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論点思考(東洋経済新報社)内田和成

Book Summary
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レビュー

「あなたは上司から与えられた問題や課題の設定が正しいのか考えたことがありますか?」
「与えられた問題や課題を解けば成果が出ると考えていませんか?」

本書は仕事をする上で、どのような思考することが成果につながるのかを教えてくれます。本書では、「解くべき問題」を論点と呼びます。それ以外の問題に関してはイシューではない・スコープアウトするといった具合に優先順位を下げる・無視するという意思決定をする為に不可欠な思考プロセスであり、問題候補の中から本当に解決するべき問い・お題目を設定することが論点思考です。

仕事で成果を出すうえで重要になるのが、与えられた問題に対して気持ち悪いからとすぐに着手するのではなく、「その問題の背景にあるものは何か?」・「問題を解決して成しえたい世界は何か?」・「そうなった時に解くべき問題は従来の○○なのか?」という思考をする癖をつけることが論点思考の第一歩です。

私の場合、問題や課題に対して、直感に従い定量分析や定性分析を行い、とにかく走りながら考えるパターンが殆どです。本書は、この私の猪突猛進的なやり方を改めて見直す機会をくれました。本書でも言われているように視野・視点・視界の広さを持つことと狙って論点思考の場数をこなして経験を累積していくことで、いつのまにか違う自分に変革を遂げることができると考えています。以下のようにものごとを構造てきに捉え、どの論点に対して議論するのかを明確にすることの重要性を感じました。構造俯瞰や優先順位付けをするということは非連続な成長や変革を牽引する際に不可欠のお作法なのです。以下の例は、売上・利益の向上を目的に繰り広げられる議論の中で相手の論点を俯瞰して捉えられることで、議論自体を建設的なものにできるのです。

本書のPoint
問題と論点の違いは?
本書における「問題」「論点」という二つの言葉を定義は違います。では問題と論点は、何が違うのでしょうか。一般的な感覚としてはそんなに違いは無いのですが、なぜ論点という言葉を敢えて使ったかというと、二つの理由があります。一つは、世の中で問題、問題と言われていることが、本当の問題ではない。もう一つは、コンサル会社で問題解決を図るときには、実はイシューや論点という言葉をすごく大事にしているということ。「この会社の論点は何か」と、ほぼ毎日のように言っています。論点を一言でいうと、解決すべき課題、あるいは一番最優先で取り組むべき課題、あるいは根本の課題という意味で使っています。「問題」「論点」には厳密な言語上の定義の差があるわけではないのですが、問題を非常に広い概念だとすると、論点というのはその中で絶対解かなければいけない問題。つまり、最優先で取り組むべき問題のことを、論点と考えていただくと分かりやすいかと思います。

その違いについて、事例を挙げてご説明しましょう。例えば、皆さんの会社に泥棒が入ってしまったという事件が起きたとします。熊本の営業所に泥棒が入って、コピー用紙が500枚盗まれてしまった。我が社に泥棒が入ったというと、皆さん「これは問題だ」と言うのですが、私はそれは単なる「現象である」と言います。泥棒が入ったことによって何が引き起こされるのか、あるいは引き起こされたのか。コピー用紙500枚と申しましたが、仮に1000万円が盗まれてしまったとします。総売上が年間5000万円の会社だとしたら、これはもうえらいご負担です。ところが年商一兆円の会社で500枚のコピー用紙が盗まれたら、これはたぶん屁でもない話なわけです。つまり、盗まれたということ自体が問題ではなくて、何が盗まれたのか、それが会社にとってどれぐらいの影響力のある話かということをきちんと考えなければいけません。


■考えるとは?
ついでに考えるということを考えてみようw一言でいうと、論点に対してロジックを構築することを考えると言える。
■論点思考のステップ
・下記4ステップを踏むのが望ましいと本書で記述されます。
1)論点候補を拾い出す
2)論点を絞り込む
3)論点を確定する
4)全体像で確認する

■ プロセス①:論点候補を洗い出す
論点思考では、はじめに論点候補を洗い出していきます。

何か問題に直面したとき、その問題を論点だと認識して飛びついてしまうことがあります。しかし、その問題は1つの事象であって、論点とは限りません。論点(本当に解決すべき課題)を定めるためには、どんなものが論点になりうるか、リストアップする必要があります。論点候補は無数に存在します。また、論点は人(立場)によって異なり、環境によって変化することがあります。さらに、仕事を進めている中で論点が進化することもあります。

「論点候補は複数あり、自分が問題視しているものは実は論点ではないかもしれない」という前提を持つことが論点思考の始まりといえるかもしれません。その視点を身に付けたうえで、考えうる論点を洗い出していきます。


