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東大の先生! 超わかりやすくビジネスに効くアートを教えてください!(かんき出版)三浦俊彦

Book Summary
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レビュー

本書を読んで自分なりのアートの定義をすることができる最高のアート指南書でした。アートは「常識をぶち壊す工夫」というのが本書の定義でした。さらにアートはそれ自体が目的であり日常と切り離された存在だという点も大きな気づきでした。能率第一の人生を歩んできた私は常に目標をもちその目標に向けて日々行動しているのだが、進めど、進めど目標は増えるばかりで目標に追われる毎日でした。しかしそれ自体が目的であるアートに向き合うことで、凝り固まった常識を壊し新しい世界を構築することができるという考え方には感銘を受けた。

今、アートが必要だと世の中で騒がれている所以かこの一冊に集約されている。AI時代の到来、ウィルス蔓延など先行きが見えない現代において必要とされているのは、これまでの常識を壊しゼロからイチを生み出すパラダイムシフトだ。アートはこのような時代だからこそ大いに役に立つのである。

本書は、アートとは何かという定義や考え方、歴史、分類、楽しみ方まで東大教授とアート初心者のライターの対話形式で優しく、楽しく解説されていた。アートは常識をぶち壊す工夫なのでエロでもグロでもあり、AIや5Gなど世の中が大きく変化し新しい常識を必要とする現代にアートは必需品なわけです。 本書では、「そもそも、アートって何?」「アートって人生の役に立つの?」といった「ふつうのビジネスパーソン」が抱く素朴な疑問を「アートの哲人」にぶつけ、「アートの謎」を明らかにしていきます。

本書のPoint
アートの3つの効用
①文化的な人間として備えておくと有利な「教養」としてのアート
②自分の常識を少しずつ入れ替えていく「刺激材」としてのアート
③鑑賞や創作行為を通じて自分に意識を向ける「人生の本番」としてのアート
 
特に③の人生の本番としてのアートについて、著者は以下のように語ります。
「忙しく生活している人が、〝アートが無駄に思える〟のは仕方のない話で、アートというのは行き止まりなんですよ。アートそのものが目的だから。だけど、能率本位の人生って、〝目的があって、それを達成するための手段があって、その手段は目的で〟というふうに、目的と手段の連鎖がダダダッと連なっている。常にゴールは未来にあるから、いつまでも到着することはない。 でもそれって〝人生の本番はいつなんだろう?〟という気が少ししませんか? 長生きして金を貯めることだけが人生の価値なんですかね? そのあとに何があるんですか? という話なんです。
アートに触れているときは「人生の本番」なんですよ。ほかの目的があるわけでもなければ、手段でもない。少なくともアート作品と向き合っている間はアート自体が目的であり、鑑賞しているその「時間」や「体験」がゴール。そこが行き止まりだからら、自分を見つめざるを得ないんです」。アートに触れる魅力はひとことで言えば「 現実から分離された世界をじっくり味わえること」 。ぜひ本書でアートの扉を開けてみてください。
デザインとアートの違い
・デザインは人の生活に入り込み、実用的であるもの
・アートは人の生活とは切り離された非実用的なもの

大辞林によるとアート(芸術)の定義は「特殊な素材・手段・形式により、技巧を駆使して美を創造・表現しようとする人間活動、およびその作品」、デザインの定義は「作ろうとするものの形態について、機能や生産工程などを考えて構成すること」と、2つの基本の定義が見られ、デザインは計画から成り立ち、アートはより多くの感情と、より少ない考えから成り立っているようにみえます。さらにアートには天性からなりうるスキルを必要とし、デザインは習得することが可能であるととれます。 大辞林 の表現を分かりやすく説明すると、デザインは目的をもって作られた作品でそれは実用的なもだし、アートは表現したいからという主観的な感情により作成されたものでそれは非実用的です。つまり実用的or非実用的の整理には納得性がある。

