勝を知るに五あり
第3章 ガダルカナル作戦―人を致して人に致されず
第4章 重慶作戦とセイロン作戦―勝ち易きに勝つ
第5章 インパール作戦―将に五危あり
第6章 マリアナ沖海戦―勝つべからざる者は守なり
第7章 レイテ決戦―死地には則ち戦う
第8章 本土決戦―亡国は以て復た存すべからず

著者・出版

著者: 前原 清隆

1941年、台湾新竹州生まれ。鹿児島県出身。1958年、陸上自衛隊第4期通信生(少年工科学校:現高等工科学校の前身)として入隊。外務省中国課、陸幕調査部(中国担当)、統幕5室、米陸軍防空センター、第2高射特科群長、第2高射特科団副団長などを経て1997年退職。その後、(株)日本製鋼所勤務。この間欧米先進諸国の軍事技術調査などにあたる。2011年より『NPO法人孫子経営塾』の代表を務める

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