挫折力とは、挫折を愛し、乗り越え、活かしていく力
【要点1】有事が平時となった今、求められるリーダー像が、ボトムアップ型からトップダウン型へと変わりつつある。リーダーは時には人的犠牲を伴うような意思決定もしなくてはならない。
【要点2】 リーダーの経験は早ければ早いほどよい。そこで失敗や挫折を経験し、そこから権力の使い方を学ぶことができ、「挫折を愛し、乗り越え、活かしていく力」、つまり「挫折力」を身につけられる。
【要点3】 真のリーダーとは、権力を上手に使いこなせる人のことである。情と理のはざまで苦悩しながらも意思決定を続ける胆力こそがリーダーに求められる。
2020年初めに起きた「コロナショック」により、すでに世界の姿は大きく変容している。今後も「有事が平時」の時代となる。そうした時代では、この「変容(トランスフォーメーション)」の考え方がますます重要な意味をもつ。不連続な変化が起きる社会では、過去にとらわれずに柔軟に変容する能力が、個人にとっても会社にとっても重要だ。そんな変化の時代に求められるのがトップダウン型リーダーなのです。「トップダウン型のリーダー」と聞いて、あなたはどんなリーダー像を思い浮かべるだろうか?独善的?エネルギッシュ?はたまた自信家?人によっては、独裁をイメージするかもしれません。特に日本ではボトムアップ型のリーダーが多く、トップダウン型のリーダーは敬遠される傾向にあります。その主な理由は、日本が「空気と協調を重んじる社会」であるから。例えば会社内での意思決定の場合は、事前に関係各所へ根回しをして、実際の決議は出来レースになります。当然根回しも重要だが、このような「調整型の意思決定プロセス」は時間がかかってしまうのも事実だ。コロナ禍をはじめ、社会や経済の環境が目まぐるしく変化する状況下では、素早く決断し、行動することが必要です。そういった背景を踏まえて、本書では「挫折」をキーワードに、今あるべきリーダーの姿が語られています。著者の冨山氏は、産業再生機構のトップを務め、数多くの企業の経営改革や再生に携わってきた人物になります。本書には、そんな著者だからこそ書けるリアリティーにあふれたリーダー論・組織論が、凝縮されている。
これから係長や課長になっていく前途ある若手社員、中間管理職として上と下に挟まれながらも奮闘している中堅社員、さらには百戦錬磨の会社経営者にもぜひおすすめしたい一冊です。それぞれの課題意識に応じた学びが数多く得られます。
●本書のPoint |
■ 人間は失敗からしか学べない生き物。だからこそ挫折に飛び込むべし 小さな成功体験に囚われてはいけない。 挫折とは、自分の能力以上のことに挑戦した(成長しようとした)証拠である。 スラムダンクで『「負けたたことがある」というのが、いつか大きな財産になる』という名言(山王工業監督)を思い出すが、挫折を味わってこそ成長できるということを理解して、チャレンジし続けることが重要なのである。 挫折を「愛し」「乗り越え」「生かすこと」を頭に刻みこむ エジソンは、竹のフィラメントを発明するのに1万回失敗しても、挫折せずに努力し続けたと言われています。 これを成功させた時に、「私は実験において失敗など一度たりともしていない。 これでは電球は光らないという発見を今までに、1万回してきたのだ。」 |
■強いトップは挫折経験が必要 経営力をあえて単純化すると、的確なタイミングで正しい意思決定を行う能力(意思決定力)と、それを迅速かつ適切に実行する能力(実行力)の掛け算となる。前者は経営陣を中心とする経営インテリジェンスに関する組織能力であり、後者は現場やミドルを中心とするすり合わせや指揮命令系統に関する組織能力だ。 この両者を高めるのが理想だが、この間にはトレードオフが起きやすいという問題がある。 本来、逆方向に作用するものを折り合わせるのに、一般的な正解はない。リーダー自身が、どちらからも逃げず、二つの力の板ばさみになりながら、必死にやり繰りしていくしかないのだ。そこからその状況で機能する固有の答えが見つかるはず。とにかく逃げないことである。そもそも「こうすればこうなる」という解の公式のようなものがあれば、ビジネスマンは苦労しない。人間の消費行動が読めないから、失敗を繰り返しているのだ。結局のところリーダーは、トライアンドエラーで学んでいくしかない。 この時に重要なのが挫折した経験なのだ。 より多く失敗し、挫折したリーダーほど人の心を推量し、両者をより高めるためのリーダーシップが可能になる |
■リーダーの仕事は「捨てること」 リーダーは捨てる責任がある。JALも捨てることを出来ずに倒産した。死を忘れるな。死はすべての人間に平等にやってくる。死と向き合うことができれば、世の中の評価とか、他人との比較よりも、自分自身の人生を生きることことそが大切だという、シンプルな真理が自然に見えてくるものだ。苦しい状況で何を選び、何を捨てるかの優先順位も見えてくる。そうなるとストレスの原因の大半を占めるトレードオフや板挟みの苦悩からも解放されるのである。「選択と集中」の本質は捨てることである。 |
■石の上にも3年 まずは3年間続けること。すぐに次に仕事を求めるのではなく、3年間一所懸命その仕事に向き合い考え抜いてから移らないと、その仕事の経験が意味のないものとなり、その姿勢からは何もうまれない。「石の上にも三年」と聞いて、「どんなにつらくても3年は辞めずに続けるべき」という意味で使っている人も多いのではないでしょうか? 「石の上にも三年」の「3年」はその言葉通りではなく、「長い間」を意味しています。また、「努力はやがて報われる」という意味ですので、ポジティブな言葉です。「つらくてもすぐに辞めてはいけない」といった根性論のような意味合いではありませんので、注意しましょう。 その3年の中で、挫折を多く経験して、その原因を分析して次に生かしていくというサイクルを回すことが重要である。その繰り返しの中から真理が見えてくるものである。 |
はじめに 厳しい時代を楽しく生き抜くリーダーになろう
第1章 リーダーは「挫折力」を手に入れよ
第2章 ストレス耐性を高め、失敗を笑い飛ばせ
第3章「人間関係の泥沼」を楽しみ、糧にする
第4章 リーダーの仕事は「捨てる」ことである
第5章 強力かつ危険な「権力」をリアルに使いこなす
冨山 和彦(とやま かずひこ)氏
株式会社経営共創基盤 代表取締役 CEO
1960 年生まれ、東京大学法学部卒、スタンフォード大学経営学修士(MBA)、司法試験合格。 ボストンコンサルティンググループ、コーポレイトディレクション代表取締役を経て、2003 年に産業再生機構設立時に参画し COO に就任。解散後、IGPI を設立。パナソニック社外取締役、東京電力ホールディングス社外取締役。 経済同友会副代表幹事。財務省財政制度等審議会委員、内閣府税制調査会特別委員、内閣官房 まち・ひと・しごと創生会議有識者、内閣府総合科学技術・イノベーション会議基本計画専門 調査会委員、金融庁スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォ ローアップ会議委員、経済産業省産業構造審議会新産業構造部会委員他。 近著に、『なぜローカル経済から日本は甦るのか G と L の経済成長戦略』『選択と捨象』 『決定版 これがガバナンス経営だ!』『AI経営で会社は甦る』他。
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