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吾人の任務(東洋経済新報社)堀義人

Book Summary
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レビュー

グロービス学長の堀義人さんが書かれた本書は、堀さんの自伝です。

本書はよくある自伝のように成功体験がツラツラと書かれている本ではありません。 著者が「見て、聞いて、感じたもの」がそのまま書かれていました。失敗話や苦労話、紆余曲折する話や、やっと小さな成功をおさめた話など、ただただありのままに記述されています。私は、こうした等身大なストーリーが共感を覚えました。

本書のキーフレーズは「可能性を信じる」という信念です。起業の決意しかり、企業理念としてのグロービスウェイの策定しかり、社会認知型ビジネススクールへの挑戦しかり、すべては「可能性を信じる」が起点になっていそうですね。可能性を信じながら、挑戦を重ねて、紆余曲折を繰り返す。 このサイクルこそが、「自分が為すべきこと」を見つける一番の近道なのかもしれません。

「可能性を信じれる人と、信じれない人の差」はどこにあるのでしょうか?
スキルセット × マインドセット の枠組みで考えてみると、スキルセットの観点からは、能力が足りないから、可能性を信じるまでに至れないというケースが考えられます。つまりスキルは、学びの習慣を持って、継続的にスキルアップを図ることができれば解決できそうです。一方、マインドセットの観点からは能力も知識も人一倍あるのに、可能性を信じれないとなると、原因は自己肯定感の低さが影響していると思われます。マイナスマインドに対しては「小さな成功体験」を積み重ねていくことが重要になると解釈しました。つまり纏めると、可能性を信じるには、スキル向上のために学習を続けながら、小さな成功体験を積みかさね自己肯定感を高めることが肝要であるわけです。

本書のPoint 
リーダーの3つの必須能力
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①ビジネスフレームワーク:様々なビジネスにかかわる定石(知識力)
②コンセプチュアルスキル:的確な状況分析をし本質を捉えて行動する力(考える力)
③ヒューマンスキル:人間的魅力と伝える力(巻き込み・引っ張り力)
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堀さんが考えるリーダーの役割は、まずビジョンを描き戦略を作って、結果に責任を負うこと。次に企業を取り巻くステークホルダーとコミュニケーションをして強固な関係を構築すること。最後に組織文化を形成し、理念を浸透させ従業員をやる気にすること。そのためには、上記に記載した3つの能力が必須となります。
創造と変革に必要な5つのこと

①自分の可能性を信じる
⇒創造と変革は意識の中から生まれる。自分の可能性を信じ、常識を否定し疑い、常識をぶち破り、青天井に広げていく、自分の頭で考える、他人がどう言おうが関係ない。 Think out of box(枠を超えて自由な発想で考える)の精神で、自分の中で勝手に設けてしまっている制限を取り払い、自分がどうありたいかを考える。Think out of boxで天井をなくして志を考える。

②周りを巻き込む
自分の考えを論理構築して、色々な形でコミュニケーションして組織を構築。ステークホルダーの満足度を高める(ステークホルダーサティスファクション)。社員満足から始まり、顧客満足に繋がり、株主満足に繋がる。 一人で出来ることは限界がある。志(ありたい姿)が明確になれば、ステークホルダー関係性を作ってコミュニケーションしながら良いプロダクト・サービス、良い組織・チームを作る。

③理念・ビジョン・ミッションを組織に注入する
理念・ビジョン・ミッションをステークホルダーに伝え、組織を強固なコミュニティにする。 志を実現するために、これまでの経済的な関係から理念、ビジョン、ミッション、共鳴、目的意識を明確にして強固なコミュニティに変革する。

④勝ちやすいポジション確保する
規模の経済性、範囲の経済性、スピードの経済性、コミュニケーションの経済性、グローバルの経済性を駆使した戦略 組織は勝たなければステークホルダーが不幸になる。だから志を実現するために戦略を駆使して勝ちやすいポジションをとる

⑤自分の能力を伸ばす
リーダーの器が小さいと、組織はがたがたしてしまう。リーダーの器が大きいと、どんどん大きくなっていく。 組織を成長させたいのであれば、トップの器を大きくすればよい。自分の器を大きくすれば、組織は成長する。リーダーが一生懸命学ぶ、自分の能力をあげようとすると、多くの人に伝搬する。
使命を考える契機となった祖父の「吾人の任務」
父方の祖父、堀義路は東京帝国大学の応用化学科を出た後、慶応義塾大学理工学部の前身である藤原工業大学の教授となった。戦後は電力中央研究所理事や通商産業省の産業構造審議会委員などを務め、1971年、出張先の米国で小型ジェット機が墜落、逝った。
東京都港区の青山葬儀所に集まった人の多さにはびっくりした。祖父の友人らが祖父の遺稿・追悼集をまとめた。書名の「吾人の任務」は祖父が25歳のころに書いたエッセーの題名からとられていた。

