先ず、解像度とは、元々は画像を表現するピクセルの密度の事です。例えばハートを表現するのに、10×10と20×20では、後者の方がより精彩に表現できます。このように数字が大きいほど、解像度が高く、はっきりと見えるという事です。これから転じまして、最近ではビジネス文脈でもよく使われるようになってきていまして、対象に対する理解度や思考の明晰さを表す言葉として、「解像度が高い」「解像度が低い」などと言われたりします。「解像度が低い」と言われてしまう例として、本の中でもいくつか挙げられています。
・物事への理解が足りていないように見える。
・議論がふわっとしていて地に足がついていない
・具体的な数字などがあげられず、説得力が弱い
・抽象論だけで、具体例が挙げられない
では、逆に「解像度が高い」と言われる人はどのような視点を持っているでしょうか?それは、「深さ」「広さ」「構造」「時間」の4つの視点です。1つの事象をこれらの視点で分析し中でも重要なポイントが特定できている状態が「解像度が高い」という状態になります。
本書では、解像度が高い人が持っている4つの視点を以下のように紹介しています。
1. 深さ
原因や要因、方法を細かく具体的に掘り下げられているか、という視点です。
「深さ」を持ち合わせている人は、筋肉の大まかな位置だけではなく、種類や、それぞれがどのような特徴を持つかまでを正確に把握できています。
2. 広さ
考慮する原因や要因、アプローチの多様性を確保できているか、という視点です。
「広さ」を持ち合わせている人は、単に筋トレを提案するだけでなく、食事や休息、それ以外にもトレーニングを補助するトレーニングギアの選定といった幅広いアプローチを考慮できています。
3. 構造
「深さ」や「広さ」の視点で見えてきた要素を、意味のある形で分類し、それぞれの関係性や重要度を把握できているか、という視点です。
「構造」を持ち合わせている人は、様々なソリューションの中から、目的達成に向けて最も効果のあるものを優先順位付けできます。
4. 時間
時系列での関係性の変化や、プロセスの流れを捉えられているか、という視点です。
「時間」を持ち合わせている人は、筋肉がまだ付いていない時期はどういったトレーニングメニューが良いか、徐々に付いてきた時にはどうトレーニングを変えるべきかなど、時間的な変化に応じてメニューを提案できます。
●本書のPoint |
■内化と外化を繰り返す 解像度が低い時は往々にして深さが足りないことがほとんどです。そこで本書では、 「深さ」を高めるためには、「内化」と「外化」を繰り返しましょう、とあります。深めるというと情報を集める「内化」がイメージされがちですが、「外化」、つまり書く・話す・発表するなどして、自分の中にあるものを整理するプロセスも同時に必要です。 |
■ 主に「深さ」が足りていないことから生まれる症状:具体性の薄さ ① 5W1H が言えない 課題の解像度が粗いときには、その課題が 起こる文脈や課題の 5W1H が詳細に言えな い場合が多い。 誰がいつどこでそのような課題に接してい て、今どのようにそれを解決できているか が重要。 ② 具体例が言えない 一つも具体例が言えなかったり、顧客のス トーリーを詳しく言えなかったりするケー スが該当。 こうならないためには、多くの具体例の引 き出しを持っておく必要がある。 また顧客の行動がした理由がその文脈が想 像でしかない場合も、具体例の乏しさに起 因することが多い。「たとえば〇〇さんの 場合は」と言えなければ要注意。 |
■ 主に「構造の把握」や「深さ」が足りていないことから生まれ る症状:説明の安易さ ① 説明が長い、冗長 課題や解決策について、「長く説明しなけ れば相手に伝わらない」ときは、まだ解像 度が低いと言える。仮に説明の具体性が高 くても、説明が長い場合はまだ構造を把握 しきれておらず、重要なポイントが分かっ ていない。 解像度が高い状態は構造を把握できている ので、その構造に基づいて明確かつ簡潔に 問題を言える。 ② 安易な解決策 「情報が足りていない」から「情報メディ ア」や、「人がいない」から「人のマッチ ング」など。 その課題が残っているには理由がある。そ の構造が把握できていないか、課題の分析 の深さが足りない |
■ 競合に対しての認識の甘さも、「深さ」と「広さ」と「構造把 握」の粗さによる一つの症状: 競合に対する認識の粗さ |
■ 主に将来に対する「広さ」と「深さ」が足りていないときの症 状: 計画の粗さ ① 目標が違う・曖昧 達成するべきところが分かっていない、理 由が言えないケース。また短期的目標と長 期的目標の関係性を明確に言えない。 たとえば最初は継続率を追うべきなのに、 最初から MAU などのグロースを狙ってい る場合など。 またどの程度達成すれば成功と言えるのか が曖昧な場合もある(数値目標を設定でき ていない)。 ②目標までの行動計画の曖昧さ 目標を達成するための行動計画が適切なス テップに分解されていない、もしくは最短 で行けるルートを選んでいない。 原因は単に面倒くささを避けている場合も あれば、ほかの打ち手を知らない(狭い選 択肢しかない)こともある。 |
第1章 解像度を上げる4つの視点
第2章 あなたの今の解像度を診断しよう
第3章 型を意識しながら、まず行動からはじめて、粘り強く取り組み続ける
第4章 課題の解像度を上げる―「深さ」
第5章 課題の解像度を上げる―「広さ」「構造」「時間」
第6章 解決策の解像度を上げる―「広さ」「構造」「時間」
第7章 実験して検証する
第8章 未来の解像度を上げる
馬田隆明 (Takaaki Umada)
東京大学 FoundX ディレクター
University of Toronto 卒業後、日本マイクロソフトを経て、2016年から東京大学。東京大学では本郷テックガレージの立ち上げと運営、2019年からFoundXディレクターとしてスタートアップ支援とアントレプレナーシップ教育に従事する。スライドやブログなどで情報提供を行っている。著書に『逆説のスタートアップ思考』『成功する起業家は居場所を選ぶ』『未来を実装する』。
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