アートとは、アーティストの感情や感覚を表し、アートの一番の目的は表現することだと思います。目的への手段よりもはけ口であるといえるでしょう。例えばムンクは表現主義のアーティスト。彼は絵を見た人から特定の結果を求めていたわけではなく、ただ彼の感情を表現したにすぎません。一方、 デザインで表現しようとすることは、アイデアや感じ方、または意見を伝えようとすることです。伝わらなかったり誤解されるということは、そのデザインは成功したとは言えません。 これは大きな違いですね。
■アートは進化論で学ぶと面白い
「自分の知らない世界を知っていこう」という姿勢
そのようなマインドセット(気持ちや心の持ちよう)が重要なのですね。私にとってのアートは「心を癒すもの」かもしれないけれど、ある人にとってのアートは「驚きと裏切り」という衝撃的なものかもしれません。アートが「美しいもの」である必要はないし、「汚れたもの」がアートとされることもあります。さらには冷蔵庫の音やトイレの便器までも。解釈が人それぞれ。だからこそ「分かりにくい」のですね。人によって異なるのはもちろん、その時代、その時の流行り、同じ家族でも捉え方はそれぞれ。分かりにくいけれど、アートにはそれに触れるたくさんの入り口がありますね。そもそも500万年の人類史のうち、都市文明なんてたかが5000年。人間の遺伝子が変わるには全然足りません。本能の部分はそうそう変わらないですよ。こういう時代を超えた話になるとワクワクします。アートは古代から人類に欠かせないもの。遺伝子や本能に組み込まれ、小さく長く受け継がれ、そして最初からそこにあった大きな存在。
■人生の本番としてのアート
仕事を効率よく終わらせる、お金を稼ぐ、子どもをいい学校に入れる。など目標に向かって最短で走ることが「善」で、それ以外の無駄なことは「悪」とみなす傾向があると先生はおっしゃっています。確かに効率的とか生産性とか、時間を無駄にしないとか、そういう言葉をビジネス書ではよく見かけますし、子どもの学級通信の中でさえ見かけることがあります。
忙しい現代人こそたまに立ち止まって「私は今ここにいる。私はこういう経験をしている」と意識を自分に向けてあげることが大事だ。仕事や育児や人付き合いで忙しい現代人が、「今私はここにいる」「今私は生きている」と意識する時間は日常の中にどれだけあるのでしょうか。私が言葉にしたいと思っていたのはこのことでした。結果だけを思い求めて仕事をしていたとき、私は生きている心地がしませんでした。誰かと話をしていても、頭の中はどこか違うところにある。将来に対する不安、過去の後悔。今目の前にあることを心から楽しんだりすることは、なかなか難しいことでした。そして「絵を描いているとき」「じっくり絵を鑑賞しているとき」は何も考えずに没頭できたことを思い出したにもかかわらず、活動内容として人に伝えたい時にその感覚を言語化できず、モヤモヤしていたのです。
そこでアートを学ぶ意味が一つ言語化できました。
「今を生きている」感覚を取り戻すためにアートに触れる。
です。能率第一の人生は手段と目的の連鎖でゴールが見えない。アートはそれ自体が目的であり、アートに触れているときは、「人生の本番」なんですよ。アートだからこそ「現実から分離された世界をじっくり味わえる」。そして「人生の本番」をどれだけ経験してきたかが人生の価値ではないか、という言葉に衝撃を受けました。
■アートと哲学
アートは太鼓の昔からあり、その発展の過程で「これは役に立つ!」と思われた流派に「デザイン」「建築」「まんが」という具体的な名前が付けられ、アートから分離して行った。つまりアートはその残骸である。実は哲学もまったく一緒らしい。昔は数学も物理学も心理学も天文学もみな哲学だった。それが明確な知識や答えが得られた途端に「学問」として独立して名前がついた。まだ名前がつけられない「ナゾなもの」が哲学として残った。
哲学とアートは、両方ともわけのわからないものとして残ったものだった。それぞれに関連性があるとは全く思っていなかったのです。なんだか心が苦しい時に哲学の本を読むと、自分の悩みなんてちっぽけに見えて、心のサイズがほんの少し大きくなるような感覚がありました。感覚的に生きていることに「楽さ」を感じるのは私だけではないと思いますが、今回の本で明らかになった「アート」と「哲学」の共通点。
■アート鑑賞のススメ
アート鑑賞の時間自体が苦しくなる理由は現実と切り離されていないからです。現実世界の日常の流れのまま突然「鑑賞」が始まれば、多少興味がある人だって、なかなか入り込むのは難しいのですよね。 鑑賞力を競い合うためにあるものではなく、「自分を客観視できる」ことにあるのですから、その効能を最大限に受け取るためにも、いかに現実から切り離した環境に持っていくか、が大切であることを学びました。

アートと向き合った時の2種類の反応
1 作品がつくる世界にのめり込んで自分をなくす
2 作品を見ている自分の感受性を確かめながら芸術作品に対峙する
本書の目次

1日目 いま流行りの「アート」って何?

2日目 美術だけじゃない!アートの種類と価値はいろいろある

3日目 【教養としてのアート】アート史は進化論で学ぶと超面白い!

4日目 【刺激剤としてのアート】現代アートの魅力を教えてください!

5日目 【人生の本番としてのアート・前編】アート鑑賞のすすめ

最終日 【人生の本番としてのアート・後編】全員がアーティストになる時代

著者・出版

三浦 俊彦 (みうら としひこ )


1959年生まれ。東京大学文学部美学芸術学専修課程卒業。
現在、東京大学文学部教授。専門は美学・形而上学。
大学で教えながら小説と哲学書を出版し、匿名でさまざまな芸術活動を行う。
美術、音楽、文学の純粋芸術から映画、アニメ、格闘技、パラフィリアに至るまで、「アート」に関係するすべてを愛し、哲学的な視点で考察してきた「アートの哲人」。
著書に『虚構世界の存在論』(勁草書房)『シンクロナイズド・』(岩波書店)、『論理パラドクス──論証力を磨く99問』(二見書房)、『論理学入門』(NHK出版)、『下半身の論理学』(青土社)、『エンドレスエイトの驚愕──ハルヒ@人間原理を考える』(春秋社)など。

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