■ プロセス②:論点候補を絞り込む
次のプロセスでは、論点候補を絞り込んでいきます。洗い出した論点候補は、当たり・筋の良し悪しを基準に絞り込みます。当たりを付けるには、経験と仮説が必要です。

釣り堀で魚がいそうな場所を探すとき、すべての場所を均等に試すことはありません。「大体この辺に集まっていそうだ」という、経験を通じた勘と、「この辺にプランクトンが集まるはずだから、この辺に魚がいるはずだ」という仮説をもとに当たりを付けていくのではないでしょうか。これと同じように、洗い出した論点候補も1つひとつ、経験と仮説をもとに当たりを付けていきます。

筋の良し悪しは、以下の3つのポイントで判断します。

・解決できるかどうか
・解決できるとしても、実行可能か(リソースの問題)
・解決することでどの程度のリターンがあるか

これらを吟味したうえで、コストパフォーマンスの高い論点候補だけに絞り込んでいきます。


■ プロセス③:論点を確定する
論点候補を絞り込んでも、まだ論点を確定するわけではありません。絞り込んだ論点候補をより詳細に分析していきます。論点候補のなかから真の論点を見つけるために、論点の仮説を立てます。仮説を立てるには、以下の3つのアプローチがあります。

・①質問して相手の話を聞く
・②仮説をぶつけて反応を見る
・③現場を見る

クライアントから相談を受けたり、上司から業務の指示を受けたりしたとき、上記3つのアプローチから「発言の真意・意図・バックグラウンド」を探ることができます。見つけ出した「相手の発言の意図」をもとに、すでに絞り込んである論点候補を構造化し、論点を確定します。

論点を構造化するうえで役立つのが、ロジックツリーです。絞り込んだ論点は別個のものとして存在しているのではなく、上下の関係でつながっています。ロジックツリーはすべて綺麗に作れればこの上ないですが、虫食い状になることもあります。しかし、虫食い状でも構わないので、論点をロジックツリーに整理することが大切です。ロジックツリーで全体像を確認したうえで、より上流工程にあり、より解決できる可能性があり、より解決することによって得られる効果が大きいものを論点として確定します。

■ プロセス④:全体像で確認する
虫食いのロジックツリーを作成して論点を確定したうえで、再度全体像を確認します。この工程は念のためにおこなうもので、論点を設定する工程はプロセス③までで終わっています。論点候補をツリー上に整理することに意識がいってしまい、全体のバランスが取れていないツリーを作ってしまうことがあります。ロジックツリーから論点を確定した後、鳥の目で全体を確認し直しておくと、ズレのない論点思考ができるようになります。
■論点候補の絞り込み
論点設定をする際に厄介なのは「論点もどき」が周辺に大量に存在する点です。課題の絞り込みをしないで網羅思考に走るのは失敗事例の典型です。論点らしいものが発生した際は
①解決できる論点か?
②解決は容易か?
③解決したらどれくらいの効果があるか?
という3つの軸で優先順位付けをしていくのが望ましいとされます。

※サラリーマンとして論点設定~問題解決をするにあたっては「定性的なものではなく、比較検討可能かつ計測可能な定量的なものであり、かつ再現性の高いテーマ設定」にするのが筋の良さに繋がるとされます。
論点思考力のトレーニング方法
論点思考は、理論を理解すればすぐに身につくものではありません。長い年月をかけて場数を踏みながら、少しずつ身に付けていくものです。そのため、できるだけ早く、論点思考を鍛える方法を知り、日々鍛錬していく必要があります。ここでは、論点思考をどのように鍛えれば良いのかを解説します。


■ 問題意識を持って仕事に取り組む
論点思考を鍛えるために、常に問題意識を持って仕事に取り組むと良いとされています。論点思考は一朝一夕に身につくものではなく、長い年月をかけて身に付けていくものです。そのため、マネジメント層に昇格してから身に付けようとしては間に合いません。一般社員の頃から常に問題意識を持って仕事に取り組み、論点思考を鍛えていく必要があります。問題意識を持って仕事に取り組むことで、「上司が仕事を依頼した意図は何か」「お客様が相談してくださった意図は何か」「日々の仕事をより良くするためには何ができるか」など、論点を見つけるための種が生まれてきます。生まれた種をもとに、論点思考を繰り広げる場数を踏んでおくことで、少しずつ論点思考は身についていきます。

