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ウブントゥ 自分も人も幸せにする「アフリカ流14の知恵」(パンローリング)ムンギ・エンゴマニ

Book Summary
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レビュー

ノーベル平和賞を受賞されたデズモンド・ツツ大主教のお孫さんがアフリカで代々受け継がれてきた教えとその知恵でアパルトヘイトと言う大困難に立ち向かい、見事にそれを打ち砕いた貴重なお話が本書には詰まっています。

本書では、アパルトヘイト下のアフリカで生きていくのは常に死が隣り合わせであったという事だ。我々日本人の想像を絶するような困難な状況が鮮明に描かれている。 その中で実証されたウブントゥの知恵、人々がその困難と相手を理解し受け入れ、団結し、不条理をどのように克服してきたのかを語ってくれています。

人と比べずに暮らしなさい人と競わずに生きなさい。人とつながり、助けなさい。それでも自分らしく生きられる――それがアフリカの大地で育まれた「ウブントゥ」の知恵だ。 本書はデズモンド・ツツ大主教の孫娘ムンギ・エンゴマニによる、多様性の時代に「違いを認めて尊重し合う」ための14のレッスン。 祖父から受け継いだ大きな思いやりをもとに、人とつながる生き方をわかりやすく提案する。ストレスフルな毎日に、穏やかな余裕と自信をもたらす一冊です。

ウブントゥの知恵は、ほぼすべてのアフリカ言語に見られる、次のことわざに一番良く現れています。「人は、ほかの人たちを通して人になる」つまり私たちがこの世で学び、経験するすべてのことは、他者との関わりを通してもたらされる、という意味です。だから私たちは、自分の行動や思考をしっかり考えるよう求められるのです。その行動と思考で自分が何を達成できるかだけでなく、自分と関わる人たちにどんな影響を及ぼすのかも、考えなくてはいけません。 本書は、読者に考えるチャンスを与えるでしょう。どのようにウブントゥを実践すれば、世の中で人々の懸け橋になれるのか。そして、人との関わりの一つひとつをさらに好ましい環境づくりのチャンスに変えていけるのか。ムンギが紹介する物語に、私たちはみんな、さまざまな形で共感を覚えるでしょう。これらは、ウブントゥのある世界で生きるために、私たちに日々与えられているチャンスと試練の物語です。私たち一人ひとりが、来る日も来る日も多くのチャンスを与えられています。言葉や行動を通してなのか、何も言わない・何もしないことを通してなのかはわかりませんが、出会った人たちが思いやりや人間関係を味わえる場を提供できるチャンスを、与えられています。

本書のPoint
相手の心の声に耳を傾ける
友人のジュエリーがなくなってしまう事件が起こります。ムンギさんたちは、すぐにハウスメイトの1人に嫌疑をかけ、「怒りと裏切られた気分で頭がいっぱいに」なりました。ところが…

すぐさま問いただすこともできたけど、母と話したことで、激しい思いも言葉もちょっぴり落ち着いた。母は「直接話す必要はあるけれど、落ち着いてからでないとダメよ」とアドバイスしてくれた。私は、出来事をその子の側から見る必要があったのだ。私たちはなかなかそういう時間を取らないし、このときの私も、慌てて話を進めるところだった。(本書58pより)

疑いのかかった女性を交えて話し合ったところ、彼女は自分が盗ったことを認めました。しかし、その人は「自分の衝動が抑えられない症状や過食症に苦しんでいる」とも告白。ムンギさんは、怒りが別の感情へと変化するのを感じます。

そして、「慎重に話を進めることで、私たちは、すでに苦しんでいる人をさらに傷つけずにすんだ」と、胸をなでおろします。ムンギさんに、このようなアドバイスをした母は、アパルトヘイトをじかに味わった世代。黒人差別をする白人を非難するかわりに、「私が白人でも、アパルトヘイトに立ち向かうだろうか?」と自問したそうです。やがて、「同じ状況に置かれたら、自分ならどうする?」という思考が習慣化され、イヤなこと傷つくことがあるたびに、これが一番重要な問いになりました。その考え方をムンギさんも受け継ぎ、誰かと対立関係に陥ったら、まずは相手の言い分と向き合うことをすすめています。

目を閉じて、この状況を相手がどう感じているか、思い描いてみるのだ。どんな出来事が積み重って、(たとえどんなに見当違いでも)今の考え方になり、(たとえどんなにひどいものでも)今の態度になったのだろう?その人は、どうして慌てて結論を出すのだろう?
相手と同じような態度を取る自分を、想像できるだろうか?―こんなふうに想像してみるだけでも、効果的なエクササイズになる。
(本書66pより)
試練の際に強力な武器となるのは「希望」
ネルソン・マンデラは、実に27年もの歳月を刑務所の中で過ごしました。母親や息子が死去しても葬儀へ出席することは許されず、外で重労働に服すときを除いて、狭い独房に閉じ込められていました。彼は、妻に送った手紙の中で「覚えておいてほしい。たとえほかのすべてが失われても、希望は強力な武器になる」と記しています。ムンギさんが、マンデラの手紙のこの部分を引用しているのは、「希望」という言葉が、ウブントゥを語るうえで重要なキーワードだからです。マンデラほど過酷でないにしても、だれしも人生の途上で困難に直面します。その時に、思い起こすべき言葉は希望だと、ムンギさんは力説します。

