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経営における「アート」と「サイエンス」 (光文社) 山口周

Book Summary
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レビュー

タイトルにある通り、世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのかが明確になる一冊でした。

本書では、論理はサイエンスで、直感がアートと定義されており、今の時代はサイエンスだけではコモディティ化しちゃうので、個人の自己実現を満たすために情緒面に訴えないと戦えなくなるという話です。著者は、戦略コンサルティング畑の方で、もろに論理の世界で戦いた方ですが、その人が行きついた答えが、サイエンスを突き詰めれば「コモディティ化」が進み、経済が豊かになって「自己承認欲求の市場」になった世界には対応しきれないということです。いまビジネスの世界では取り組む仕事への「意義」に納得しきれないと、動かない、動けない人が多いなと思っています。それは、これまで大量生産大量消費に代表されるプロダクト産業が、例えばアップルのようにモノをサービス産業化する世界になりつつあるなか、必然の流れなのかもしれません。その答えがアートであり美意識なのだということが繋がりました。

一言で本書における著者の課題認識と解決方法を纏めると
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■課題認識
論理(サイエンス)ではコモンディティ化に行きつく。現在の経済が豊かになって「自己承認欲求の市場」になった世界には対応しきれない 。

■解決方法
美意識(真・善・美)に関する基準を高める

もう少し美意識の基準を高めることを解像度を高めて説明すると、解決方法としては以下のようなものになる。
 -アート、サイエンス、クラフトのバランスを保つ
 -直感的な解から試行錯誤する
 -世界観とストーリーで共感を得る
 -誠実性というコンピテンシーを高める
これらを総じて美意識を高める著者は説明している。

■美意識とは
美意識(真・善・美)については以下のように解説されている。自分の直感を大切にして、自分中心で考えてよいのであるというのが私の解釈だ。
①真
 -何が真か
 -論理的推論だけではなく直感に基づく意思決定も行う
②善
 -何が全で悪か
 -法律だけでなく内部的な倫理、道徳に則って行う
③美
 -何が美か
 -顧客や市場の調査からではなく、自らの美意識、審美感性へ転換していく

本書のPoint
経営における三要素としての美意識
アート/クラフト/サイエンスという考え方が紹介されています。カナダのマギル大学のミンツバーグ教授は経営の三要素を指して上記のように説明しました。アートは美意識にあたります。 多くの企業はアート軽視して クラフト/サイエンスに偏っています。 なぜならばクラフトとサイエンスは説明ができるがアートは圧倒的に説明が弱い。


(アート/クラフト/サイエンスの会話)
アートの立場の方がこれは面白い、という発想でクラフトとサイエンスと話をするとこんな感じです。
アート「面白いと思うんだけどどうだろう」
クラフト「経験上その方がうまくいかないような気がするなあ」
サイエンス「メリットとデメリットを考えた時にデメリットの方が多いなあ」
アートが、 いやいやそれでも美しい、といくら反応したところでクラフトとサイエンスはそれはあなたのやりたいことであって、組織全体にとっていいかどうかっていう観点が大幅に欠如しているよねなど劣勢になりがちであるが、アート主導をいう軸を掲げることで意思決定に変化が生まれるのでは。
世界は「自己実現欲求の市場」になっている
マズローの5段階説をご存知でしょうか。生理的欲求→安全欲求→社会的欲求→承認欲求→自己実現欲求という人間の欲求を5段階に分解したものです。 現在、グローバルな経済成長に伴って、生活水準が上昇したことにより、徐々に自己実現欲求へと消費者のベネフィットが変化しつつあります。機能がコモディティ化した結果、機能的ベネフィットだけで選択しなくなりつつあるのです。 例として、パソコンは最初は記憶容量とか計算能力で比較されたものの、差がなくなってくるとデザインやブランドといった情緒的な要素による判断基準が、人々の購買に影響するようになりました。これこそが自己実現欲求です。ちょっと古いイメージになりますが、スターバックスでMac Book Air をパチパチ打ってる人、というあの感じです。


山口周さんは、「世界が巨大な自己実現欲求の指標となるとき世界に形成された日本=無意識の国というperceptionは極めて大きな武器になるはず」という風に語っています。今後、基礎体力として美意識が重要な競争資源となるならば、世界最高水準の競争力を持っているのが日本であり、日本人は、そういうのが得意だというのです。 この点に関しては、『シン・ニホン』でも安宅さんが日本の妄想力は世界一であり、これから可能性を大いに秘めていると言われています。
本書の目次

忙しい読者のために
本書における「経営の美意識」の適用範囲
第1章 論理的・理性的な情報処理スキルの限界
第2章 巨大な「自己実現欲求の市場」の登場
第3章 システムの変化が早すぎる世界
第4章 脳科学と美意識
第5章 受験エリートと美意響
第6章 美のモノサシ
第7章 どう「美意識」を鍛えるか?

著者・出版

山口 周(やまぐち しゅう)

東京都生まれの日本の中立者・著作家・パブリックスピーカー・経営コンサルタントである。本人は「ナレッジキュレーター」と名乗ることもある。株式会社ライプニッツ代表。 「経営におけるアートとサイエンスのリバランス」「組織の潜在的創造性の開発」「資本主義とビジネスの未来」などを主な専門領域とする。 ボストン・コンサルティング・グループ、A.T.カーニー等を経て、ヘイグループに参画。
消費財、メディア、流通、情報通信等、幅広い業界対して、事業戦略策定、人材活性化、イノベーション促進等のテーマで豊富なコンサルティング経験を有する。
慶応義塾大学文学部哲学科卒業、同大学院文学研究科前期博士課程修了。

生年月日: 1970年 (年齢 53歳)
出生地: 東京都
学歴: 慶應義塾大学

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