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僕らが毎日やっている最強の読み方(東洋経済新報社)池上 彰/佐藤 優

Book Summary
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レビュー

池上彰氏や佐藤優氏は、極限的に多忙ななか、あらゆるメディアから幅広い知識と教養を得て、血肉にしている。どうすれば彼らのように知的生産性を上げ、自分の力で世の中を読み解けるようになるのだろうか。 そんな疑問を解決すべく、本書では池上氏と佐藤氏の対談形式で、新聞や雑誌、書籍、ネット、SNSなどをどのように駆使しているのかが、体系的に解説されている。具体的な媒体名を出しながら、読者が「何をどう読めばいいのか」というポイントにも言及がなされており、大いに知的探究心をくすぐられる。

本書は、【新聞の読み方】【雑誌の読み方】【ネットの使い方】【書籍の読み方】で構成されています。メディアごとに、違った読みこなす技法があり、その技法を身につけることを後押ししてくれる。 本書を読めば、知は「武器」であり「楽しみ」でもあると痛感できるだろう。2人の知の源泉を知ることで、自分なりの「知の技法」を確立したいと考えるビジネスパーソンにとって必読の一冊だ。

本書のPoint
■世の中を知るための基本かつ最良ツールは新聞である

①第一次情報の多くは「新聞」にあり
まずは新聞の読み方を紹介していく。政治や経済、文化のエリートで新聞を読まない人はいない。新聞が「世の中を知る」ための基本かつ最良のツールであることは、今も昔も変わらない。一面から順にめくっていけば、政治、経済、国際情勢、文化やスポーツを含めた世の中の動き全体を短時間で、ざっと俯瞰できる。この一覧性において新聞に勝るメディアはない。

②新聞は2紙以上読むこと
ただし新聞は、少なくとも2紙以上は読まなければならない。なぜなら、2013年頃からニュースの取り上げ方が新聞ごとに異なり、そこに各紙の意図が表現されるようになったためだ。たとえば『産経新聞』『読売新聞』『日本経済新聞』は安倍政権に好意的であり、『朝日新聞』『毎日新聞』『東京新聞』は、安倍政権に対立的な立場をとる傾向にある。よって、複数の新聞を読んでおかなければ、自分が読む新聞のバイアスの影響を受けてしまう。

③新聞は「飛ばし読み」が基本
池上氏の新聞の読み方は、こうだ。まず毎朝、自宅に届く新聞8紙(『朝日新聞』『毎日新聞』『読売新聞』『日本経済新聞』『朝日小学生新聞』『毎日小学生新聞』『中国新聞』『信濃毎日新聞』)の見出しに目を通す。その日のニュースの全体像を捉えるのが目的である。その後、外出時にもう2紙(『東京新聞』『産経新聞』)を購入し、『ウォール・ストリート・ジャーナル日本版』は電子版で購読している。そして気になった記事は夜寝る前に読み込む。1日にかける時間は朝20分、夜1時間程度だという。
また、2人とも、新聞は飛ばし読みが基本である。ニュースを読む力を磨くポイントは、「自分ならこの記事よりこの記事を大きく載せるのに」「この小さな記事は今後、どう展開するんだろう」と考えながら読むことだ。何よりも、継続して読むことが第一である。
■雑誌は興味関心、視野を広げるためのツール

①隙間時間は、電子版の雑誌を読むのが効率的
定期購読するほどのコアな趣味ではない雑誌も気軽に読めるのが「dマガジン」の魅力である。それが興味や関心、視野を広げる格好のツールになるからだ。ただし、一部の学術誌や経済紙を除けば、雑誌は基本的に娯楽の読みものとして考えるのが現実に即している。

②仕事に役立てるなら、経済誌・ビジネス誌を読む
ビジネスパーソンにチェックしてほしい週刊誌といえば、経済誌・ビジネス誌だ。両氏ともに『週刊東洋経済』『週刊ダイヤモンド』『週刊エコノミスト』は毎週、目を通しており、池上氏は『日経ビジネス』も読んでいる。
ビジネス誌を読むメリットは、新聞が報じなかった特ダネを出すこと、そして特定の主義主張に固執しておらず書籍よりも情報が早いことである。経済やビジネスの動きの要点を初動でつかめるのに便利だ。
■インターネットこそ上級者のメディア
①ノイズ過多で、時間を浪費する危険性あり
ネットの情報は玉石混淆である。誰もが情報発信できるがゆえに、ネット空間は、新聞や雑誌が持つ「編集」と「校閲」という重要な2つの機能が欠如しているためだ。いわば、ノイズ過多であり、うまく使いこなさなければ、時間を浪費する危険性もある。
たとえば、同じ時間をかけて新聞社の無料サイトを見るのと、新聞紙面を読むのとでは、後者のほうが格段により多くの情報をインプットできる。なぜなら、無料のニュースサイトのように、記事が並列的に並んでいる場合、読者が自ら記事の重要度を判断しなければならないからだ。
また、ネットには特定の情報だけが大きく見え、別の情報が見えなくなる「プリズム効果」がある。つまり、自分の考えに近いものにばかりフォーカスが当たり、逆に関心がない分野については視野が狭くなってしまう。さらに、サイトによっては、過去の閲覧歴や検索歴に合わせて、表示される内容が変わるので、入ってくる情報が偏る危険性が高いので注意したい。このように、ネット上の選別にはかなりの知識とスキルが問われるため、ネットこそ上級者のメディアなのだ。