天才科学者ポアンカレの「科学の価値」から言葉を引用した祖父のエッセーは、小学生の僕には意味不明だった。今、読んでも難解な文章だが、祖父は20代半ばから自分の使命を明確に意識し、その後の人生を歩んでいた。母方の祖父の真鍋梅一は愛媛県議を5期務めた四国の政治家。その影響なのか、高校時代には東大法学部入学と政治家への関心もあった。しかし、国語の成績がなかなか上がらず、3年生の秋に理科系に転じた。姉から「東大はダサい」と言われて、京大工学部へ。父方の流れである研究者を目指したわけだが、実験が全然、性にあわない。この道も結局、断念した。

高校時代にオーストラリアに1年間留学したこともあって、「世界を駆ける商社マンになろう」と思い、住友商事に就職した。そして祖父が英ケンブリッジ大学に留学したのと同じ27歳で、米ハーバード大ビジネス・スクール(HBS)に入学した。偶然ではない。遺稿集の巻末にあった祖父の長い年譜。彼の生きた道のりと比較しながら、「負けてはいけない」と言い聞かせてきたからだ。
企業家として社会に価値を創造し、様々なリーダーの英知を集めて社会変革に貢献する――。僕の任務だ。生きる道を固め始めたのはHBS修了の直前だった。40歳の時に執筆した自著は、出版社の反対を押し切り、祖父の遺稿集と同じタイトルにした。
堀学長の「吾人の任務」
①経営教育を通して意識の高い人や企業を育成し創造と変革を行う
②ベンチャーキャピタルを通して日本や世界に新たな価値提供
③出版を通して経営の知恵を終結させ世の中に知恵を提供
④オピニオンリーダーの立場でメディアやカンファレンスで発言し日本とアジアの立場を代弁
⑤将来的には、財界、国際機関と積極的に関与し社会課題を解決


お金のため、反骨精神でベンチャーを志したわけではない。あくまでも自分の夢と使命感に従って、社会に価値を想像する起業家になることが吾人の任務ときづいたことにより、堀さんは一起業家としての生き方を歩み始めたのです。
本書の目次

第1章 ハーバード・ビジネス・スクール(HBS)への留学
第2章 吾人の任務
第3章 創業と歴史
第4章 グロービス・ウェイ
第5章 MBAを創る

著者・出版

堀 義人(Yoshito Hori)


グロービス経営大学院 学長
グロービス・キャピタル・パートナーズ 代表パートナー
京都大学工学部卒、ハーバード大学経営大学院修士課程修了(MBA)。
住友商事株式会社を経て、1992年株式会社グロービス設立。1996年グロービス・キャピタル設立。2006年4月、グロービス経営大学院を開学。学長に就任する。若手起業家が集うYEO(Young Entrepreneur’s Organization 現EO)日本初代会長、YEOアジア初代代表、世界経済フォーラム(WEF)が選んだNew Asian Leaders日本代表、世界の成長企業(GCC)の共同議長、米国ハーバード大学経営大学院アルムナイ・ボード(卒業生理事)、米国ウィルソンセンターのグローバルアドバイザリーカウンシル等を歴任。2008年に日本版ダボス会議である「G1サミット」を創設し、現在一般社団法人G1の代表理事を務め、日本のビジョンである「100の行動」を執筆する。2011年3月大震災後に復興支援プロジェクトKIBOWを立ち上げる。現在一般財団法人KIBOWの代表理事を務め、KIBOW社会的インパクトファンドを組成・運営している。2016年に水戸ど真ん中再生プロジェクトを始動。同年4月に茨城ロボッツ、2019年11月に茨城放送のオーナーに就任。 2022年1月、 ROCK IN JAPAN FESTIVAL が千葉に移転することが発表された2時間後にLuckyFesを立ち上げ、総合プロデューサーを務める。いばらき大使、水戸大使。5男の父親。著書に、『創造と変革の志士たちへ』(PHP研究所)、『吾人(ごじん)の任務』 (東洋経済新報社)、『新装版 人生の座標軸 「起業家」の成功方程式』(東洋経済新報社)、『日本を動かす 100の行動』(共著、PHP研究所)、『創造と変革の技法』(東洋経済新報社)等がある。

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