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ヤフーの1on1(ダイヤモンド社)本間浩輔

Book Summary
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レビュー

Zホールディングス(旧ヤフー)が好調な理由が1on1にあるのではと思えるほど、社長も含めて会社として1on1にコミットしている印象をもちました。

2012年、宮坂氏への社長交代による新体制発足と同時に始まった1on1は、ヤフーの組織を活性化と間違いなく関連しています。毎週1回、原則30分を部下とのコミュニケーションに充てる、たったそれだけのことが、実は難しい。では、ヤフーはどうやって制度として定着させ、風土を変えたのか、本書ではその1on1のメソッドが公開されています。

1on1の目的のうちの中心の一つは「社員の経験学習を促進するため」です。加えてヤフーの人材育成の基本方針である「社員の才能と情熱を解き放つ」ための手段の一つと考えます。経験学習とは、文字通り経験から学ぶことに重きを置く人材育成の方法で、職場での経験を学びに換えて、次の仕事経験に活かしていくという考え方です。 人の成長を決める要素の比率と言われていて、
 7割は「仕事経験から学ぶ」
 2割は「他者から学ぶ」
 1割は「研修や書籍から学ぶ」
ことされており、殆どが仕事経験から学ぶわけです。 しかし、単に経験を重ねるだけで、学びが深まるかというと、それほど単純ではないわけです。ヤフーはデービッド・コルブの経験学習サイクルを採用しています。 人が経験から学ぶときは、「具体的経験→内省(振り返る)→教訓を引き出す(持論化、概念化)→新しい状況への適用(持論・教訓を活かす)」というサイクルとたどります。


その振り返りを行う場が1on1で、ヤフーはこのデービッド・フルブの経験学習サイクルを回すキッカケを1on1によって与えているわけです。「今日は何を話そうか」という切り出しは、ヤフーの1on1の考え方を表す象徴的な一言です。この切り出しの要諦は、部下がテーマを決めることです。 なぜなら、1on1は部下のために行うものであり、上司が聞きたいことを聞く場ではないからです。それが経験学習サイクルに繋がり、社員の成長が会社の継続的な成長に繋がるという考えにもとづいています。

本書のPoint
社員の才能と情熱を解き放つとは?
1on1はヤフーにおいて社員の才能と情熱を解き放つ手段となります。効果的な1on1を行うためには「社員の才能と情熱を解き放つ」ことの本当の意味を理解しておく必要があります。

才能と情熱を解き放つために、考える必要がある3つのことを挙げられています。
 ・ いろいろな仕事を経験する
 ・ 上司や職場の仲間から観察してもらう
 ・経験を振り返りながら自分の職業感について考える
たしかに、いろいろ経験することで、向き不向きなどが、わかりそうです。1on1では、自分の興味のある仕事や、その可能性について、話をすることができます。 ヤフーでは、「アサインよりチョイス」という言葉があるようです。 会社が仕事をアサイン(割当)するのではなくて、自らチョイス(選ぶ)していくようです。 さらに、1on1は、コミュニケーションのきっかけになります。 とくに、普段話しにくい、「苦手な上司」、「気の合わない苦手な部下」とコミュニケーションをとるには、よいきっかけになりそうです。 コミュニケーションとは、仲が良い状況ではなく、ヤフーでは、「自分の意図が相手に伝わって、相手が意図に沿って動いてくれること」と定義されています。つまり社員の才能と情熱を解き放つために必要となる3つ考えを繋げる場所・手段が1on1ということを理解しておくことでより効果的な1on1になりそうですね。
1on1のルール

ヤフーの1on1ルールを見てみましょう。
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 ・1対1で行う
 ・相手のために行う
 ・トップダウンで行う
  (役員と部長、部長と課長、課長とメンバーのように全員行う)
 ・週に1回30分
 ・メンバーの意見を十分に聞く
 ・次のアクションを決める

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<留意するポイント>
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・状況や進捗確認の場ではない
・上司の考えを先に言わないメンバーの話を遮らず、考えをすべて聞く
・メンバーの話から勝手に想像してもアドバイスをしない
・次の行動を上司が決めてはいけない決めすぎると上司依存になる
・質問するときはクローズドクエッションは避け、オープンクエッション
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<問いかけ例>
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・今週、良かったことは何か?
・ 今週、悪かったことは何か?
・ 今週、経験したことは何か?
・ 今週、学んだことは何か?
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ヤフーが目指す人材開発企業

ヤフーは人財開発企業を目指しています。理由は、働いた分、お金を払うのが会社ではなく、社員と会社はパートナーであり、会社は社員を成長させ、社員が成長することで会社が伸びることを目指しています。今後は、賃金も雇用も保証される時代ではありません。一人ひとりがキャリアを考え、道を切り開いていく、会社はそれを手助けしながらともに成長することが大切です!
本書の目次

第1章 マンガで学ぶ1on1ミーティングの基本
(1on1ミーティング―上司と部下の対話;部下に十分に話をしてもらう ほか)

第2章 1on1とは何か
(ヤフーが1on1に取り組む理由;1on1の効果 ほか)

第3章 1on1における働きかけ
(信頼関係の構築;学びの深化 ほか)

第4章 1on1導入ガイド
(ヤフーが実践する仕組み;1on1のFAQ)

第5章 ヤフーが人財開発企業を目指す理由
(組織と働く個人のかかわり方のギャップを修正する)

著者・出版

本間 浩輔氏(ほんま こうすけ)


Zホールディングス株式会社 シニアアドバイザー
パーソル総合研究所取締役(社外)
立教大学大学院 経営学専攻リーダーシップ開発コース 客員教授
法政大学大学院イノベーション・マネジメント研究科 兼任講師

1968年神奈川県生まれ。早稲田大学卒業後、野村総合研究所に入社。コンサルタントを経て、後にヤフーに買収されることになるスポーツナビ(現ワイズ・スポーツ)の創業に参画。2002年同社がヤフー傘下入りした後は、主にヤフースポーツのプロデューサーを担当。2012年社長室ピープル・デベロップメント本部長を経て、2014年より執行役員。同社においてさまざまな人事制度改革に取り組んでいるとともに、戦略人事プロフェショナルの実践家として社内外において広く活動。2014年、日本の人事部「HRアワード」最優秀賞(個人の部)受賞。神戸大学MBA、筑波大学大学院教育学専修(カウンセリング専攻)、同大学院体育学研究科(体育方法学)修了。

主な著書
『会社の中はジレンマだらけ 現場マネジャー「決断」のトレーニング』光文社新書
『ヤフーの1on1』ダイヤモンド社
『残業の9割はいらない』光文社新書

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