レビュー
伊集院静のエッセイ集『大人の流儀』に、特別なことは何も書かれていない。叱らなければならないときは叱れ、危険を察知したらただちに対処せよ、空気よりも流れを読め。「流儀」というよりも、「あたりまえ」のこと、「常識」である。読者も「ええっ? そうなの?」とは思わないはずだ。
<以下のようなシチュエーションでの大人の振舞が紹介>
大好きな人に手紙を書きたくなったとき。
上司に意見をしなければならないとき。
人を叱らなければならないとき。
大切な人を失ってしまったとき。
嫌でもケンカをしなければならないとき。
とてつもない悲しみに包まれたとき。
こんなとき、大人ならどう考え、どう振る舞うのだろう。
大人の流儀はそれぞれ違ってよい、それでも伊集院静さんの生き方・考え方が好きで共感できる部分が多い私には大いに刺激を頂いた一冊であった。自分なりの大人の流儀を見直す機会を与えてくれる貴重な一冊である。
●本書のPoint |
■伊集院静の主張 ・読書の大切さ 読書を通して自分の知識を増やすこと、そして見識を広げることにより、今まで見えてなかった部分が見えるようになったりします。 ・ 葬儀中は故人ことだけを考える 葬儀に出席したら大人の男はどんな顔をしておくのか。式の長い短いはあるが、その間中、故人との思い出をずっと思い起こしておけばいい。嘆くもよし、笑うもよし。それが人を送ることだ。 ・人生の不公平さを受容する 人生というものは総じて割には合わないものだ。そういうことを平然と受け入れて生きるのが大人の男というものだ。 〝理不尽がまかり通るのが世の中だ〟ということを早いうちに身体に叩き込むことだと思っている。 ・妄想して夢を見続ける事 妄想しなくなったということは、それだけ夢を見なくなったということだろう。 ・愛国心の基礎は家族であり故郷 彼等を厳しい訓練に耐えさせているのは愛国心である。これに匹敵する強靭な精神というのは古代から見つからない。愛国心の基礎は家族であり、故郷であるからだ。 |
本書の目次
春(大人が人を叱る時の心得;不安が新しい出口を見つける ほか)
夏(「ゆとり」が大人をダメにする;敗れて学ぶこともある ほか)
秋(妻と死別した日のこと;生まれた土地、暮らしている土地 ほか)
冬(大人にも妄想が必要だ;女は不良の男が好きなんだよ ほか)
著者・出版
伊集院静[イジュウインシズカ]
1950年山口県防府市生まれ。72年立教大学文学部卒業。81年短編小説『皐月』でデビュー。91年『乳房』で第12回吉川英治文学新人賞、92年『受け月』で第107回直木賞、94年『機関車先生』で第7回柴田錬三郎賞、2002年『ごろごろ』で第36回吉川英治文学賞をそれぞれ受賞。作詞家として『ギンギラギンにさりげなく』『愚か者』などを手がけている。
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