「望む」という人間本来の資質をはぐくむのは、人生で大きな望みをかなえる効果的な手段だ
どんな目標を目指すときも同じだが、試練は必ずある。誰の道も、スムーズにはいかない。決意が試されるのはそういうときだけど、希望を信じていれば、打たれ強くなる。(本書128pより)


とはいえ、訪れた試練が相当厳しいものであれば、希望よりも絶望に陥り、最後は自暴自棄と諦めに逃げたくもなるでしょう。そんな場合にも解決策はあると、ムンギさんは6つの方法を挙げています。例えば「目標を設定する」。最初は小さな目標を定め、徐々に大きな目標を立てていくというものです。もし試練が失業であれば、(求人を探す前に)信頼できる人に連絡してアドバイスをもらうという小さな目標を作って実行します。目標と実行を1つずつ積み重ねることで、希望が「どんどんふくらんでいく」と、ムンギさんは説きます。ほかに「今この瞬間を生きる」「信念を持つ」などの方法があり、「メンタルの強さと希望をはぐくんでくれる」ことが期待できます。
許せない相手を許す
ツツ大主教は「許しのないところに未来はない」と言いました。そして、ムンギさんは、許すための5つのステップを記しています。その1つが「許すことのあらゆるメリットを考えよう」です。

許せば、身体が楽になるだろうか?他人にされたことをあれこれ考えなくなって、別のことを考える余裕ができるだろうか?怒りを手放せば、今より幸せになれる?「許しの道を選ぶべきだ」という自信が持てたら、そろそろ次の段階に進もう。(本書169pより)

家庭や職場の対人関係がこじれて、相手を許せないと思ったら、上のように考えてはいかがでしょうか。本書にある他のステップも合わせて試してみることで、許せないという気持ちがほぐれていくはずです。
本書の目次

序文 デズモンド・ツツ大主教
イントロダクション あなたがいてくれるから、私がいる
Lesson 1 相手の中に「自分自身」を見いだそう
Lesson 2 強さは団結の中にある
Lesson 3「もし、この人だったら?」と考えよう
Lesson 4 視野を広げよう
Lesson 5 自分もみんなも「かけがえのない人」だと考えよう
Lesson 6 すべての人に宿る「よいところ」を信じよう
Lesson 7 楽観ではなく希望を選ぼう
Lesson 8 つながる方法を探そう
Lesson 9「許しの力」を身につけよう
Lesson 10 みんなの「違い」を受け入れよう
Lesson 11 現実を認めよう――どんなにつらいものでも!
Lesson 12 ユーモアにくるんで思いやりを示そう
Lesson 13 なぜ、小さなことが大きな変化をもたらすのか?
Lesson 14 「耳を傾けること」を学ぼう
Epilogue ウブントゥを人生に取り入れる

著者・出版

著者:ムンギ・エンゴマニ(Mungi Ngomane)
反アパルトヘイト活動によってノーベル平和賞を受賞した人権活動家にして神学者であるデズモンド・ツツ大主教の孫。
家族の“影響”というより、「すべての人に正義と尊厳をもたらしたい」という“遺伝子”に導かれ、人権問題に関心をもつ。現在は「ウブントゥ」を理想に掲げる英国ツツ財団の青年部パトロンを務めている。中東紛争の解決、女性の権利の向上、パレスチナ人解放、難民保護のために尽力、世界の主要なNGO団体にも協力。「数限りない会話によって分断を超越し、共通の価値観を持つことでアメリカ人をつなげる」というキャンペーン、“MILLIONS OF CONVERSATIONS”ではコーディネーターを務めた。一番の夢と情熱は、「世界中の女の子が基本的な人権を持つ」こと。ロンドン大学・東洋アフリカ研究学院(SOAS)国際研究・外交センターで修士号を取得。米国在住。


訳者:長澤あかね(ながさわ・あかね)
奈良県生まれ。横浜在住。関西学院大学社会学部卒業。広告会社に勤務したのち、通訳を経て翻訳者に。訳書に『Avandanced Love–上級者カップルの愛とファッション』(大和書房)、『メンタルが強い人がやめた13の習慣』(講談社)、「マルチ・ポテンシャライト――好きなことを次々と仕事にして、一生食っていく方法』(PHP 研究所)などがある。

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