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次世代通信5G革命 (東洋経済新報社)

Book Summary
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レビュー

5Gによって私たちの生活がどう変わるのかを分かり易く網羅的に纏めているのが本書である。自動運転や工場IoT化など個別で5G特集されたものは多いが、本書は5Gに関わる産業が全方位的に解説されているところがメリットである。

ラグビーワールドカップの日本開催に合わせ、NTTドコモが会場内で5Gを使ったマルチアングルの映像視聴環境を観客に提供するなどいよいよ5Gが私たちの生活の一部に溶け込んでいるようになってきた。ただし、これらはまだプレ商用化の段階。新規参入の楽天モバイルを含め、各通信キャリアは2020年以降に本格商用化を始めようとしている。「超高速」「超低遅延」「多数同時接続」という特長を持つ5Gは、さまざまな産業を根底から変える可能性がある。

超低遅延によって、高い安全性が求められる自動運転ではリアルタイムの通信が可能になり、工場におけるロボットの遠隔制御や遠隔医療も実現できる。多数同時接続は、家電や自動車など身の回りのあらゆる機器がつながるIoT化を促進する。通信速度においても現在の4Gの10倍になり、2時間の映画を3秒でダウンロードできるなどの進化がある。総務省は5Gによる経済効果を約47兆円と試算しており、英調査会社のIHSマークイットは世界で約12兆ドルになると予測している。

本書のPoint( 5Gで未来はこうなる )
動画配信
大手企業がしのぎを削る動画配信サービスは、5G時代のキラーコンテンツと目される。同時に、広告の動画化も進む。例えば 街頭のデジタルサイネージやタクシー内に設置されているディスプレーで、センサーなどによってその場にいる人にパーソナライズされた動画が表示される。
クラウドゲーム
「クラウドゲーム戦争」勃発、グーグルがソニーを猛追、 家庭用ゲーム機も高性能のパソコンも必要ない。5Gの普及でゲーム業界は新たな局面を迎える。 クラウドゲームサービス「Stadia(スタディア)」を発表した。 サーバー上でゲームが動くため、専用の機器を買わなくても、手持ちのスマートフォンやパソコンを使い高性能のゲームをどこでも楽しむことができる。
自動運転
渋滞や交通事故を劇的に減少させると期待されている自動運転車。今や自動車メーカーだけでなく、さまざまなベンチャーや大学の研究室などが開発に取り組んでいる。 リアルタイムの道路状況をドライバーに映像で送ったり、遅延なく無人車を遠隔制御したりできる。これによって事故や渋滞が減り、車内空間の快適さも増す。トラック隊列走行やタクシー無人化など様々な企業で様々な実用化に向けた試験が行われている。
スマート工場
ロボットの普及やセンサーの活用により、製造業の省人化やIoT導入が進んでいる。5Gはその流れをさらに加速させると期待されている。 5Gの活用に前のめりなのが、ドイツ企業だ。自動車メーカーのアウディは2018年8月から、スウェーデンの通信機器大手・エリクソンと、自社の製造プロセスでの5G活用について提携を結び、実証実験を行っている。 ケーブルを使わず無線で産業用ロボットを制御。製造ラインのレイアウト変更が柔軟にできるようになるほか、IoTでより広範囲のデータ収集がしやすくなる。
通信キャリアの覇権争い
通信速度の向上のみならず、超低遅延、多数同時接続という、4Gまでにはなかった特長を備える5Gは、多くの企業がIoT活用に乗り出す格好のチャンスだ。回線を提供する通信キャリアにとっては、これまで個人ユーザー中心でビジネスをしてきたが、法人向けを拡大する転機が到来している。
ただ、今秋のプレ商用化を前にキャリア各社が手がけている実証実験の内容の多くは似たようなものだ。例えば、危険な工事現場などを想定した遠隔操作では、NTTドコモはコマツ、KDDIは大林組やNEC、ソフトバンクは大成建設と共同で実証実験をしている。 第4の通信キャリアとして楽天は今年10月から自前の通信を使った携帯通信事業を始める。切り札に位置づけるのが、最新技術を使うネットワークの完全仮想化だ。NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクのキャリア3社は、データセンターや基地局のネットワークを、通信機器メーカーから調達する専用ハードで制御している。ただこれは特注品になるため、コストがかさむ要因になっている。一方で楽天の完全仮想化は、通信ネットワークを制御する機能は独自開発したソフトウェアが担う。ソフトウェアの入れ物となるハードは汎用サーバーで賄うため、コストが安くなる。
本書の目次

 ・次世代通信であらゆる産業が激変
 ・動画配信の世界競争が幕開け
 ・「クラウドゲーム戦争」勃発 グーグルがソニーを猛追
 ・自動運転がもたらす新世界
 ・損害保険 自動運転実用化で存亡の機
 ・無人タクシーに挑むDeNA
 ・次世代スマート工場の衝撃
 ・INTERVIEW DMG森精機 社長・森 雅彦
 ・ 5Gは製造業に追い風 工作機械が先陣を切る
 ・ローカル5Gの潜在力
 ・5Gで激変する通信業界
 ・新規参入する楽天の皮算用
 ・巨大企業ファーウェイの深謀遠慮
 ・アップルをねじ伏せたクアルコムのすごみ
 ・5Gに潜む3つのリスク
 ・株式市場も注目 華やぐ5G関連ビジネス
 ・INTERVIEW ドワンゴ 社長・夏野 剛
 ・ 非通信分野で価値を生み出せ
 ・INTERVIEW 総務副大臣・佐藤ゆかり
 ・ 日本は出遅れたわけではない

著者・出版

東洋経済新報社

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