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幸之助論―「経営の神様」松下幸之助の物語(ダイヤモンド社)ジョン・P・コッター

Book Summary
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レビュー

「素直な心」が道をひらく

幸之助は、いくつもの逆境をくぐり抜け、自分の夢を組織の夢に、さらに社会に奉仕する夢にまで高めた。『利益をあげているということは、社会に奉仕、貢献できている証である』という幸之助独自の利益観も意義深い。

本書は、コッターが、松下幸之助の生涯を丹念に調べ上げ、分析した。幸之助の人生は、仕事においても私生活においても、常に悲しみと喜び、蹉跌と成功、不安と夢、恐怖と希望が拮抗しつつ同居していた。つまり1人の人間の中に様々な矛盾を抱えて生きていた。一つひとつの節目をくぐるたび、幸之助の感情は大きくうごめいたはずだと、コッターは主張する。経営者とは、夢に満ち溢れた熱い人物であるのではない。また理詰めで分析的な問題解決をする人でもない。積極性、論理性より、むしろ一見マイナスに見える面や感情に彩られた機微が大事なのである。それらについて、コッターは、幸之助を公人、私人、心の世界という3つの視点でとらえ、特に幼少期からの心理的外傷(トラウマ)がテーマとなる「心の世界」まで描き切ろうと意欲的に取り組んだ。偉大な経営者に対しても、存在そのものを神格化しないのがコッター流である。経営学分野における有用な分析的伝記であることを神戸大学大学院経営学研究科の金井壽宏教授が解説する。

本書のPoint
幸之助の生涯は苦労を重ねて成長の糧 に
学歴はないものの若くして苦労を重ねてきた。
「大きな成功を収めた人の人生には、ある共通性がある。いずれも苦労を重ね、それを成長の足がかりにしているということである。」
上記の本文からも苦労を重ねて成長の糧にしていたということが伺える。

本書の最大の教訓 は 「艱難汝を玉にす」になるだろう。
※かんなんなんじをたまにす【艱難汝を玉にす】苦労や困難を堪えてこそ立派な人間になれる。 〔西洋の諺ことわざ「逆境は人を賢くする」の意訳という〕 出典 三省堂
という言葉が最大の教訓です。 ひとは経験から学ぶ、苦境を経験してこそ、大きく一皮剝ける
逆境を脅威ととらえるのではなく、学ぶための機会だとみなす辛苦と失敗を通じて、人はより強く生まれ変わることができる。成功によって驕り、挑戦しなくなれば個人の成長はとまる。
自分の行動に謙虚に誠実に見極めようとする意思こそが成長の根本であるということでした。
貧困の克服、その使命が産業人にはある
「産業人の使命は貧困の克服にある。社会全体の貧しさから救って富をもたらすことになる」そして水道の水を例にあげた。誰でも手に入れることができ、企業人が目指すべきはあらゆる製品を水のように無尽蔵に安く生産することである。これが実現されれば地上から貧困は撲滅される。
会社や産業人は利益を追求するのではなく、自社製品を当たり前のように生産し当たり前のように使えるようにするという考えのもと事業を行っていた。これはまさに社会貢献だ。自身の事業に社会的意義を見出していたということだ。
成功した企業人にとって最も危険なものは驕り
「事業の規模が拡大していくとえてして経営に緩みが出て、社員の間に驕りが生じてくることに気づいたのであります。私たちはこういう事態をなんとしても避けなければなりません。」
幸之助は成功した者にとって最も危険なものは「驕り」であるといったそうです。会社が大きくなるにつれ、社員間でもそのような姿が見受けられた。まさしく私たちに当てはまる。驕りを見せてはよくない。うまくいっても驕らない、傲慢であってはいけないということ だ。
決して謙虚な姿勢を無くさない
幸之助は、最も重要なことはというインタビューに対して、
素直な心を持つことです。人は自分の知識だけで行動してはならない。
いつも目を開けている人は道に迷うことはないし、いつも他人のいうことに耳を傾けている人も迷わない。というではないですか。相手が誰であれ、いつも謙虚になにかを学べるのではないかと期待して人の話を聞いていれば、予想外の知識を得られるものです


幸之助はどんな相手にも決して嫌な態度をとることはなく、常に礼儀正しく振舞っていたといいます。ここまで大きい企業の代表であってもどんな時も、謙虚な姿勢を貫き通したようです。
本書の目次

プロローグ 奇妙な偶然
序章 経営の神様
第1章 偉業の源泉―1894年(明治27)~1917年(大正6)
第2章 企業家の誕生―1917年(大正6)~1931年(昭和6)
第3章 独創的カリスマ―1931年(昭和6)~1946年(昭和21)
第4章 総合的リーダーシップ―1946年(昭和21)~1970年(昭和45)
第5章 理想のリーダーシップへ―1970年(昭和45)~1989年(平成元)
エピローグ 松下幸之助から何を学ぶか

著者・出版

コッター,ジョン・P.[コッター,ジョンP.][Kotter,John P.]
ハーバード・ビジネススクール松下幸之助記念講座名誉教授。リーダーシップ論を担当。1981年、当時としては史上最年少の34歳でハーバード大学の正教授に就任

金井壽宏[カナイトシヒロ]
神戸大学大学院経営学研究科教授。1978年京都大学教育学部卒業。80年神戸大学大学院経営学研究科博士前期課程、およびマサチューセッツ工科大学博士課程修了。神戸大学経営学部教授を経て、99年より現職。専門は経営管理・経営行動科学

高橋啓[タカハシケイ]
翻訳家。早稲田大学文学部卒業(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

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