②信頼性のあるサイトを使うこと
池上氏、佐藤氏ともによく見るのは、NHKのニュースサイト「NHKオンライン」であり、テレビ放送のあと、すぐ更新されるので情報が早いのがメリットだ。また、「東洋経済オンライン」は、人に関する有益な情報を得られる。佐藤氏の場合は、専門分野以外のことを調べる際は、むやみにネット検索するのではなく、会員制のインターネット辞書・事典検索サイト「ジャパンナレッジ」を活用しているという。

③SNSはアウトプットの場に適している
SNSは、インプットの時間を蝕む存在である。インプットの時間を確保するには、あえてネット断ちやスマホ断ちをすることが必要となるだろう。せめて仕事や読書に集中するとき、物事を深く考えるときは、電源をオフにする習慣を身につけてほしいという。佐藤氏は1日4時間以上、インプットやアウトプットのためにネット断ちの時間を確保しているが、一般的なビジネスパーソンならば、1~2時間を目安にするのがよいだろう。
一方、SNSも使い方次第では有益なコミュニケーションツールになりえる。SNS上のアウトプットを意識すれば、インプットの質が高まり効率も上がる。SNSはアウトプットの場として活用するのに適しているといえる。
■本格的に知識を身につけるなら書籍を読むべき

①世の中を理解するベースは「書籍」
世の中で起こっていることを「知る」には新聞がベースだが、世の中で起こっていることを「理解」するには書籍がベースとなる。さまざまな情報を読み解くには、土台となる基礎知識を書籍によって積み上げることが欠かせないというのが、著者二人の共通認識である。なぜ書籍が大事かというと、書籍は、体系的にひとつのまとまった世界として内容を提示してくれるので、本格的に知識を身につけるのに効果的だからだ。

②リアル書店活用術
池上氏はほぼ毎日書店に足を運ぶという。リアル書店は俯瞰性が高いので、書店の棚を見ているだけでどんどん興味が広がっていく。大型書店であれば、関連書籍もひと目でわかる。佐藤氏によると、失敗しない本選びのコツは、書店員の知識を最大限に活用することだという。また帯に力が入っている本は、それだけ編集者が力を入れている証拠であり、見るだけで勉強になる。

③タネ本は丁寧に、関連本は速読する
あるジャンルについて関連書籍を数冊読んでいくと、タネ本(基本書)がわかってくる。多くは、そのテーマの初期に出版された本であり、密度が濃い。どんなジャンルでも、ベースになるタネ本は3冊以内なので、たとえ難解でも時間をかけて、しっかり読むといい。タネ本以外はすべて精読する必要はない。ただし、池上氏はどの本も「はじめに」と「おわりに」には必ず目を通すことを推奨している。後の記憶に大きな差が出るためだ。このように、本によって速読と精読を使い分けるのが望ましい。

④古典作品を上手に読みこなす
基礎知識を身につけるには、古典作品を上手に読みこなすことも重要となる。読む際のコツは、興味のある分野のニュースと絡めることだ。押さえておくべき文献をしっかりと勉強することで、単なる情報が、使える知識・教養になる。池上氏は、読んでおいたほうがいい10冊として、『アンネの日記』『聖書』『コーラン』『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』『資本論』『イスラーム原理主義の「道しるべ」』『沈黙の春』『種の起原』『雇用、利子および貨幣の一般理論』『資本主義と自由』を取り上げている。
本書の目次

序章 僕らが毎日やっている「読み方」を公開
第1章 僕らの新聞の読み方――どの新聞を、どう読むか。全国紙から地方紙まで
【コラム1】海外紙・夕刊紙・スポーツ紙の読み方

第2章 僕らの雑誌の読み方――週刊誌、月刊誌からビジネス誌、専門誌まで
【コラム2】海外雑誌の読み方

第3章 僕らのネットの使い方――上級者のメディアをどう使いこなすか
【コラム3】テレビ・映画・ドラマの見方、使い方

第4章 僕らの書籍の読み方――速読、多読から難解な本、入門書の読み方まで
【コラム4】ミステリー・SF小説の読み方

第5章 僕らの教科書・学習参考書の使い方――基礎知識をいっきに強化する
【コラム5】海外の教科書と「スタディサプリ」の使い方

著者・出版

池上彰(いけがみ あきら)

1950年、長野県生まれ。慶應義塾大学卒業後、73年NHK入局。報道記者として、松江放送局、呉通信部を経て東京の報道局社会部へ。警視庁、気象庁、文部省、宮内庁などを担当。94年より11年間NHK『週刊こどもニュース』でお父さん役を務める。05年3月にNHKを退社し、現在はフリージャーナリストとして多方面で活躍 。

生年月日: 1950年8月9日 (年齢 70歳)
出生地: 長野県 松本市
学歴: 慶應義塾大学 (1973年)

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佐藤 優さとう まさる、1960年〈昭和35年〉1月18日 – )

佐藤 優は、日本の作家、元外交官。同志社大学神学部客員教授、静岡文化芸術大学招聘客員教授。学位は神学修士。 在ロシア日本国大使館三等書記官、外務省国際情報局分析第一課主任分析官、外務省大臣官房総務課課長補佐を歴任。その経験を生かして、インテリジェンスや国際関係、世界史、宗教などについて著作活動を行なっている。

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