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ベンチャーキャピタルの実務(東洋経済新報社)福島智史

Book Summary
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レビュー

25年以上前からグローバルな機関投資家の資金を運用し、メルカリやスマートニュースなど複数のユニコーンを支えてきた国内最大級の独立系VC、GCP(グロービス・キャピタル・パートナーズ)」が培ってきた実践的アプローチを書籍化。

本書は、1996年の設立以来、国内のハンズオン型ベンチャーキャピタルとしてリーダー的地位にあるグロービス・キャピタル・パートナーズ(GCP)のスタッフ陣が、その活動・実務の詳細についてまとめたものです。「はじめに」でも書かれているように、ベンチャーキャピタル(以下VC)にもいくつかのタイプがあるため、これが唯一のVC実務の在り方というわけではありませんが、リーダー的VCがどのように考え、日々活動しているかを知ることは、多くの関係者の参考になるはずです。

ほとんどの人にとってVCやそこで勤務するキャピタリストの仕事は謎に包まれているでしょう。VCというものが、ベンチャー企業に投資をし、IPOや売却といったエグジットによってリターンを得ることくらいは知っているかもしれません。しかし彼らがどのように投資先を見つけているのか、あるいは実際に投資するか否かをどう決めているのか、企業価値の算定をどのように行っているのか、投資先のベンチャー企業に具体的にどのような支援を行っているか、エグジットに際してベンチャー企業とどのような議論をしているのか、といったことに関する具体的なイメージはなかなか湧かないでしょう。ましてやファンドの運営についてのイメージが湧く人はほとんどいないはずです。こうしたことを丁寧に説明しているのが本書です。

本書ではまず、プロローグの「ベンチャーキャピタルとは」に続き、1つの主要活動ごとに1章(Chapter)、計6章を割いてそのポイントを解説しています。適宜入るコラムも面白いです。「GCPのキャピタリストが<面白い>と感じる起業家とは」あるいは「なぜ業績よりも人を重視して投資すべきなのか」といったタイトルだけでも、読みたいと感じる人はいるのではないでしょうか。 また、過去にGCPが投資したベンチャー起業家(メルカリ会長の小泉文明氏など)へのインタビューや、箸休め的な「VCの1日」といったミニコラムなども、VCの活動を知る上で参考になります。

本書のPoint
■ベンチャーキャピタル(以下、VC)とは?

・VCの始まり
VCは米国で第二次世界大戦後の1950前後に誕生した。その背景には新たな技術を活用しビジネスを展開する起業家が現れたが、銀行は担保がないと資金を貸してくれないため、VCが誕生した。近代VCの祖であるアメリカン・リサーチ&ディベロップメントがこの時期立ち上がった。日本においては、1963年に制定された中小企業投資育成株式会社法によりベンチャー企業に長期的かつ直接的に資金提供する活動がスタートした。民間ではKEDやJAFCOが設立された。1994年のガイドライン変更により、これまでは独占禁止法により投資家が出資先企業に取締役を送ること禁じられていたが、VCから取締役を送り込んで積極的に経営支援に乗り出すハンズオンスタイルが可能となった。日本初のハンズオン型VCがGCPである。なお、1997年の商法改正により特別価格で自社株式を購入できる権利を付与するストックオプション制度が導入された。これにより短期的には高額な報酬をだせないベンチャー企業に優秀な人材を呼び込む基盤が整った。このような流れで日本のスタートアップ市場も活気づいているが、年間15兆円規模のVC投資が実施されているが、まだ日本は5000億円規模と大きく水をあけられている。


・VCのビジネスモデル

VCのビジネスモデルは、LPから資金を集め、企業に出資して株式を保有して、将来的に持ち分を売却することで利益を獲得する。VCファンドの投資サイクルとしては、10年を満期とするケースが一般的。前半5年間はスタートアップに投資し、後半は投資先企業の成長を支援して5年間で投資回収する。

・VCのタイプ
独立系VC:特定の母体や系列を持たず外部から資金を受託して運用する
金融系VC:金融機関を母体とし、融資と出資を連動させる。直近では17%が緊急系VCが占める。
事業会社系VC:事業戦略の一環でベンチャー投資を行う。米国ではインテルやグーグルが有名
政府系大学系VC:公的資金を裏付けにベンチャー投資を行う政府系VCも存在する。


・VCのバリューチェーン

図からもわかる通り、VCには大きく6つの主要な活動があります。それぞれにさらに詳細にブレークダウンされた業務があり、ノウハウの蓄積がなされます。

①ソーシング:投資候補を発掘し、投資検討に進めるための活動
②ディーデジジェンス:ソーシングした投資候補先の成長仮説の構築・検討と出資意思決定
③経営支援:ハンズオン支援として経営アドバイス、営業協力、人材採用支援など様々
④エグジット:VCファンドがその持ち分を売却するイベント
⑤ファンド管理:投資先との連携、LPへの定期報告など様々
⑥ファンドレイズ:ファンドの組成業務とIR活動
本書の目次

Prologue ベンチャーキャピタルとは
Chapter1 ソーシング
Chapter2 投資検討
Chapter3 経営支援
Chapter4 エグジット
Chapter5 ファンドマネジメント
Chapter6 ファンド管理
Chapter7 ファンドレイズ
Chapter8 新しい潮流
Chapter9 ベンチャーキャピタリスト十二訓

著者・出版

著者: 福島 智史(ふくしま さとし)

グロービス・キャピタル・パートナーズ パートナー
ドイツ証券株式会社 投資銀行統括本部にて、M&Aアドバイザリー並びに資金調達業務に従事。2014年4月グロービス・キャピタル・パートナーズ入社。
東京大学経済学部卒。グロービス・キャピタル・パートナーズ(GCP)にて、ヘルスケアを始めとする産業変革領域への投資・支援に取り組む。主な投資先にメドレー、AIメディカルサービス、KAKEHASHI、ホワイトプラス、よりそう等。
GCP参画前はドイツ証券にてクロスボーダーM&A、資金調達アドバイザリー業務に従事。東京大学経済学部卒。

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