本サイトで紹介する本に関する理解度チェック問題になります。
問題を解きながら、本の概要を理解できるように、
問題以上に解説に力を入れておりますので、是非活用ください。
[3つのポイント]
・戦争は高コスト |
・戦争を始める前によく検討せよ |
・勝てる見込みのない戦争はするな |
[サマリ]
戦う前に心得ておくべきこと、準備しておくべきことを記しています。孫子の基本的な考えとしては、無謀な戦争はしない。戦争を決断する前に、戦争をするべきか避けるべきか、被害の大きさなどを考えるように言っています。現代社会の企業に置き換えて「第一章 始計篇」を考えると、経営は企業にとっての大事であり社員の死活、企業の存亡がかかっているから熟慮が肝心だ。それだから、経営は五つの視点と七つの基準で考慮・比較して、適切に判断せよ読み替えられる。経営は五つの視点とは、
道=ミッション
天=マクロ環境
地=業界・市場
将=リーダー
法=内部環境
と置き換え、現代の企業経営においては、第一に、経営理念や組織としての使命感、第二に、時流、トレンドや環境変化、第三に、事業構造や競合状況、第四に、経営者やリーダーの資質、第五に、組織体制や制度・規則と考えれば良いだろう。次に 七つの基準 とは、
主=経営者
将=リーダー
天地=環境(マクロ環境、業界・市場)
法令=組織の制度
兵衆=組織力
士卒=社員
賞罰=賞罰
ライバルと自社を比較するには七つの基準としている。ミッションを理解しているのはいずれか。リーダーの能力が高いのはいずれか。有利な環境はいずれか。組織の制度が適切なのはいずれか。組織力が優れているのはいずれか。社員が訓練されているのはいずれか。賞罰が公明なのはいずれか。勝敗はこの比較で分かるということだ。
読み下し文 | 現代語訳 |
孫子曰く、兵とは国の大事なり、死生の地、存亡の道、察せざるべからざるなり。ゆえにこれを経るに五事をもってし、これを校ぶるに計をもってして、その情を索む。 | 孫子はいう、戦争とは国家の大事である。人々の生死がきまる場所で、国家の存亡にかかわる分かれ道であるから、よくよく熟考せねばならぬ。それゆえ、五つの事がらではかり考え、七つの目算で比べ合わせて、その時の実情を求めるのである。 |
一に曰く道、二に曰く天、三に曰く地、四に曰く将、五に曰く法なり。 | 第一は道、第二は天、第三は地、第四は将、第五は法である。 |
道とは、民をして上と意を同じくし、これと死すべくこれと生くべくして、危きを畏れざるなり。天とは、陰陽・寒暑・時制なり。地とは遠近・険易・広狭・死生なり。将とは、智・信・仁・勇・厳なり。法とは、曲制・官道・主用なり。およそこの五者は、将は聞かざることなきも、これを知る者は勝ち、知らざる者は勝たず。ゆえにこれを校ぶるに計をもってして、その情を索む。曰く、主いずれか有道なる、将いずれか有能なる、天地いずれか得たる、法令いずれか行なわる、兵衆いずれか強き、士卒いずれか練いたる、賞罰いずれか明らかなると。われこれをもって勝負を知る。 | 道とは、人民を上の人と同心にならせることである。
天とは、陰陽や気温や時節のことである。地とは、距離や険しさや広さや高低のことである。将とは、才智や誠心や勇敢、威厳のことである。法とは、軍隊編成の規則や官職の治め方である。およそこれら五つのことは将軍たる者はだれでも知っているが、それを深く理解しているものは勝ち、深く理解していないものは勝てない。それゆえ、深い理解を得たものは、7つの目算でくらあわせて、その時の実情をもとめるのである。この目算のくらべあわせによって勝敗を知るのである。 |
将わが計を聴くときは、これを用うれば必ず勝つ、これを留めん。将わが計を聴かざるときは、これを用うれば必ず敗る、これを去らん。計、利としてもって聴かるれば、すなわちこれが勢をなして、もってその外を佐く。勢とは利によりて権を制するなり。
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将軍が目算の比べ合わせを正しく行えた場合は勝てるであろうから留任させる。目算の比べを正しく行えない場合は負けるであろうから辞めさせる。はかりごとの有利なことがわかって従わないのは外謀とする。勢とは、有利な状況にもとづいてその場に適した臨機応変な処置をとることである。 |
兵とは詭道なり。ゆえに能なるもこれに不能を示し、用なるもこれに不用を示し、近くともこれに遠きを示し、遠くともこれに近きを示し、利にしてこれを誘い、乱にしてこれを取り、実にしてこれに備え、強にしてこれを避け、怒にしてこれを撓し、卑にしてこれを驕らせ、佚にしてこれを労し、親にしてこれを離す。その無備を攻め、その不意に出ず。これ兵家の勢、先には伝うべからざるなり。 | 戦争とは、詭道(正常なやり方に反した仕業)である。それゆえ、強くとも敵に弱く見せかけ、勇敢でも敵には臆病に見せかけ、近づいても敵には遠く見せかけ、敵が利をもとめているときは誘い出し、敵が混乱しているときはそれを奪い、敵が充実しているときはそれに防備し、敵がつよいときはそれを避け、敵が謙虚なときはそれを驕り高ぶらせ、敵が安楽であるときはそれを疲労させ、敵が親しみあっているときは分裂させ、敵の無防備をせめ、敵の不意をつく。これが勢であって、出陣前には伝えることができない。 |
それいまだ戦わずして廟算して勝つ者は、算を得ること多ければなり。いまだ戦わずして廟算して勝たざる者は、算を得ること少なければなり。算多きは勝ち、算少なきは勝たず。しかるをいわんや算なきにおいてをや。われこれをもってこれを観るに、勝負見わる。 | 開戦前に目算で勝ということは、その勝ち目の多いことである。目算して勝てないということは、勝ち目が少ないということである。勝てない戦いはしない。これにより私は勝敗をはっきりしることができる。 |
〇第一 始計篇
(戦う前に心得ておくべきこと、準備しておくべきこと)
〇第二 作戦篇
(戦争準備計画についての心得)
〇第三 謀攻篇
(武力ではなく「はかりごと」の重要性)
〇第四 軍形篇
(攻撃・守備、それぞれの態勢のこと)
〇第五 兵勢篇
(戦う前に整えるべき態勢)
〇第六 虚実篇
(「虚」とはすきのある状態、「実」は充実した状態の制御方法)
〇第七 軍争篇
(戦場において、軍をどうやって動かす方法)
〇第八 九変篇
(戦場で取るべき九つの変化について説明)
〇第九 行軍篇
(戦場における行軍の考え方)
〇第十 地形篇
(戦う時の事項を地形と軍隊の状況の二つに分け六つの状況を解説)
〇第十一 九地篇
(地形篇に続き、戦場となる地形と兵の使い方)
〇第十二 火攻篇
(火攻めを中心に解説)
〇第十三 用間篇
(敵の情報を入手するには間諜の用い方)
著者: 孫氏
『孫子』(そんし)は、紀元前500年ごろの中国春秋時代の軍事思想家孫武の作とされる兵法書。武経七書の一つ。古今東西の兵法書のうち最も著名なものの一つである。紀元前5世紀中頃から紀元前4世紀中頃あたりに成立したと推定されている。
『孫子』以前は、戦争の勝敗は天運に左右されるという考え方が強かった。孫武は戦争の記録を分析・研究し、勝敗は運ではなく人為によることを知り、勝利を得るための指針を理論化して、本書で後世に残そうとした。
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