論点思考は、日々の小さな仕事のなかでも着実に身に付けることができます。面倒に思える目の前の仕事こそ、問題意識を持って論点思考を鍛える機会と捉えられます。


■ 視点を変える
論点思考を鍛えるには、視点を変えることが効果的です。視点を変えると同時に、視野を広げる・視座を上げる意識も求められます。視野を広げるとは、普段あまり目を向けていない方向に目を向けてみることです。自身が属する業界内では未曾有の問題と考えられるものでも、ほかの業界であれば何度も経験しているということはよくあります。視座を上げるとは、自分よりも2つ上のポジションに就いているつもりで仕事をすることです。自分の目線で見ると最適解に思えても、全体を広く見渡せば迷惑行為になってしまっている、ということは起こりえます。こうした問題には、視座を上げてみないと気付けないものです。視点を変えるとは、切り口を変えるということです。視点を変えるには、以下の10個の方法があります。

・逆から考える
・業界最下位だったらどうするか
・現場目線で考える
・両極端に振って考える
・ロングレンジで考える
・自然界からの発想
・日常生活からの発想
・アナロジーからの発想
・顧客視点で見る
・鳥の目・虫の目で考える

これらの切り口から問題を見てみることで、浮かび上がる論点が変わってきます。洗い出せる論点候補のバリエーションが増えることは、論点思考の鍛錬につながります。論点思考を鍛えるためにも、視点を変える癖を付けていってください。



■ 複数の論点を考える
論点思考を鍛えるには、複数の論点を考えることが重要です。複数の論点を考えることは、論点思考のプロセス①である「論点を洗い出す」工程に当たります。

少ない情報をもとに論点を確定してしまうと、真に解決すべき問題でないものを論点として取り上げてしまうことがあります。日々忙しいなかで論点を考えていると、目についた問題だけを見て論点として定めてしまいがちです。

論点思考のプロセスのなかで、論点を洗い出す工程は必要不可欠です。何か問題に直面したときは、論点候補を複数洗い出すことが求められます。



■ 引き出しを増やす
引き出しを多く持っておくと、論点候補を洗い出す工程で役立ちます。多かれ少なかれ、誰しも物事を考えるときに「頭のなかの引き出し」を参照します。バイアスと称して揶揄されるこもありますが、バイアスは必然的にかかるものです。頭のなかの引き出しが少ないと、洗い出せる論点候補も偏っていってしまいます。論点が偏っていると、真の論点にたどりつけないことがあります。

真の論点を見つけ出すには、できるだけ多くの引き出しがある方が望ましいです。しかし、引き出しは意図的に集めたり、覚えようとしたりしてもうまくいかないと著者は語っています。引き出しを増やすには、人の話に耳を傾けることが大切です。反論を受けると反発したくなることもありますが、相手が反対意見を持っているということは、自分の引き出しにはない考え方を得られるチャンスでもあります。人の話に耳を傾けることで、少しずつ引き出しを増やすことができます。
本書の目次

第1章 あなたは正しい問いを解いているか     
すべては問題設定に始まる/問題解決プロセスにおける論点の役割

第2章 論点候補を拾いだす--戦略思考の出発点     
論点思考の論点/論点と現象を見極める /論点は動く

第3章 当たり・筋の善し悪しで絞り込む
当たりをつける/「筋の善し悪し」を見極める

第4章 全体像を確認し、論点を確定する
プロービング(探針)を行なう/依頼主の真意を探る/引き出しを参照する/論点を構造化する

第5章 ケースで論点思考の流れをつかむ
ケース「原料費が上がっている。コストの問題 を解決してほしい」と上司から指示された

第6章 論点思考力を高めるために
問題意識をもって仕事をする/視点を変える /複数の論点を考える/ 引き出しを増やす/論点思考の効用/論点と仮説の関係

著者・出版

内田和成(うちだ・かずなり)

早稲田大学ビジネスクール教授。
東京大学工学部卒。慶應義塾大学経営学修士(MBA)。日本航空株式会社を経て、1985年ボストン コンサルティング グループ(BCG)入社。2000年6月から2004年12月までBCG日本代表、2009年12月までシニア・アドバイザーを務める。ハイテク、情報通信サービス、自動車業界を中心に、マーケティング戦略、新規事業戦略、中長期戦略、グローバル戦略などの策定・実行支援プロジェクトを数多く経験。

2006年には「世界で最も有力なコンサルタントのトップ25人」(米コンサルティング・マガジン)に選出された。2006年より早稲田大学大学院商学研究科教授。ビジネススクールで競争戦略論やリーダーシップ論を教えるほか、エグゼクティブ・プログラムでの講義や企業のリーダーシップ・トレーニングも行なう。

著書に『デコンストラクション経営革命』(日本能率協会マネジメントセンター)、『eエコノミーの企業戦略』(PHP研究所)、『顧客ロイヤルティの時代』(共著、同文舘出版)、『仮説思考』(東洋経済新報社)、『スパークする思考』(角川oneテーマ21)、『異業種競争戦略』(日本経済新聞出版社)などがある。

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